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池田真朗『スタートライン債権法』日本評論社(2010年3月・5版)……初めて債権法を学ぶにはお勧めの入門書。 〔債権総論〕 平井宜雄『債権総論』弘文堂(1994年1月・2版)……通説に対するアンチテーゼとして一時代を画した。立法者意思や制度趣旨から演繹 的かつ丁寧に解釈していくスタイルに定評がある。現在は平井説の批判をふまえた新しい世代の学説が主流となりつつあり、その意味では本書はその役割を終え たというべきだろう。判例・通説を十分に理解した上で取り組むべき本。 前田達明『口述債権総論』成文堂(1993年4月・3版)……著者の京大での講義を録音したテープをもとに書かれている。執筆段階でかなり手が加 えられているため、臨場感はそれほどでもないが、平易な口語を用いた説明は非常に丁寧で分かりやすい。判例その他の具体例を豊富に挙げるが、いわゆるケー スメソッドとは異なる、オーソドックスなスタイルである。歴史的沿革の説明が詳しい(一般的な概説書の水準を遥かに超えている)点に特徴がある。著者の体 系がそれほど前面に出ていないため、読み手の学習段階を問わないとっつきやすさがある。 淡路剛久『債権総論』有斐閣(2002年12月)……法教連載の単行本化。とはいえ中身は正統派の体系書。奥田ら伝統的通説、平井説の後世代かつ内田・潮見・中田らの前世代という位置づけ。したがって過渡期の理論が多い。 潮見佳男『プラクティス債権総論』信山社(2007年4月・3版 2012年4月・4版)……債権総論分野の基本書としては、最高水準の一冊。内容としては下の二分冊を要約した部分も多いが、二分冊と違い、判例通説+有 力説1個程度の説明に留めるなど、教科書としての役割が意識されている。中田『債権総論』との違いとして、ケースが多用されていること(ケースの解答はな いものの、ケースを踏まえて原理原則・判例の解説がなされている)、要件事実を意識した構成になっていること、判例のとる論理をナンバリングを用いて丁寧 に整理していることなどが挙げられる。もっとも、中田が伝統的通説に近い立場から、引用文献を明示したうえで近時の有力説を整理しているのに対し、本書は 引用文献なしで、有力説の立場を前提に説明を進めている部分がある。 潮見佳男『債権総論1』、『2』信山社(2003年8月・2版,2005年3月・3版)……法律学の森シリーズ(通称「森」)、2分冊。「学部に おける債権総論を対象とした準教科書(学習書)としての役割を切り捨てて理論ベースでの叙述に徹し」(はしがき)、債権者利益(契約利益)中心の体系とい う観点から債権総論を再構築した理論と実務を架橋する意欲的な体系書。債権法改正に関わる理論的主張が多数なされており債権法改正に関する必読文献の一 つ。受験生が読む本ではない。樹海という隠語で呼ばれることも。 中田裕康『債権総論』岩波書店(2011年8月・新版)……著者は実務家、一橋教授を経て、現在は東大教授。京大系学説(潮見など)にも目配せし た最新の体系書。かゆいところに手が届く、丁寧かつ分かりやすい記述は、学生はもとより学者からも圧倒的に評判がよい。まさに債権総論の基本書の決定版。 新版では判例学説が追加され、債権法改正についても加筆された。具体的には「中間的な論点整理」の各論点につき本文中に*印を付し、巻末で当該論点の改正 動向について一行程度の解説(全7頁)を付している。 奥田昌道『債権総論』悠々社(1992年7月・増補版)……伝統的通説。各種文献で引用される回数は多いが、古い。 池田真朗『新標準講義民法債権総論』慶應義塾大学出版会(2009年4月)……コンパクト。判例・通説に徹底した解説。パンデクテン体系を崩さず 民法典の体系に沿って進めているため最近のパンデクテン体系を崩した本が合わない場合の選択肢。あくまで初級者~中級者向けなので情報量は少ない。 平野裕之『プラクティスシリーズ債権総論』信山社(2005年3月)……学説が上手く整理されている。 内田勝一『債権総論』弘文堂(2000年10月)……損害賠償で自説。図がないのが難。 渡辺達徳・野澤正充『債権総論』弘文堂NOMIKA(2007年11月)……無難な出来。 円谷峻『債権総論―判例を通じて学ぶ』成文堂(2010年9月・2版)……タイトルの通りで、かつ判例が長めに引用。 〔債権各論〕 広中俊雄『債権各論講義』有斐閣(1994年3月・6版)……典型契約をめぐる法制度の歴史や、わが国におけるその社会的実態を重視し、 説得力ある議論を展開する。文章にくせがあり、大審院判例や起草者意思を原文のまま頻繁に紹介するため、読むのにやや時間がかかるが、普通に読み物として 面白いので、民法が今一つ好きになれない学生などが副読本にするとよいだろう。なお、各論点における結論自体は意外と穏当で、近時の多数説とされるものが 多い。 潮見佳男『基本講義債権各論I・II』新世社(2009年12月・2版,2009年10月・2版)……学生向け。ですます調。カバーの色よりイエ ローとも呼ばれる。分量が手ごろなので、ロースクール生の間でのシェアはかなりのもの。II(不法行為法)は必要にして十分な内容。I(契約法・事務管 理・不当利得)は旧版時にはさすがに薄いとの声もあったが、第2版では30ページほど加筆されている。 水辺芳郎『債権各論』三省堂(2006年4月・2版)……コンパクト。文章に難ありという声も。 笠井修・片山直也『債権各論I契約・事務管理・不当利得』弘文堂NOMIKA(2008年12月)……無難な出来という評価。通説にはその旨明 記、有力説は論者名を挙げて解説。判例は比較的長めに引用されているし、理解に資する図表もそこそこある。ただし、要件事実には配慮されていない。 NOMIKAの債権各論は、Ⅰが契約・事務管理・不当利得、Ⅱが不法行為という、潮見イエローと同じ分冊である。よって、潮見イエロー(の少なくともどち らか)が肌に合わないと思った場合、乗り換え相手の候補として挙げやすい。 〔契約法〕 来栖三郎『契約法』有斐閣(1974年9月)……古典的名著。契約総論はない。 石田穣『民法V(契約法)』青林書院(1982年3月)……古いが名著とされる。 水本浩『契約法』有斐閣(1995年3月)……重版予定なし。10年落ち。名著? 平井宜雄『債権各論I上契約総論』弘文堂(2008年8月)……はしがきが感動的な、平井ファン待望の一冊……だったのだが、強い実学志向から、 現代的な契約を巡る法現象を直視し、企業間契約を著者の体系の中心に据えた結果、学問的営為としての近代的な契約法学とは全く異なる内容に仕上がってい る。そのため、学生、とくに受験生の類はすっかりおいてけぼりとなってしまった。いずれにせよ、各論下の早期刊行が期待される。 潮見佳男『契約各論I』信山社(2002年1月)……理論の洗練度はかなりのもの。但し,体系書&潮見語。なお契約総論は『債権総論I』(法律学の森)にて論じられている。 山本敬三『民法講義IV-1』有斐閣(2005年11月)……著者講義のレジュメを元に、各論点の通説・有力説・判例がレジュメ調に網羅され、しかも各説ごとの要件事実ブロック・ダイアグラムも載っている。 平野裕之『民法総合5 契約法』信山社(2007年2月)……判例集も合わせているため、読むのに苦労する。 後藤巻則『契約法講義』弘文堂(2007年4月・2版)……学部およびロースクールの授業用の教科書。設問も付いている。導入用の教科書としてはちょうどいい分量・難易度になっているが、メインの基本書としては薄すぎる。 半田吉信『契約法講義』信山社(2005年4月・2版)……最新の学説や消費者契約などにも目配りが利いている。 三宅正男『契約法 総論・各論(上)(下)』青林書院(1978年2月,1983年3月,1988年10月)……雇用はない。 野澤正充『法セミ LAW CLASS シリーズ 契約法 セカンドステージ債権法(1)』日本評論社(2009年1月)……法学セミナーの連載をまとめている。 〔事務管理・不当利得・不法行為〕 加藤雅信『事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2005年9月)……最高裁をも動かした加藤理論。いま事務管理・不当利得を真面目に 学習しようとするならば第一に読まれるべき本。論旨が明快で透明感のある論述を特徴とする。特に不当利得についてはこの本の右に出るものは無いといってい い。 加藤雅信『クリスタライズド民法 事務管理・不当利得』三省堂(1999年9月)……275頁と薄いが箱庭理論の粋が詰まった名著。既に絶版なため、無理して手に入れる必要はないが、古書店などで見かけた時は是非買うべきである。 四宮和夫『事務管理・不当利得』青林書院(1981年11月)……不当利得類型論(運動法型、財貨帰属法型、負担帰属法型、三者不当利得)だが難解。しかし理論水準の高さには定評あり今でも引用される。 藤原正則『不当利得法(法律学の森)』信山社(2002年2月)……不当利得類型論(給付利得、侵害利得、支出利得、対第三者関係)。ドイツ法の解釈論に依拠するところが大きいが難解。 澤井裕『テキストブック事務管理・不当利得・不法行為』(2001年4月・3版)……二元論。不法行為部分が詳しい。各節の冒頭に設例が、本論の後に解説が付いている。参考書に最適。入手方法がオンデマンド版(定価 9,870円)となっているのが残念。 円谷峻『不法行為法・事務管理・不当利得―判例による法形成』成文堂(2005年11月)……判例の引用が詳しい。 吉田邦彦『不法行為等講義録』信山社(2008年12月)……平井弟子による不法行為等(法定債権)の講義録。独習に耐えるレジュメといった趣。 石崎泰雄・渡辺達徳編『新民法講義5・事務管理・不当利得・不法行為法』成文堂(2011年3月)……若手研究者(執筆者の多くが准教授)による法定債権の教科書。比較的新しい情報を平易に解説している。設例と図解が豊富であるのが本書の特徴。 橋本佳幸・大久保邦彦・小池泰『リーガルクエスト民法V事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2011年11月)……質量ともに司法試験対策と して十分な内容を持つ。その反面、高度な議論を圧縮したような個所もあるので、全くの初学者は、例えば潮見黄色などの後に読めばより効果が上がるだろう。 〔不法行為〕 四宮和夫『不法行為』青林書院(1985年8月)……定評あり。重厚。 幾代通著・徳本伸一補訂『不法行為法』有斐閣(1993年1月)……今となっては古いが比較的オーソドックスな体系。理論的でありながら、学生に向けて柔らかく語りかけるような記述は、普通に読み物として面白い。名著。 平井宜雄『債権各論II不法行為』弘文堂(1992年4月☆I上のはしがきによれば、現在改訂中とのこと)……独自の体系により『債権総論』と同 じく民法学界に多大な影響を与えた(『損害賠償法の理論』を併読すると平井説に対する理解が進みやすい。)。平井説がすべて受け入れられたわけではない が、学者、実務家いずれの側においても、その影響を受けていない者はいない。名著であるが、抽象的かつ難解なので、初学者はまず平井説をふまえた新しい世 代の基本書を読むべきだろう。上智ローでは不動の教科書。 潮見佳男『不法行為法』信山社(1999年5月,2版は3分冊の予定で現在『不法行為法I』(2009年9月)、『II』(2011年2月)が刊 行済み。効果論が未刊)……判例・学説を詳細に整理し、かつ自らの体系も明らかにした現時点で本邦最高峰の体系書(とくに第2版)。受験生が読む本ではな い。 吉村良一『不法行為法』有斐閣(2010年2月・4版)……関西系(二元論)。読みやすい。また、本書の立場も比較的堅実なものが多いように思われる。ただし判例は結論のみの引用が多い。4版では要件事実の記述が追加されたが、簡単な説明にとどまっている。 平野裕之『民法総合6 不法行為法』信山社(2009年9月・2版)……契約法と同じく、判例集込みで分厚い本。 窪田充見『不法行為法』有斐閣(2007年4月)……設例方式。内田2と相性が悪い人におススメ。 【現】前田陽一『債権各論II不法行為法』弘文堂NOMIKA(2007年7月)……読みやすいが、薄い。ただし、これで必要十分という声も。 【債権法改正関連書】 大村敦志『民法改正を考える』岩波新書(2011年10月)……東京大学における「民法改正-留学生のため民法案内(2)」の講義ノートをまとめたもの。債権法改正にとどまらず、家族法改正等を含めて、「民法を改正することはどういうことか」を論じた著書。 内田貴『民法改正-契約のルールが百年ぶりに変わる』ちくま新書(2011年10月)……債権法改正論者が、債権法改正を正当化づける立法事実(要するに債権法改正の必要性)を解説した入門書。債権法改正の是非を語る上で欠かせない基本書となるだろう。法学徒必読の書。 内田貴『債権法の新時代-「債権法改正の基本方針」の概要』商事法務(2009年9月)……債権法改正の最重要中心人物による「債権法改正の基本方針」入門書。必読文献。 民法(債権法)改正検討委員会編『債権法改正の基本方針(別冊NBL No.126)』商事法務(2009年4月)……債権法改正の基本方針本文。後記「詳解」を買うなら本書は不用。 民法(債権法)改正検討委員会編『シンポジウム「債権法改正の基本方針」(別冊NBL No.127)』商事法務(2009年8月)……債権法改正の基本方針についてのシンポジウムの講義録とレジュメ集。委員会の委員が基本方針について解説したもの。 民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針I-V』商事法務(2009年9月-2010年6月)……債権法改正の基本方針の全文+注釈。委員会の委員による公式注釈書。現行法の問題点を網羅しており、さながら債権法についての最高水準の体系書である。 民事法研究会編集部編『民法(債権関係)の改正に関する検討事項-法制審議会民法(債権関係)部会資料〈詳細版〉』民事法研究会(2011年1 月)……法制審議会民法(債権関係)部会の各会議で提出された「民法(債権関係)の改正に関する検討事項 詳細版(1)~(15)」を1冊にまとめた資料 集。本書の内容は法務省HPで無料公開されているが膨大な量なので重宝する。 「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理(NBL953号別冊付録)」(2011年5月)……法制審による債権法改正関連資料。法務省HPでダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明』商事法務(2011年6月)……法制審による債権法改正関連資料。上記「論点整理」に簡潔な解説を加えたもの。したがって、本書を購入すれば上記「論点整理」は不要。法務省HPでダウンロード可能。
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【基本書】 【その他参考書】 【入門書・概説書】〔一冊本〕 〔概説書〕 〔その他入門書〕 【注釈書・コンメンタール】〔家族法(親族・相続法)〕 【判例集・ケースブック】〔ケースブック〕 【演習書】 ※このページでは、原則として、民法のほぼ全範囲を扱った書籍が紹介される。 【基本書】 内田貴『民法I-IV』東京大学出版会(I 総則・物権総論 2008年4月・第4版、II 債権各論 2011年2月・第3版、III 債権総論・担保物権 2020年4月・第4版、IV 親族・相続 2004年3月・補訂版)……旧司法試験時代の定番書。ケース・メソッド形式の基本書。判例を簡明にまとめたケースを起点として解説をしていくスタイルを基本とする。内容は高度だが全体的に読みやすい構成となっている。もっとも、一見平易に見える本書だが、限られたページ数で司法試験に必要な事項を網羅するという執筆方針の代償として、初学者がまず頭に入れるべき基本事項の説明が圧縮されているため、広い行間を自分の頭で補いながら読み進め、さらりと書かれた重要情報を正確に読み取るには、読み手にも高度な読解力が要求される。条文の要件・効果に関する記述は曖昧な箇所が多く(要件の説明がコラムに投げられていることすらある)、本書では条文を起点として解釈する姿勢が身に付きづらいという難点が指摘されている。また、現在の通説をあたかも克服された説のように説明したり、未だ重視されている判例について、先例性は失われたと述べる箇所がある等、自説を前面に押し出して判例・通説を軽視する傾向があるという難点も指摘されている。特に、I(総則・物権総論)はこうした傾向が強いため注意が必要である。逆説的だが、初学者であればあるほど、本書だけで済まそうとせず、他の基本書も適宜参照するようにしたほうがよいと言える。IV(親族・相続)は、改訂が遅れ、内容はかなり古くなりつつある。A5判、544頁・680頁・720頁・576頁。 近江幸治『民法講義I-VII』成文堂(I 民法総則 2018年4月・第7版、II 物権法 2020年4月・第4版、III 担保物権法 2020年4月・第3版、IV 債権総論 2020年9月・第4版、V 契約法 2022年2月・第4版、VI 事務管理・不当利得・不法行為 2018年10月・第3版、VII 親族法・相続法 2015年6月・第2版)……内田以前の定番書。二色刷り・図表多用など、見た目は予備校本風であるが、内容には定評がある。著者の専門分野であるIIIの担保物権法は特に評価が高い。学説紹介が豊富で、図を用いて説明しているため、わかりやすい。ただし、所々で異説を採用している部分があることには注意を要する(例えば、物権行為の独自性を肯定する立場からの売買契約の記述など)。Iの第7版第1刷は、訂正・正誤表が作成されている。I~Ⅵは最新版にていずれも債権法改正に対応。A5判、I:428頁、II:322頁、III:404頁、IV:352頁、V:368頁、VI:302頁、VII:412頁。 山田卓生ほか『民法I-V(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(I 総則:2018年1月・第4版、II 物権:2022年3月・第5版、III 債権総論:☆2023年4月・第5版、IV 債権各論:☆2023年3月・第5版、V 親族・相続:2012年9月・第4版)……定評のあるSシリーズ。特に重要な部分に★印が付されている。入門はもとより、択一用のまとめテキストにも好適で、受験生の間でも人気がある(ただし、全ての肢を網羅している訳ではない)。特に物権と債権総論が好評だが、基本的にはずれはない。ただし、Vの親族・相続に関しては、伊藤執筆部分で異説が展開される場面が多く、使いにくいとも言われる。また、Vについては改正民法に非対応であるが、今後の改訂はないとのことである。四六判、340頁・406頁・342頁・548頁・252頁。 我妻榮ほか『民法1-3』勁草書房(1 総則・物権法 2021年4月・第4版、2 債権法 2022年12月・第4版、3 親族法・相続法 2020年3月・第4版〔☆2024年2月改訂予定・第5版〕)……通称「ダットサン」。伝統的通説。小型だが、民法と関連法の概要・歴史、条文の趣旨・要件・効果を網羅している。これだけでは司法試験対策としては情報量が心もとない面もあるが、文章が非常に読みやすく、記述も安定感があるため、今なお人気がある。総まとめにも便利。『民法3 親族法・相続法』の第4版において、債権法、相続法等の改正に対応。また、横組み2色刷となった。なお、第4版の改訂は、1:鎌田薫、2:野村豊弘・沖野眞已、3:野村豊弘がそれぞれ担当。四六判、608頁・704頁・448頁。 平野裕之『コア・テキスト民法I-VI』新世社(I 民法総則:2017年9月・第2版、II 物権法:2018年9月・第2版、III 担保物権法:2019年1月・第2版、IV 債権総論:2017年10月・第2版、V 契約法:2018年3月・第2版、VI 事務管理・不当利得・不法行為:2018年5月・第2版)……財産法完結(親族・相続法の刊行予定あり)。レベルは平野レインボーの一段階下の位置づけ。未修者から上級者までを対象とした中級テキスト。判例・通説をわかりやすく解説しているだけでなく、同程度のレベルの類書と比較すると、学説の最新動向や著者の自説もきちんと明示しており、独習にも使える内容になっている。図表・網掛け・下線に加え、レジュメ的な文体は好みが分かれる。理論面の解説に重きを置いているので、択一式試験に必要な細かい知識は、別途、択一六法等で適宜補充する必要がある。本書に対応した演習書として『コア・ゼミナールI-IV』が、本書のダイジェスト版として『コア・テキスト民法 [エッセンシャル版]』がある。A5判、384頁・296頁・304頁・392頁・424頁・352頁。 平野裕之『民法総則』『物権法』『担保物権法』『債権総論』『債権各論I 契約法』『債権各論II 事務管理・不当利得・不法行為』日本評論社(民法総則:2017年9月、物権法:2022年10月・第2版、担保物権法:2017年3月、☆債権総論:2023年4月・第2版、債権各論I 契約法:2018年8月、債権各論II 事務管理・不当利得・不法行為:2019年12月)……財産法完結(引き続き、親族法・相続法の出版予定あり)。同著者によるコア・テキスト民法シリーズ(新世社)と民法総合シリーズ(信山社)の中間レベルに位置づけられる中・上級者向けの通読用テキストシリーズ。通称「平野レインボー」。学力の向上に合わせ段階的に学習ができる構成を意識したとされる。図表はあえて用いず、発展的内容は◆マークを付して小フォント化。判例の解説・分析を中心として、比較法や起草過程は最小限の解説に留め、学説も代表的なものに限定して説明している。重要判例を引用しているのも親切。決して初学者向けではないが、特定の項目について判例の理論的立場を確認したり学説の対立状況を調べる、という目的のためには初学者にとっても大変便利な書物である。平成29年改正に対応。物権法第2版で令和3年物権法改正に対応。電子書籍版あり。A5判、512頁・498頁・332頁・604頁・528頁・528頁。 山野目章夫『民法概論1-4』有斐閣(1 民法総則:2022年3月・第2版、2 物権:2022年3月、3 債権総論:☆2024年4月、4 債権各論:2020年3月)……民法財産編全体を概説するシリーズ。債権法改正に対応(平成29年民法改正後の条文に基づいた講述となっている)。2の物権は令和4年までの改正法に対応。本文で基本的事項(文献引用なし)、囲みのコラムで発展的事項(文献引用あり)を扱う。具体例を用い、ウィットに富んだ山野目節ともいうべき独特の文体は好き嫌いが分かれるかもしれない。条文索引あり。電子書籍版あり。A5判、394頁・576頁・586頁・540頁。 佐久間毅ほか『民法I-VI(LEGAL QUEST)』有斐閣(I 総則:2020年3月・第2版補訂版、II 物権:2022年3月・第4版、III:2022年3月、Ⅳ 契約:2021年12月、V 事務管理・不当利得・不法行為:2020年3月・第2版、VI 親族・相続:☆2022年3月・第6版)……共著本。VIの出来が良く、定番の書となっている一方で、I・II・Vは記述のムラが激しく、やっつけ仕事ぶりが出てしまっている。章末に練習問題付。電子書籍版あり。A5判、366頁・450頁・頁・400頁・390頁・504頁。 奥田昌道ほか編『法学講義民法1-』勁草書房(1 総則:2018年5月・第3版、2 物権:年月、3 担保物権:年月、4 債権総論:年月、5 契約:年月、6 事務管理・不当利得・不法行為:年月)……悠々社から出版されていたものの改訂新版。平成29年改正民法(債権法)に対応。A5判、368頁・頁・頁・頁・頁・頁。 大村敦志『新基本民法1-8』有斐閣(1 総則編―基本原則と基本概念の法:2019年11月・第2版、2 物権法編―財産の帰属と変動の法:☆2022年3月・第3版、3 担保編―物的担保・人的担保の法:☆2021年3月・第2版、4 債権編―契約債権の法:2019年12月・第2版、5 契約編―各種契約の法:2020年4月・第2版、6 不法行為編―法定債権の法:2020年4月・第2版、7 家族編―女性と子どもの法:2014年12月、8 相続編―遺産管理の法:2017年4月)……基本民法シリーズをリニューアル。1・2・3・4・5・6の第2版は民法改正に対応。個々の条文や判例についての細かな知識を伝達するというよりも、むしろ民法に定められた各種の制度ごとに,民法学界での最新の議論状況・研究動向を反映させた概説を提供することを目指した書物。文章自体は平易で読みやすいが、著者の「民法観」や学問的関心に従って叙述が組み立てられているため、初学者が読む場合は(本書の特長を生かすためにも)他の教科書と併用することが望ましい。2色刷。電子書籍版あり。A5判、284頁・228頁・242頁・252頁・264頁・224頁・226頁・230頁。 小野秀誠ほか『新ハイブリッド民法1-5』法律文化社(1 民法総則:☆2023年10月・第2版、2物権・担保物権法:2023年5月・第2版、3 債権総論:2018年10月、4 債権各論:2018年5月、5 家族法 2021年11月)……『ハイブリッド民法』の民法債権法改正に対応した改訂版。電子書籍版あり。A5判、362頁・352頁・350頁・350頁・408頁。 松尾弘ほか『民法1-5(弘文堂NOMIKAシリーズ)』弘文堂(1 総則 未刊、2 物権・担保物権法 2008年9月・第2版、3 債権総論 2007年11月、4-1 債権各論I―契約・事務管理・不当利得 2008年12月、4-2 債権各論II―不法行為法 2017年9月・第3版、5 親族・相続法 2020年7月・第3版)……「弘文堂NOMIKAシリーズ」は、パンデクテン・システムに沿って、あえて《総論から各論へ》・《一般原則から具体的問題へ》というオーソドックスなスタイルを用いて民法を叙述することを基本コンセプトとした民法テキストのシリーズである。二色刷、図表を用いてわかりやすく説明する。現在、「総則」に相当する部分が未刊となっている。A5判、頁・450頁・344頁・464頁・256頁・480頁。 千葉恵美子ほか『民法1-7(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(1 総則:☆2024年3月、2 物権 2022年5月・第4版、3 担保物権 2020年12月・第3版、4 債権総論 ☆2023年4月・第2版、5 契約 2018年4月、6:☆2023年8月、7 親族・相続 ☆2023年10月・第7版)……共著本。7の親族・相続は、スタンダードな家族法の教科書として広く使われている。四六判、470頁・428頁・404頁・452頁・428頁・404頁・488頁。 川井健『民法概論I-V』有斐閣(I 民法総則 2008年3月・第4版、II 物権 2005年10月・第2版、III 債権総論 2009年4月・第2版補訂版、IV 債権各論 2010年12月・補訂版、V 親族・相続 2015年12月・補訂版[良永和隆補訂])……著者は2013年に逝去。図表の類を用いないオーソドックスな基本書。伝統的通説(我妻説)の立場から、ひっかかる論点を地引網のように次々と拾っていく。取り上げられる判例・学説は網羅的で、民法概論の名にふさわしい。自説の主張は控えめで、各説を比較的公平に紹介しており、記述はやや平板だが分かりやすい。しかし、概説書に徹するためか、論点ごとのつながりが悪くなっていることも少なくなく、全体として論点をぶつ切りにして提供されている印象を受ける。また、II(物権)、特に担保物権の記述は、主要判例の判示事項と判決要旨を並べただけといってもよく、その値段に見合うものとはいえないと評価する者もいる。もっとも、見方を変えれば、基本書としての「無色透明さ」があり、幅広いニーズに応えることができるともいえる。また、判例の数・網羅性については類書の中で群を抜いており、択一式試験の学習には非常に有益である。V(親族・相続)は、択一式試験対策に好適。なお、債権法等の改正には対応しておらず、また、著者逝去により今後の改訂は見込めない。A5判、412頁・536頁・404頁・572頁・266頁。 大村敦志『基本民法I-III』有斐閣(I 総則・物権総論 2007年3月・第3版、II 債権各論 2005年4月・第2版[2010年・第6刷補訂]、III 債権総論・担保物権 2005年5月・第2版)……財産法完結。内田民法と同じ体系を採り、内田民法の7割程度の分量でコンパクトに財産法をまとめている。初学者向けながら、高度な内容にも踏み込んでいる部分もあり、上級者であっても得るものが多い。むしろ、非常に広い行間が初学者にはやや難しいかもしれない。その場合には、他の基本書を読んだうえで、二冊目の基本書として読むのがよいであろう。著者自身も、本書だけでなく、他の本との併読を進めている。2色刷。副読本として『もうひとつの基本民法I・II』有斐閣(I 2005年2月、II 2007年10月)がある。『民法のみかた-『基本民法』サブノート』有斐閣(2010年6月)は民法全分野(家族法含む)にわたる必要最低限の情報を凝縮したレジュメで、学者が書いた予備校まとめ本といった趣。 加藤雅信『新民法大系I-V』有斐閣(I 民法総則 2005年4月・第2版、II 物権法 2005年4月・第2版、III 債権総論 2005年9月、IV 契約法 2007年4月、V 事務管理・不法利得・不法行為 2005年4月・第2版)……財産法完結(ただし、担保物権法はない)。歴史的視座、比較法的視座、法社会学・法人類学的視座から独自の民法理論を構築している。民法の関連分野の記載も充実。学生を主要な読者層としているため、基本的事項・通説(我妻説)・判例の紹介が平易な文章できちんとされているほか、要件事実論にも配慮してある。また、少数学説も網羅しており、事項索引・判例索引の他、条文索引や詳細な参考文献一覧、更には新旧の民法・破産法の条文対照表まで付く至れり尽くせりの本である。しかし、分量の関係で自説の説明以外はかなり圧縮されているうえ、論点落ちもある。なお、研究書としての性格も持たせているため、部分的には極めて高度である。不当利得法については、加藤説が最高裁判例に採用されていることもあり、一読の価値がある。 平野裕之『民法総合3・5・6(民法総合シリーズ)』信山社(3 担保物権法:2009年8月・第2版、5 契約法:2008年3月、6 不法行為法:2013年6月・第3版)……著者のシリーズの中では最も高いレベルの位置づけ。読者として学生のみならず、実務家・研究者も対象としている。詳細な記述に加え、判例集も兼ねた、重厚な体系書に仕上がっており、調べ物に適する。A5変型判、432頁・776頁・576頁。 平野裕之『基礎コース民法I・II(基礎コース[法学]3・4)』新世社(I 総則・物権法 2005年4月・第3版、II 債権法 2005年4月・第2版)……2冊で財産法全分野を概説。著書曰く現代のダットサンを目指したとのこと。A5判、504頁・520頁。なお、同シリーズの民法財産法における入門書として、『基礎コース 民法入門(基礎コース[法学]2)』新世社(2001年4月)がある。A5判、200頁。 田山輝明『民法要義I-VI』成文堂(I 民法総則:☆2023年2月・第4版追補版、II 物権法:2012年5月、III 担保物権法:2013年10月・第3版、IV 債権総論:2011年4月・第3版、V 契約法:2006年5月、VI 事務管理・不当利得・不法行為:2016年5月・第3版)……財産法完結。手堅い記述ながらも、図表やケースメソッドを多用しており、理解しやすい。民法総則の第4版追補版は、第4版(2010年)の一部を修正の上、別冊資料として2017年以降の民法(債権法)改正等による改正点とその改正理由を付けたものであり、2017年以降の民法改正に全面的には対応していない。A5判、362頁・270頁・252頁・281頁・388頁・346頁。 清水元『プログレッシブ民法』成文堂(物権法:2010年5月・第2版、担保物権法:2013年4月・第2版、債権総論:2010年4月、債権各論I:2012年3月、債権各論II:2015年2月)……未完。著者は2014年に逝去。A5判、212頁・338頁・360頁・314頁・388頁。 小野秀誠ほか『ハイブリッド民法1-5』法律文化社(1 民法総則 2014年4月・第2版、2 物権・担保物権法 2007年3月、3 債権総論 2006年11月、4 債権各論 2007年4月、5 家族法 2017年4月・第2版補訂)……法学部と法科大学院を架橋する教材となることを目的として執筆されている(はしがきより要約)。新トピックも網羅。5の家族法は定評あり。A5判、360頁・350頁・346頁・340頁・396頁。 奥田昌道ほか『法学講義民法1-6』悠々社(1 総則 2007年・第2版、2 物権 2005年10月、3 担保物権 2006年7月、4 債権総論 2006年、5 契約 2008年、6 事務管理・不当利得・不法行為 2006年)……判例・通説を踏まえたスタンダードテキスト。財産法完結。判例については、本シリーズの姉妹編ともいうべき『判例講義民法I 総則・物権』、『同・II 債権』との連動が図られていた。A5判、382頁・212頁・256頁・392頁・388頁・336頁。なお、出版社である株式会社悠々社は平成29(2017)年6月30日をもって廃業となり、書籍の販売はすべて終了となった。 (古典:平成16年民法現代語化以前) 我妻榮『民法講義Ⅰ-Ⅴ4』岩波書店(I・1965年5月・新訂〔10刷にて補訂あり〕、II・1983年5月・新訂〔有泉亨補訂。3刷にて補訂あり〕、III・1968年11月・新訂〔3刷にて補訂あり〕、IV・1964年3月・新訂〔10刷にて補訂あり〕、V1・1954年12月、V2・1957年5月〔16刷にて補注あり〕、V3・1962年7月、V4・1972年1月、いずれもOD版対応。)……著者は1973年に逝去。民法で通説といえば、概ね我妻説を指す。不法行為法・親族法・相続法は民法講義としては未出版だが、同著者による『事務管理・不当利得・不法行為(新法学全集)』日本評論社(1937年3月、復刻版1988年11月)、『親族法(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1982年3月、OD版2001年4月)があるため、ほぼ全範囲にわたって著書があることになる。大部であるので、マイナーな議論まで網羅的に取り扱っていることのほか、極めて抽象的な定義付けから体系的に論じていく点に、近時の本には見られない特徴がある。古いとはいっても、今なお実務への影響力は強く、余力のある学生は、総則・物権・債権総論などを今から読んでおきたい。なお、文中で登場する「通説」は鳩山説などを意味していて、著者がそれに対して異論を述べた説が現在の通説となっていることがある。本書で紹介される学説には、すでに絶滅したものも少なくない。したがって、すでに民法を一通りマスターし、学説史にも明るい学生でなければ、混乱をきたす可能性もある。我妻であるから、あるいは実務であるからといって無批判、無条件に鵜呑みにすることなく、本書で展開されているのは基本的に戦前ないし戦後初期の理論であるということを念頭に置いて熟読することが望まれる。 鈴木禄彌『民法総則講義』『物権法講義』『債権法講義』『親族法講義』『相続法講義』創文社(2003年9月・2訂版、2007年11月・5訂版、2001年10月・4訂版、1988年4月、1996年8月・改訂版、相続法講義以外は創文社オンデマンド叢書でOD版対応。)……著者は2006年に逝去。物権法のみ現代語化に対応。学習の便宜のため、あえて体系を崩しており、早くからケースメソッドを採用するなど、時代を先取りした画期的な教科書であった。抽象的な定義や要件・効果の羅列を避け、制度のあり方や実際の機能に専ら着目するという内容になっている。情報量も絞られており、端的に答えを知りたいときの辞書的な用法には向かないが、常に具体例をもとにして条文の趣旨が極めて明快に語られているので、通読によって大きな効果を発揮するだろう。抽象的な定義が書かれている教科書と併読するのが良いと思われる。主張・立証責任の配分についても充分な記述があり、本書に取り組むことで要件事実に関する理解も深まるであろう。時折挿入される図表がすこぶるよくできている点もよい。なお、判例に言及する際、判決文を引用しないため、判例集や判例付六法を準備して読むべきである。シリーズの中でも、特に『物権法講義』は名著といわれ、星野英一も自著のはしがきで「最高の水準」と絶賛している。 星野英一『民法概論1-4』良書普及会(I 序論・総則 1993年6月・改訂第16刷、II 物権・担保物権 1994年5月・合本再訂第10刷、III 債権総論 1992年2月・補訂版第6刷、IV 契約 1994年10月・合本新訂第5刷)……著者は2012年に逝去。自治大学校における講演テープに加筆し「自治実務セミナー」誌に連載したものにさらに手を加えたもの。本書の特徴としては、制度や概念につき、民法の規定と離れていきなり定義を書くことを努めて避け(はしがき)たことが挙げられる。これは、民法の理解はまず、条文から出発し、ついで判例によるその適用の知識を経なければならないとの考えによる。改版なきまま加筆がなされているので、できるだけ新しい刷数をチェックすべきである。契約法まで。版元の良書普及会が出版終了。家族法については放送大学のテキスト(放送大学教育振興会、1994年3月、A5判、201頁)あり。 松坂佐一『民法提要1-5』有斐閣(1974年12月・第3版、1980年12月・第4版、1982年2月・第4版、1993年7月・第5版、1992年3月・第4版、いずれもOD版対応。)……著者は2000年に逝去。かつての定番書。財産法完結・家族法あり。我妻説に立っている。 北川善太郎『民法講要1-5』有斐閣(2001年6月・第2版、2004年5月・第3版、2004年4月・第3版、2003年12月・第3版、2001年4月・第2版)……著者は2013年に逝去。財産法完結・家族法あり。記述は平板ながら、詳しい。契約責任説の主唱者である。自説僅少。判例が豊富に紹介されている。なお、潮見佳男と山本敬三は北川ゼミ出身。 船越隆司『民法総則』『物権法』『担保物権法』『債権総論』尚学社(2001年4月・改訂版、2004年4月・第3版、2004年4月・第3版、1999年4月)……中央大学名誉教授。 遠藤浩ほか『民法(1)-(9)(有斐閣双書)』有斐閣(1 総則 2004年9月・第4版増補補訂3版、2 物権 2003年5月・第4版増補版、3 担保物権 2003年12月・第4版増補版、4 債権総論 2002年12月・第4版増補補訂版、5 契約総論 1996年12月・第4版、6 契約各論 2002年9月・第4版増補補訂版、7 事務管理・不当利得・不法行為 1997年1月・第4版、8 親族 2004年5月・第4版増補補訂版、9 相続 2005年1月・第4版増補補訂版)……かつての司法試験民法のスタンダードテキスト。有力な中堅学者が長老陣になるまで30年間にわたり改訂を重ねてきたため、記述は安定している。判例・通説を基礎に有力説を加え、基本的事項を丁寧に解説する良書である。判例についても文字サイズを落として事案と判旨と評価をコンパクトに解説している。自説を抑えて書いてあるため、平板との声もあるが、よく読みこめば、それぞれの著者の個性が出ており飽きない。しかし、民法現代語化に対応したのは(9)のみであり、(5)と(7)は1996年の改訂が最後となっている。他は2002年から2004年にかけて改訂されており、担保物権は平成15年改正に対応しているので現在でも使えないわけではないが、使用者はかなり減っている。(9)を除き2004年の増刷を最後に絶版となった。 井上英治『財産法概論』中央大学出版部(2001年1月・第三版)……著名な予備校講師による財産法の教科書。法曹同人から出版されていた旧版を改訂し、大学出版部から刊行したもの。伝統的なパンデクテン体系を切り崩し、実際的観点から財産法分野を再構成。簡潔な叙述で、まとめ用として適している。ただし、内容は現代語化以前のもの。A5判、491頁。 【その他参考書】 内田貴・大村敦志編『民法の争点(新・法律学の争点シリーズ1)』有斐閣(2007年9月)……B5判、368頁。 池田真朗編著『民法Visual Materials』有斐閣(2021年3月・第3版)……資料、図表などを用いた「目で見る」サブテキスト。B5判、190頁。 椿寿夫・中舎寛樹編著『解説 類推適用からみる民法』日本評論社(2005年6月)……A5判、300頁。 椿寿夫・新美育文編著『解説 関連でみる民法1・2』日本評論社(2007年2月、2007年3月)……A5判、240頁・276頁。 椿寿夫・中舎寛樹編著『解説 新・条文にない民法――概念・制度がもっとよくわかる』日本評論社(2010年12月)……A5判、405頁。 北居功・花本広志・武川幸嗣・石田剛・田高寛貴『コンビネーションで考える民法』商事法務(2008年10月)……A5判、347頁。 加賀山茂『民法条文100選―100ヵ条で学ぶ民法』信山社(2017年2月)……A5変型判、260頁。 武川幸嗣『プラスアルファ基本民法(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2019年3月)……学生が民法学を学ぶ上で重要なテーマ、学習上苦労するテーマを24選び、条文・条文解釈・判例を整理したもの。全24章。A5判、304頁。 遠山純弘『請求権から考える民法2・3(シリーズ全3巻予定)』信山社(1 契約に基づく請求権:☆2024年3月予定、2 契約に基づかない請求権:2023年3月・第2版、3 債権担保:2020年10月)……「2 契約に基づかない請求権」は、事務管理・物権・不法行為・不当利得。事例問題の解決を考える際に、その問題を考える順序に従って、各制度を学ぶという内容。誤植が多い。A5変型判、492頁・432頁・356頁。 澤田和也監修、大坪和敏編著ほか『図解 民法(総則・物権)(図解シリーズ)』、『図解 民法(債権)(同)』、『図解 民法(親族・相続)(同)』一般財団法人大蔵財務協会(総則・物権:2019年11月・令和元年版、債権:2019年11月・令和元年版、親族・相続:2020年8月・令和2年版)……「図解 民法(親族・相続)(令和元年版)」(2019年8月)において、平成30年民法改正における「成人年齢の引下げ」、『遺言制度の見直し』、『遺留分制度の見直し』、『特別の寄与』、『配偶者の居住の権利』の新設等「相続法制」の改正及びそれに伴う所要の措置等を織り込み、最新の裁判例等を踏まえて改訂。「図解 民法(親族・相続)(令和2年版)」において、令和元(2019)年の特別養子縁組制度の改正を反映。B5判、364頁・404頁・580頁。 (注)「債権法改正関係」については、「民法(債権総論)」のページを、「相続法改正関係」については、「民法(家族)」のページを参照。 【入門書・概説書】 〔一冊本〕 潮見佳男『民法(全)』有斐閣(2022年3月・第3版)……旧著『入門民法(全)』を改題したもの。通称『潮見全』。著者は2022年に死去。1冊で民法総則から親族・相続法までの民法全分野をカバー。パンデクテン体系に沿う。民法全体を判例・通説に絞って簡潔に記述しており、司法試験向きの実践的なまとめ本として受験生の間で支持を得ている。ただし、紙幅の都合上、重要な論点の記述は厚いが、その他の論点は大胆に省略されているため、網羅性は高くない。なお、著者は債権法に関する当代一流の学者であるが、物権法については専門外のため、本を書けるほどの知識がないと明言しており、本書の執筆も出版社に頼まれて行ったものと述べている。したがって、物権法に関しては、他の書籍の記述をなぞるだけになっており、穏当な記述とも平凡な記述とも言え、賛否が分かれる。なお、旧書名には「入門」とあったが、初学者に配慮された十分な説明はなく、入門用途には適さない(著者自身も、民法全体を学んだ者のための再入門の本であると述べている)。第2版で、相続関係改正や成年年齢関係改正などの各種法改正に対応した。第3版において、所有者不明土地に関する令和3年改正等に対応。電子書籍版(※プリントレプリカ版とリフロー版の2種類)あり。全9部。A5判、782頁。 道垣内弘人『リーガルベイシス 民法入門』日本経済新聞出版社(2022年8月・第4版〔☆2024年1月・第5版改定予定〕)……旧著『ゼミナール民法入門』を改題したもの。初版(2014年1月)までは財産法分野のみだったが、第2版(2017年6月)から親族法・相続法が追加され、一冊で民法全体が学べる書となった。また、法律を初めて学ぶ者のために、第1章に法学入門も置かれた。教育効果や実際の機能を意識して、パンデクテン体系を崩した説明となっている。上掲の潮見『民法(全)』に比べると情報量が少なく、読み物としての性格が強いが、その分、読み手を飽きさせない記述となっている。また、一般的な基本書では十分な説明がない歴史的沿革や背景知識にも適宜触れられており、初学者が民法理論の全体像をつかむには最適の1冊と言える。第3版で、平成30年相続法改正、商法改正、消費者契約法改正、成年年齢の引き下げ等に対応。2017年・2018年民法改正に関係する箇所は、本文中に[改正点]マークが入れられ、明示されており、改正前民法との違いを意識しながら学ぶことができる。電子書籍版あり。全13章。A5判、776頁。 新井誠・岡伸浩編著『民法講義録』日本評論社(☆2023年3月・第3版)……一冊で民法全体(総則・物権・債権・親族・相続)を通覧。改訂版において、債権法改正に準拠し、相続法改正も反映された。全7篇、全48章。A5判、1210頁。 ☆松尾弘『民法』慶應義塾大学出版会(2023年11月)……著者による後掲『民法の体系(第6版)』をパンデクテン体系に即した内容に編成し直して改訂した体系書。1冊本だが960頁という大著で、二段割注を多用していることから多くの情報量がある(有斐閣Sシリーズ民法レベルの情報は載っている。)。ただ、論点の解説は薄いのでまとめ本か民法全分野を概観する辞書としての用法がメインとなるだろう。A5判、960頁。 松尾弘『民法の体系 市民法の基礎』慶應義塾大学出版会(2016年10月・第6版)……民法全分野を権利主体論、権利客体論、権利変動論、権利効果論へと体系化。1冊本としては相当分厚いため、内容的に細かい知識も載っている。第6版で民法(債権関係)改正法案に対応した。難点は誤植が多いこと。出版社のHPにおいて正誤表・補足情報をDLできる。A5判、848頁。 長坂純『民法〔財産法〕講義』勁草書房(☆2023年2月・第2版)……財産法分野のみ。2020年4月1日に施行された改正債権法を踏まえ、民法の財産法分野(総則編・物権編・債権編)を解説。第2版でR3物権法改正に対応。司法試験用のまとめ本としてはやや情報不足。全22講。事項索引・判例索引あり。A5判、432頁(本文410頁)。 平野裕之『コア・テキスト民法 [エッセンシャル版]』新世社(2021年9月)……既に民法全体を一通り学んだ者向けの総まとめ本(はしがきにもあるように、入門用途には全く適さない)。物権法、相続法改正など2021年までの改正を盛り込んでいる。著者の他のシリーズにはない親族法と相続法の解説もされているのが特徴。基本的には判例・通説の立場で解説されているが異論がある点では私見を加えている。売買の特則である消費者契約法や特定商取引法、不動産賃貸借の特則である借地借家法といった特別法の解説はほとんどされておらず民法が中心である。他の基本書とは異なる構成を取っている部分がある。性質としては『潮見全』に近いが、本書はコア・カリキュラムと『趣旨・規範ハンドブック』を用いて、重要な論点が落ちていないかチェックした(はしがき)とのことであり、本書の方がより受験生フレンドリーな内容となっている。A5判、776頁。 (平成29年債権法改正未対応) 川井健『民法入門』有斐閣(2012年7月・第7版)……1冊本。パンデクテン体系に沿い、伝統的通説(我妻説)に従って、民法全分野を概説。タイトルには「入門」とあるが、受験生が直前期にさっと通読するためにも有益である。判例の準則をしばしば簡略化しているので、読み手の学力がないと使いこなせない可能性がある。また、誤植や脱字の類がしばしば見られる。第7版において、家事事件手続法等の改正も織り込みつつ、旧版(2007年12月・第6版)刊行以降の判例が織り込まれた 。なお、債権法等の改正には対応しておらず、また、2013年に著者が逝去したため、今後の改訂は見込めない。序論+全5編。A5判、582頁。なお、姉妹本として『はじめて学ぶ民法―所有、契約、不法行為、家族』有斐閣(2011年12月)がある。 淡路剛久『入門からの民法――財産法』有斐閣(2011年12月)……財産法分野のみ。放送大学の教材テキストを加筆修正したもの。典型化された紛争(Case)から民法規範にアプローチする方法を取り入れたとのこと。書名には「入門」とあるが、一通り学んだ者の復習用として使用されることも想定されている。全28章。A5判、532頁。 〔概説書〕 原田昌和ほか『民法(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社(民法総則:2022年2月・第2版、物権法:☆2022年3月・第3版、担保物権法:2019年4月・第2版、債権総論:☆2023年9月・第2版、契約法:☆2024年2月・第2版、事務管理・不当利得・不法行為:2021年6月、家族法:☆2023年9月・第4版)……民法総則(第2版)については、R3相続分野、物権分野の改正に対応。物権法(第3版)については、R3相続分野・物権分野の改正に対応。担保物権法(第2版)については、債権法改正に対応。家族法(第4版)については、R3相続法改正・R4親族法改正に対応。A5判、240頁・216頁・208頁・280頁・264頁・280頁・276頁。 山本敬三監修、栗田昌裕・坂口甲・下村信江・吉永一行『民法1、3、4、5、6、7(有斐閣ストゥディア)〔全7巻(予定)〕』有斐閣(1 民法総則:2021年3月、2 物権:未刊、3 担保物権:2021年11月、4 債権総論:2018年12月、5 契約:☆2022年9月、6 事務管理・不当利得・不法行為:☆2022年9月、7 親族・相続:☆2023年12月)……基本事項を抑えるには最適な入門書。下部のnoteに定義が載っており、初学者には非常に便利である。2色刷。A5判、316頁・頁・316頁・320頁・324頁・326頁・282頁・344頁。 中田邦博ほか『新プリメール民法1-5(αブックス)』法律文化社(1 民法入門・総則:2020年3月・第2版、2 物権・担保物権法:2018年6月、3 債権総論:2020年4月・第2版、4 債権各論:2020年3月・第2版、5 家族法:☆2023年4月・第3版)……初学者向けに読みやすさ・わかりやすさを追求したシリーズ。旧著『プリメール民法』法律文化社(2005年10月-2014年10月)のリニューアル版。2017年の民法(債権関係)改正に対応。なお、過去のものとは執筆者がかなり変更されている分野があるので、注意が必要である。A5判、354頁・298頁・286頁・260頁・272頁。 田井義信監修、大中有信編ほか『ユーリカ民法1~5』法律文化社(1 民法入門・総則:2019年7月、2 物権・担保物権:2018年4月、3 債権総論・契約総論:☆2023年4月・第2版、4 債権各論:2018年7月、5 親族・相続:2019年5月)……「ユーリカ」(「わかったぞ!」という意味)という企画趣旨のもと、複雑な民法体系がどのような仕組みでどのような役割を果たしているのかを解説したシリーズ。 A5判、334頁・258頁・292頁・322頁・290頁。 永田眞三郎ほか『エッセンシャル民法1-3(有斐閣ブックス)』有斐閣(1 民法入門・総則:☆2023年3月・第5版補訂版、2 物権:2019年10月・第2版、3 債権:☆2022年11月・第2版)……財産法のみ。平成29年民法(債権法)改正に対応。A5判、254頁・254頁・382頁。 (平成29年債権法改正未対応) 後藤巻則・滝沢昌彦・片山直也編『【プロセス講義】 民法Ⅰ~Ⅵ (プロセスシリーズ)』信山社(Ⅰ 総則:2020年3月、Ⅱ 物権:2019年8月、Ⅲ 担保物権:2015年9月、Ⅳ 債権1:2016年12月、Ⅴ 債権2:2016年9月、Ⅵ 家族:2016年6月)……プロセス講義民法シリーズでは、基本コンセプトとして、①趣旨説明、②基本説明、③展開説明という叙述の3段階化が図られている。「Ⅰ 総則」は、平成29年民法(債権法)改正に対応。A5変型判、340頁・260頁・272頁・320頁・336頁・320頁。 甲斐道太郎・乾昭三・椿寿夫編『新民法概説1-3(有斐閣双書)』有斐閣(1 総則・物権:2005年4月・第4版、2 債権:2005年4月・第3版、3 親族・相続:2006年4月・第3版)……通説・判例にしたがって簡潔・明快に解説したコンパクトなテキスト全3巻。ただし、刊行以降の法改正・判例等が反映されていないため、注意が必要である。四六判、398頁・364頁・272頁。 〔その他入門書〕 野村豊弘『民事法入門(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2022年3月・第8版補訂版)……民法(財産法・家族法)を中心として、民事法の全体像を案内する入門書。1章の民事法(民事法の意義・構造/法源)から、16章の権利の実現(権利の実現/紛争の解決と裁判制度)までを扱う。第8版において、成年年齢変更や相続法、親子法関係の改正が織り込まれた。第8版補訂版において物権法改正等に対応。全16章。四六判、268頁。 米倉明『プレップ民法(プレップ・シリーズ)』弘文堂(2018年1月・第5版)……典型的な売買契約をモデルに、想定される法律問題を時系列順に解説する。含蓄のある良書だが、初学者がその深みを理解することは難しいとの声もある。第5版において、債権法改正をふまえ全面改訂。四六判、260頁。 我妻榮・良永和隆著、遠藤浩補訂『民法』勁草書房(☆2023年11月・第11版)……最も適用の多い事柄に即して、関連する制度と横断的な知識を集約し、民法の全体像を鳥瞰する。第11版において、令和3年、4年の民法改正に対応。全3編、全30章。縦組み。B6判、328頁。 潮見佳男・中田邦博・松岡久和編『18歳からはじめる民法(〈18歳から〉シリーズ )』法律文化社(☆2023年4月・第5版)……第4版において、債権法改正から2019年6月成立の特別養子制度などの法改正に対応。電子書籍版あり。全16講。B5判、114頁。 松久三四彦・遠山純弘・林誠司『オリエンテーション民法』有斐閣(2022年3月・第2版)……文中に登場する法律用語に逐一脚注で説明を付しており、また、読みづらそうな漢字にはフリガナがふられているため、全くの初学者であっても問題なく読み進めることができる。なお、第4部は「まとめ」となっている。事項索引が充実しているので民法の簡易辞書として用いることもできる。第2版は2021年物権法・相続法改正に対応。電子書籍版あり。全4部、全10章。四六判、426頁。 渡邊力編『民法入門ノート』法律文化社(☆2024年3月・第2版)……民法の全範囲(財産法・家族法)を75のトピックに分類し、各トピックの冒頭に事例Caseを置き、民法の果たす役割を読み解く。各テーマ2頁読み切りとなっており、空欄・穴埋め問題と巻末の練習問題で理解度確認もできる。近時の法改正に対応。第2版はR3物権法改正、R4親子法改正に対応。全27Chapter。B5判、180頁。 長瀬二三男・永沼淳子『民法入門(Next教科書シリーズ)』弘文堂(2020年8月)……法学部以外で民法を分かりやすく教えるために作成されたが、必要最低限度の条文や判例を引用しており、法学部生で民法の学習をこれから始める者やまとめ用テキストにも最適である。入門と題するだけあって、転用物訴権等、やや発展的分野については触れられていないので物足りなさはある。2017年債権法改正および2018年相続法改正などの法改正に対応。全6章。A5判、404頁。 遠藤研一郎『民法[財産法]を学ぶための道案内』法学書院(2018年4月・第2版)……第2版において、平成29(2017)年6月に公布された改正民法を踏まえ、内容が改訂された。全13章。A5判、240頁。 池田真朗『民法への招待』税務経理協会(2020年11月・第6版)……全10章。四六判、304頁。 円谷峻・武川幸嗣『民法』放送大学教育振興会(2017年3月・新訂)……放送大学の教材。改正債権法については本書の中では簡単に言及されるのみで、詳しい解説については放送される講義の中で行うこととしているため、本書のみで改正法に対応することは困難。全15章。A5判、300頁。 デイリー法学選書編修委員会編『ピンポイント民法』三省堂(2018年4月)……法学部生・ビジネスマン・一般読者向けの新法学教養シリーズの民法編。四六判、192頁。 田中嗣久・田中義雄・大島一悟『民法がわかった(わかったシリーズ)』法学書院(2019年9月・改訂第5版)……全7部。2色刷。A5判、448頁。 河上正二『新ブリッジブック鳥瞰民法(全)』信山社(2021年9月)……1冊で民法全分野を概観するコンパクトな入門書。名宛人として留学生をも対象としており、難読漢字にルビを振るなどしている。R3物権法・相続法改正には未対応。債権法改正については対応している箇所もあれば対応していない箇所もありと中途半端な内容となっている。46変型判、216頁。 窪田充見『契約法入門─を兼ねた民法案内』弘文堂(2022年3月)……契約法概説を兼ねた民法(財産法)入門書。講談社ブルーバックスのように面白く読めるものを書きたいというコンセプト(はしがき)ということもあり、ユーモアを含んでおり初学者にも読みやすい。とりわけ債権法改正マターにつき高度な内容をわかりやすく解説している。事項索引がないのが残念。全22章。四六判、272頁。 (平成29年債権法改正未対応) 我妻榮ほか『民法案内1-11,13』勁草書房(2006年1月-2014年8月)…… 講義口調の格調高い入門書。12巻が未刊のため、契約各論は使用貸借まで。家族法はない。扱う判例や学説がやや古いが、最近の基本書では説明が省かれている箇所について詳細な説明があるという特色がある。知識を補うための副読本としても有用。我妻『民法講義』とは異なる見解を採用している部分があるなど学術的な価値もある。1巻は「私法の道しるべ」と題され、民法の勉強の心構えや最小限知っておくべきことが述べられており、初学者にとって特に有用。川井によって各巻について順次改訂がなされていたが、川井の逝去(2013年)に伴い、改訂は中断している。なお、未刊の12巻は、我妻執筆の賃貸借の途中と川井の執筆からなる予定であったが、川井の逝去と債権法改正を理由に延期されたままとなっている(参照)。 幾代通・遠藤浩編、奥田昌道補訂『民法入門(有斐閣双書)』有斐閣(2012年6月・第6版)……旧版(第5版:2006年4月)以後の民法の改正(公益法人制度改革、離婚後の子との面会交流、親権制限など)のほか、利息制限法等の関連法改正に対応。全21章。四六判、326頁。 裁判所職員総合研修所監修『民法概説』司法協会(☆2021年6月・五訂版)……財産法のみ。裁判所職員総合研修所が初めて民法を学ぼうとする人のために、民法の考え方の基本を解説したもの。A5判、326頁(本文304頁)。 山野目章夫編『ブリッジブック先端民法入門(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2010年1月・第3版)……民法のコアコンセプト(重要概念─ルール・システム)に容易にアクセスできるように工夫された民法の入門書。第3版において、平成18(2006)年の法人法改正に対応。執筆者(山野目章夫・角田美穂子・池田雅則・高田淳・本山敦)。全20Access。四六判、360頁。 近江幸治『民法講義0 ゼロからの民法入門』成文堂(2012年2月)……第1部 ゼロからの民法入門、第2部 教養民法(民法概論)の2部構成。第2部は、「民法講義」から文章、イラストを補訂・再製作して使用。全9章。A5判、304頁。 椿寿夫『民法(財産法)25講(有斐閣双書)』有斐閣(2006年7月・第2版3訂版)……四六判、300頁。 後藤巻則『条文で読む民法 総則・物権・債権』法学書院(2006年5月)……条文に即して民法総則・物権・債権の基本事項・重要事項を解説。序説(民法の世界へ)+全3編、全22章。A5判、360頁。 成田博『民法学習の基礎』有斐閣(2014年4月・第3版)……四六判、254頁。 木山泰嗣『弁護士が教える 分かりやすい「民法」の授業(光文社新書)』光文社(2012年4月)……紙上における2日間の集中講義。全13時限。新書判、282頁。 【注釈書・コンメンタール】 我妻榮・有泉亨・清水誠・田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権』日本評論社(☆2022年9月・第8版)……定評あった我妻・有泉コンメンタール(分冊)を合冊し、現行法又は改正法に合わせて補訂したコンメンタール。したがって、我妻説をベースに現行法・判例等を補訂していることから、内容に一貫性がないという評価もある。既に克服された我妻説をそのまま載せている箇所もある(たとえば、契約の無効取消における物の返還につき、法189条以下の果実返還、損害賠償、費用償還の規定が適用されるか否かという論点)。原著が民法のみならず関連法令にも多数言及していたことに起因する改訂漏れと思われる箇所もある。内容的な誤りも見受けられる。ただし、短答レベルの知識は網羅している。第8版において2021年物権法改正に対応。債権法改正には第5版(2018年3月)から一応対応はしているものの、改正条文に対する解説はそれほど多くなく、改正前条文の解説をほぼそのまま残しているので、債権法改正をきちんと勉強したい向きには向かない。なお、我妻は1973年に、有泉は1999年に、清水2011年に逝去。全3編、全22章。A5判、1736頁。 大村敦志・道垣内弘人・山本敬三編集代表ほか『新注釈民法 1、5、6、7、8、11Ⅱ、14、15、16、17、19(有斐閣コンメンタール)〔全20巻(予定)〕』有斐閣(2017年2月-)……判例・学説の現在の到達点を示す本格的コンメンタール。A5判、1(総則(1) §§1~89):862頁、5(物権(2) §§180~294):854頁、6(物権(3) §§295~372):836頁、7(物権(4) §§373~398の22):674頁、8(債権(1) §§399~422の2):862頁、11Ⅱ(債権(4)§§533~548の4):436頁、14(債権(7) §§623~696):712頁、15(債権(8) §§697~711):984頁、16(債権(9)§§712~724の2):696頁、17(親族(1) §§725~791):804頁、19(相続(1) §§882~959・第2版):884頁。 谷口知平ほか編『新版注釈民法』有斐閣(1988年6月-2015年9月)…… 研究者、実務家必携の最も信頼できる注釈書。全28巻(全29冊)予定であったが、第9巻・物権(4)改訂版(2015年9月)をもって、諸事情により以降刊行取止めとなった。未完となったのは第5巻(138条-174条の2)、第8巻(295条-368条)、第11巻(427条-473条)、第12巻(474条-520条)、第19巻(709条)、第20巻(710条-724条)だが旧注釈民法で論理的な部分は補うことが出来よう。刊行時期が古いものが多いので注意が必要とはいえ、司法試験対策として最も使いやすいだろう。近年旧版注釈民法とともにデジタルデータ化(DVD)された。また絶版分につきオンデマンド出版で復刊された。 松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(財産法)』日本評論社(2020年9月・第2版)……財産法全分野を1冊にまとめたコンメンタール。コンセプトは「現在の民法に関する法状況をコンパクトに知るために最適化されたコンメンタール」(はしがき)。学説の対立状況にはあえて踏み込まず、判例・通説(多数説)に依拠した叙述を心がけている。判例の引用は基本的に最高裁のものに限定し、学説の引用も判例の考え方を理解するのに必要な限度で行うことを基本としている。条文の重要度に応じて解説に濃淡をつけており、たとえば、相隣関係の条文について注釈がなかったりする。第2版は、主として債権関係を中心とした改正に対応し、2022(令和4)年施行の改正民法(成年年齢引下げ)にも対応。さらに消費者契約法(実体法部分)の条文解説も付されている。我妻有泉コンメより解説は薄いものの、改正債権法にいち早く完全対応している(改正債権法の解説は我妻有泉コンメよりはるかに詳しい。)。なお、本書の内容はTKCのインターネットコンメンタールとしても提供されている。全3編、全22章。A5判、1360頁。 遠藤浩ほか編『基本法コンメンタール 民法総則(別冊法学セミナー)』『同 物権(同)』『同 債権総論(同)』『同 債権各論1(同)』『同 債権各論2(同)』『同 親族(同)』『同 相続(同)』日本評論社(民法総則:2012年4月・第6版、物権:2005年10月・第5版新条文対照補訂版、債権総論:2005年7月・第4版新条文対照補訂版、債権各論1:2005年8月・第4版新条文対照補訂版、債権各論2:2005年8月・第4版新条文対照補訂版、親族:2008年2月・第5版、相続:2007年9月・第5版)……スタンダードなコンメンタール。初版から年月を重ねているため、執筆者の多くが民法学界の大御所となっている。民法現代語化、一般法人法改正に対応した本シリーズは、『新版注釈民法』より新しく、細かい裁判例や学説にまで言及しているため、実務的な利用価値は高い(第一法規の「判例民法シリーズ」は基本判例の紹介が多く、情報量が少ない)。一方で、学生向けという点では、やや情報が古いことは否めない。なお、我妻コンメでは扱われていない親族・相続の出版年月は、それぞれ、2008年2月、2007年9月と比較的新しい。ただし、家族法分野における近時の法改正(平成23・25年等)には未対応であるため、注意が必要である。B5判、民法総則:328頁、物権:384頁、債権総論:248頁、債権各論1:256頁、債権各論2:196頁、親族:372頁、相続:276頁。 鎌田薫・松岡久和・松尾弘編ほか『新基本法コンメンタール 物権(別冊法学セミナー)』『同 債権1(同)』『同 債権2(同)』日本評論社(物権:2020年2月、☆債権1:2021年10月、債権2:2020年9月)……学生向けの安価なコンメンタール。『物権』は、2019年までの法律の制定・改正、新判例に対応。『債権1』は、「第3編債権・第1章総則」を扱う。2021年までの法改正、新判例に対応。『債権2』は、「第3編債権・第2章契約」を扱う。債権法改正を受け、2020年までの法改正、新判例に対応。事項索引・判例索引あり。なお、同シリーズの『親族』『相続』は、以下に記載。B5判、物権:422頁・債権1:368頁・債権2:346頁。 〔家族法(親族・相続法)〕 ☆松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(家族法)』日本評論社(2021年4月)……同編者による『学習コンメンタール 民法2 親族・相続(学習コンメンタールシリーズ)』を『新・コンメンタール』シリーズにあわせて改題・改訂した最新のコンメンタール。主に法学部生、法科大学院生が家族法を理解するために、必要不可欠な判例、学説情報を織り込み、条文ごとにメリハリを付けて解説。H30相続法改正など2022年施行の改正民法に対応。A5判・500頁。 松川正毅・窪田充見編『新基本法コンメンタール 親族(別冊法学セミナー)』『同 相続(同) 民法第882条〜第1044条』日本評論社(2019年9月・第2版、☆2023年7月・第2版)……「親族」は、民法親族編、任意後見契約に関する法律、後見登記等に関する法律の逐条解説。再婚禁止期間、成年後見人の事務、特別養子に関する改正等、令和元年6月までの法改正に対応。「相続」は、民法相続編の逐条解説に、相続税、遺言書保管法の解説を加えたもの。民法改正(平成30年、令和3年)に対応。B5判、420頁・368頁。 大塚正之『臨床実務家のための家族法コンメンタール 民法親族編(勁草法律実務シリーズ)』『同 民法相続編(同)』勁草書房(2016年1月、2017年1月)……元裁判官による親族法と相続法のコンメンタール。逐条で本条の趣旨、立法の経緯、実務の運用をそれぞれ解説。A5判、424頁・352頁。 梶村太市『最新民法親族編逐条解説』『最新民法相続編逐条解説』テイハン(2021年8月、☆2022年8月)……A5判、624頁、564頁。 本山敦編著『逐条ガイド親族法 民法725条~881条』『同相続法 民法882条~1050条』日本加除出版(2020年2月、☆2022年11月)……『戸籍時報』連載を書籍化したもの。1.「判例・通説に即して簡潔・明瞭に条文を説明」、2.「戸籍先例に目配りをする」という編集方針でまとめられた法律実務家・戸籍行政従事者用の逐条解説書。債権法・相続法の大改正、重要な最高裁判例に対応。A5判、480頁、508頁。 【判例集・ケースブック】 潮見佳男・道垣内弘人ほか編『民法判例百選I・II・III』有斐閣(I 総則・物権 ☆2023年2月・第9版、II 債権 ☆2023年2月・第9版、III 親族・相続 ☆2023年2月・第3版)……スタンダードな判例集。第8版等は、総則・物権分野101件、債権分野111件、親族・相続分野101件を収載。B5判、212頁・232頁・212頁。 遠藤浩・川井健・民法判例研究同人会編『民法基本判例集』勁草書房(2020年9月・第4版)……ダットサン民法に対応した、解説なしのシンプルな判例集。第4版において、旧版(2014年12月・第3版補訂版)を抜本的に刷新、民法全編452件の重要判例を事実と判旨のみでコンパクトに収録。姉妹書・ダットサン民法第1巻(未刊行)、第3巻(2020年3月・第4版)と相互のクロスレファレンスがなされ、学習の便宜が図られている。 債権法・相続法改正に対応。なお、編者の遠藤は2005年5月に、川井は2013年5月に逝去され、第4版から、民法判例研究同人会が編者となった。四六判、576頁。 原田昌和ほか『民法①〜⑤ 判例30!(START UPシリーズ)』有斐閣(①総則:2017年12月、②物権:☆2023年4月・第2版、③債権総論:2017年11月、④債権各論:2017年11月、⑤親族・相続:2017年12月)……はじめての判例学習のためのシリーズ。2色刷。B5判、124頁・132頁・140頁・136頁・126頁。 河上正二ほか編著『新・判例ハンドブック』日本評論社(民法総則:2015年5月、物権法:2015年4月、債権法I:2018年3月、債権法II:2018年4月、親族・相続:2014年3月)……民法総則は消費者契約も含めた158件、物権法は担保物権法を含む134件、債権法I(債権総論)は181件、債権法II(債権各論)は238件、親族・相続は184件の判例を収録。債権法I・IIはいずれも平成29年改正民法に対応。四六判、192頁・160頁・216頁・288頁・216頁。 内田貴ほか『民法判例集』有斐閣(総則・物権:2014年4月・第2版、☆担保物権・債権総論:2023年9月・第4版、債権各論:2020年4月・第4版、親族・相続:2014年4月)……内田民法と同じ体系でまとめられている。取り上げられている判例の数が多く、判旨の引用も長い。解説は判例百選よりも短いが、端的に書かれている。『総則・物権』は、判例205件(総則131件、物権74件)を、『親族・相続』は、判例167件(親族84件、相続83件)を収録。A5判、416頁・444頁・458頁・396頁。 松本恒雄・潮見佳男編『判例プラクティス民法I・II・III』信山社(☆I 総則・物権 2022年5月・第2版、☆II 債権 2023年9月・第2版、III 親族・相続 2020年12月・第2版)……収録判例数は順に393、407、195件と多数。B5版1ページに事案・争点・判旨・解説と多くの事項を盛り込みすぎの感がある。ひとりの執筆者が同じ分野の複数の判例をまとめて解説しているので、判例相互の関連を理解しやすい。B5判、442頁・438頁・214頁。 奥田昌道・安永正昭・池田真朗編『判例講義民法I・II』悠々社(I 総則・物権:2014年11月・第2版、II 債権:2014年11月・第2版)……学生向けの参考書として定評のある判例集。判例百選に比べて平易なので、初学者向きである。ただし、本のサイズは、判例百選より大きく重い。I 総則・物権(第2版)は、新判例24件を取り込み、総則77件、物権106件の合計183判例を、II 債権(第2版)は、新判例18件を取り込み、合計194件をそれぞれ1~3頁で解説。A5変型判、277頁・278頁。 佐久間毅・松岡久和編『判例講義民法I 総則・物権』池田真朗・片山直也・北居功編『判例講義民法II 債権』勁草書房(I 総則・物権:☆2024年5月予定・第3版、II 債権:2023年2月・新訂第3版)……上記『判例講義民法』を勁草書房が引き継ぎ全面改訂。ひとりの執筆者が同じ分野の複数の判例をまとめて解説。B5判、288頁・304頁。 佐藤貴則・林道晴編著『Catch the CASE 民法』商事法務(2013年7月)……司法研修所民事弁護教官や法科大学院で実務家教員の経験をもつ弁護士が、民法の主要判例15のケースを素材に、判例の事案や当事者の主張について解説。執筆者(原田史緒・植松祐二・姫野博昭・木内雅也)。A5判、244頁。 水野謙・古積健三郎・石田剛『〈判旨〉から読み解く民法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2017年5月)……法学教室(391 号~ 414 号)の連載「逆引き民法☆24の判旨」に新たに6つの判例を加え、単行本化したもの。全30講を収録。債権法改正等にも対応。A5判、536頁。 新美育文ほか編著『民法(財産法)基本判例』有斐閣(2018年8月)……昭和45年以降(昭和45 年1 月~平成29 年12 月)の最高裁判例のうち、民法(財産法)に関する重要判例を391件収録。収録判例は、学習上の重要度に応じて「基本判例」と「参考判例」に分類して掲載されている。編者(新美育文・長坂純・難波譲治・川地宏行・武川幸嗣・青木則幸)。全6編。A5判、410頁。 髙橋眞『判例分析による民法解釈入門』成文堂(2018年6月)……全11章。A5判、258頁。 髙橋眞『民事判例の観察と分析』成文堂(2019年4月)……A5判、330頁。 能見善久・加藤新太郎編『論点体系 判例民法 第1巻~第11巻〔全11巻〕』第一法規(2018年12月-2019年8月・第3版)……判例の状況を逐条形式で解説した判例コンメンタール。条ごとに法律上の問題点(論点)を体系化し、論点ごとに判例の到達点を明示。また、必要に応じて学説との関連も解説。第3版において、改正民法(債権法・相続法)完全対応。なお、「債権総論」が2分冊となり、全11巻となった。A5判、第1巻〔総則〕:592頁、第2巻〔物権〕:536頁、第3巻〔担保物権〕:388頁、第4巻〔債権総論Ⅰ〕:496頁、第5巻〔債権総論Ⅱ〕:416頁、第6巻〔契約Ⅰ〕:496頁、第7巻〔契約Ⅱ〕:548頁、第8巻〔不法行為Ⅰ〕:552頁、第9巻〔不法行為Ⅱ〕:694頁、第10巻〔親族〕:716頁、第11巻〔相続〕:674頁。 〔ケースブック〕 磯村保・大橋正春・川島清嘉・松本恒雄編著『民法(法科大学院ケースブック)』日本評論社(2004年10月)……全30章。B5判、640頁。 【演習書】 千葉恵美子・潮見佳男・片山直也編『Law Practice 民法Ⅰ・Ⅱ』、棚村政行・水野紀子・潮見佳男編『同・Ⅲ』商事法務(Ⅰ 総則・物権編、Ⅱ 債権編:☆いずれも2022年10月・第5版、Ⅲ 親族・相続編 ☆2022年7月・第2版)……法学部の3・4年生から法科大学院生等を対象とした自学自習用の演習書。『Ⅰ』及び『Ⅱ』については、債権法改正に対応。『Ⅲ』は第2版において、平成30年相続法改正、令和3年民法・不動産登記法改正に対応。A5判、432頁・424頁・408頁。 民法総合教材研究会編『民法総合・事例演習』有斐閣(☆2023年10月・第3版)……京大系の民法教授陣による事例問題集。通称「京大本」。ほとんどの問題に解説・解答はなく、設問・チェックポイント、参考文献が羅列されているだけであるので、自習には使いづらい。学生同士でゼミを組んで学習するにしても、問題がどれも高度かつ難解であり、司法試験合格レベルをゆうに超えていることから、消化不良に陥らないように十分に注意しなければならない。第3版から、松岡久和・潮見佳男・山本敬三に京大の民法教授陣を加えた、民法総合教材研究会が編者となった。A5判、176ページ。 ☆佐久間毅・窪田充見・沖野眞已編著『民法演習ノートⅠ——総則・物権21問』『同Ⅱ——債権21問』弘文堂(2021年刊行予定、2022年刊行予定)…… 古積健三郎『実戦演習民法——予備試験問題を素材にして』弘文堂(2021年10月)A5判、288頁。……平成23年から令和2年(令和元年度は著者が考査委員の為なし)までの予備試験の過去問を解説している。基礎編、応用編、発展編と分けており初学者であっても基礎編を読めば概ね学習が可能である。また、中上級者であっても応用編においては学べる点も多々あろう。発展編は学者としての威厳を示すためか、学術的な記述が多く、司法試験対策、予備試験対策としては一読すれば十分である。また、参考答案は実際の試験において書くことが可能な範囲で抑えられている(2000~2500字)ため、答案の練習としても最適な1冊である。なお、平成25年の問題については、「率直にいえば、今回の問題には個人的にはかなり疑問がある。」とし、参考答案はない。予備校の答案と学者の答案を見比べ、答案の質を上げることが出来るのではなかろうか。著者の予備校嫌いが如実に出ている記述も一読すると面白い。 沖野眞已・窪田充見・佐久間毅編著『民法演習サブノート210問』弘文堂(2020年12月・第2版)……下掲「演習ノートシリーズ」の姉妹書。1冊で民法全体をカバーし、210の具体的な事例で民法の基本中の基本を学ぶための演習書。1項目2頁。1頁目(表)に簡単な設例と質問、そして、参考判例を、2頁目(裏)に解説。基本的に1項目1論点となっている。改正民法対応。第2版では、相続法改正に対応し、新判例や議論の展開を踏まえて全体をブラッシュアップした。A5判、438頁。 平野裕之『新・考える民法I-IV』慶應義塾大学出版会(I 民法総則:☆2023年4月・第2版、II 物権・担保物権:2019年4月、III 債権総論:2020年4月〔☆2024年6月・第2版改訂予定〕、IV 債権各論:2020年10月)……司法試験で上位合格する論文力を養うことを目的とした演習書。上位合格を目指すための演習書だけあって問題の難易度はかなり高く、本試験以上と言っても過言ではない。解説は改正民法に対応している。答案構成サンプルあり。民法総則は14問、物権・担保物権は15問、債権総論は12問、債権各論は16問収録。正誤情報あり。A5判、288頁・352頁・240頁・352頁。 平野裕之『コア・ゼミナール 民法(ライブラリ 民法コア・ゼミナール)I-IV』新世社(I 民法総則:2019年4月、II 物権法・担保物権法:2019年10月、III 債権法1:2020年5月、IV 債権法2:2020年6月)……財産法完結。同著者による『コア・テキスト 民法』シリーズの姉妹書。「事例問題の千本ノック」ともいうべき演習書。民法総則は173、物権法・担保物権法は233、債権法1(債権総論・契約総論)は225、債権法2(契約各論・事務管理・不当利得・不法行為)は222のCASE(設問)を収録。改正民法対応。A5判、184頁・248頁・256頁・256頁。 ☆千葉恵美子・川上良・高原知明『紛争類型から学ぶ応用民法I 総則・物権』『同II 債権総論・契約』日本評論社(2023年4月)…全4巻シリーズ予定。A5判、336頁。 ☆石田剛・野々上敬介・溝渕将章・吉永一行『民法チェックノート①総則』有斐閣(2023年12月)……B5判、160頁。(評価待ち) (平成29年債権法改正未対応) 松久三四彦・藤原正則・池田清治・曽野裕夫『事例で学ぶ民法演習』成文堂(2014年4月)……北大の民法教授陣によって執筆された演習書。通称「北大本」。財産法全体をカバー。問題形式は旧試に近く、民法の論点を満遍なくおさえるスタイルとなっている。解説は平易かつ丁寧で、判例・通説を踏まえ、あてはめもしっかりなされている。民法の基本的な力を蓄える問題集としては、これが最適であろう。A5判、332頁。 池田清治『基本事例で考える民法演習1・2(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2013年3月、2014年11月)……『事例で学ぶ民法演習』の著者の一人による問題集。同書よりも難易度が高いため、本書に取り組むならば、同書の次ということになろう。自説を強く押し出している箇所もあるので、その点には留意が必要である。解説は規範定立→あてはめ→結論という法的三段論法に忠実であり、民法の事例問題の解き方を学ぶには非常に有益な問題集となっている。A5判、192頁・200頁。 佐久間毅・曽野裕夫・田高寛貴・久保野恵美子『事例から民法を考える(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2014年4月)……法学教室の連載を単行本化した問題集。家族法までカバーしている。新司法試験を意識した長文の事例問題であり、旧司法試験の問題形式に近い『事例で学ぶ民法演習』とは好対照をなす。全体的に難易度が高く、高度で些末な部分を問う設問が多い(特に佐久間担当箇所)ため、実践的でないという声もある。A5判、438頁。 赤松秀岳『ロースクール演習 民法』法学書院(2015年1月)……全38問。A5判、376頁。 赤松秀岳『基本演習民法』法学書院(2017年4月)……全31題。解答例あり。A5判、288頁。 窪田充見・佐久間毅・沖野眞已編著『民法演習ノートIII―家族法21問(演習ノートシリーズ)』弘文堂(2013年12月)……執筆者(磯谷文明・ 浦野由紀子・小池泰・西希代子)。A5判、492頁。 伊藤進『旧司法試験 論文本試験過去問 民法(LIVEシリーズ)』辰已法律研究所(2004年1月)……旧司法試験の過去問集。元旧司法試験委員の伊藤進教授の辰已での解説講義を書籍化。解説、教授監修答案(or再現答案)からなる。全26問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。論点の解説をすることではなく、問題分析の思考過程を示すことに眼目をおいてあるため、明確な結論を示していないこともある。平成15(2003)年担保法改正まで対応。 山野目章夫・野澤正充編著、滝沢昌彦・水野謙・松尾弘・田髙寛貴著『ケースではじめる民法』弘文堂(2011年3月・第2版)…… 入門書の次に読む2冊目のテキスト又はテキスト代わりの入門演習書。全30講。A5判、380頁。 山野目章夫・横山美夏・山下純司『ひとりで学ぶ民法』有斐閣(2012年4月・第2版)……段階的な3つのステップの問題群で構成。Stage1(カドリーユ:分野ごとの基本的な問題):全30問、Stage2(シュジェ:社会生活上出くわす具体的主題を取り上げた事例問題):全16問、Stage3(エトワール:分野横断的な長文の問題):全4問を扱う 。A5判、316頁。 田山輝明『事例演習 民法』法学書院(2012年2月)……全6編。財産法のみ。A5判、464頁。 出口尚明監修『設題解説 民法(三)』法曹会(2015年11月)……初学者が理解しておくべき民法上の一般的、基本的な問題を設題として取り上げ、具体的な事案に即して、判例、通説の立場から解説。全20章。新書判、288頁。 三和一博・橋本恭宏編『演習ノート 民法総則・物権法』法学書院(2007年10月・第5版)…A5判、232頁。 石川信・藤村和夫編『演習ノート 債権総論・各論』法学書院(2012年3月・第5版)…A5判、240頁。 小野幸二編『演習ノート親族法・相続法』法学書院(2009年3月・第4版)…A5判、288頁。 山田卓生・野村豊弘・円谷峻・鎌田薫・新美育文・岡孝・池田真朗『分析と展開民法I 総則・物権』、『同II 債権』弘文堂(2004年6月・第3版、2005年8月・第5版)……A5判、376頁・368頁。 川﨑直人『司法試験論文過去問演習民法 実務家の事案分析と答案作成法』法学書院(2018年10月)……サンプル問題から平成29(2017)年までの問題を収録。なお、改正民法には対応していない。序章(民法の事例問題分析法)+全13章。A5判、400頁。 (古典) 安永正昭・道垣内弘人『民法解釈ゼミナール2 物権』有斐閣(1995年11月)……A5判、176頁。 道垣内弘人・大村敦志『民法解釈ゼミナール5 親族・相続』有斐閣(1999年12月)……旧司法試験の問題のような短めの事例問題が並ぶ。理論的に高度な内容ではあるが、やや内容が古くなっている。A5判、218頁。 遠藤浩・川井健編『ワークブック民法(有斐閣双書)』有斐閣(1995年8月・第3版)……四六判、400頁。 池田真朗・浦川道太郎・瀬川信久・安永正昭『基礎演習民法(財産法)(基礎演習シリーズ)』有斐閣(1993年3月)……四六判、370頁。 下森定・半田正夫編『民法1・2(司法試験シリーズ)』日本評論社(いずれも、1994年3月・第3版)……民法1は、総則・物権・担保物権・親族・相続を、民法2は、債権総論・債権各論・不法行為を扱う。B5判、頁・頁。 加藤雅信『民法ゼミナール』有斐閣(1997年12月)……A5判、338頁。 平野裕之『法曹への民法ゼミナールI [総則・物権]』法学書院(2003年12月)……受験新報の誌上答練を書籍化したもの。A5判、220頁。 平野裕之『事例から考える民法 [債権法]』法学書院(2012年2月)……旧著『法曹への民法ゼミナールII [債権]』(2003年12月)の改題・改訂版。A5判、325頁。 平野裕之『設例演習式 考える民法I-IV』辰已法律研究所(I 総則 1999年12月、II 物権法・担保物権法 2001年6月・補訂版、III 債権総論 1997年1月、IV 債権各論 1998年1月)……答案構成例あり。絶版。 → このページのトップ:民法(全般)に戻る。 → リンク:民法(総則)、民法(物権)、民法(債権総論)、民法(債権各論) 、民法(家族)
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【基本書:債権各論】〔メジャー①〕 〔その他①〕 【基本書:契約法】〔メジャー②〕 〔その他②〕 【基本書:法定債権】<不当利得法> <不法行為法> 【その他参考書】 【入門書・概説書】〔債権各論〕 〔契約法〕 〔法定債権〕 【基本書:債権各論】 〔メジャー①〕 潮見佳男『基本講義債権各論I・II(ライブラリ法学基本講義)』新世社(I 契約法・事務管理・不当利得 ☆2022年2月・第4版〕、II 不法行為法 ☆2021年11月・第4版)…… 通称『潮見イエロー』または『潮見黄色本』。分量が手ごろなので、受験生の間でのシェアは圧倒的。もっとも本書の情報量はそれほど多くはないため、中田・契約法や窪田・不法行為といった本格的な基本書で適宜補完することが望ましい。民法改正に対応しているが、立案担当者と異なる見解を取っているため、今後の実務判例の主流と離れた解釈になる可能性があることに注意が必要。適宜一問一答で補足する必要があるだろう。なお、筆者は2022年に逝去されたため、今後改訂される見込みは薄い。「受験新報」2019年12月号特集「合格者が使った基本書」債権各論1位。全25・15章。2色刷。A5判、432頁・280頁。 〔その他①〕 藤岡康宏・磯村保・浦川道太郎・松本恒雄『民法IV 債権各論(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(☆2023年3月・第5版)……第4版において、平成29(2017)年の民法(債権法)改正に対応。全6章。四六判、548頁。 滝沢昌彦・武川幸嗣・花本広志・執行秀幸・岡林伸幸『新ハイブリッド民法4 債権各論』法律文化社(2018年5月)……『ハイブリッド民法』の2017年民法(債権法)改正対応版。序(債権各論を学ぶにあたって)+全7章。A5判、350頁。 山野目章夫『民法概論4 債権各論』有斐閣(2020年3月)……民法財産編全体を概説するシリーズの第二弾。本巻では契約法序説から不法行為までを扱う。平成29(2017)年民法(債権関係)改正に対応。全17章。A5判、540頁。 ☆原田剛『債権各論講義』成文堂(2021年10月)……債権各論の1冊本だが情報量は意外と多い。民法立法史的な記述があること、小フォントのコラム(用語解説・深める・立法小史)が充実していることなどが特徴。事項索引・判例索引あり。全10章。A5判、496頁。 (平成29年債権法改正未対応) 山﨑敏彦『債権法各論講義 要件事実論的アプローチ』成文堂(2013年4月)……著者は『ケースブック要件事実・事実認定』(有斐閣)の編者の一人で、元司法試験考査委員。判例集と要件事実本の要素を内容に取り入れた債権各論の教科書。また、コアカリキュラムにも対応しており、巻末にて本書での対応関係を明記している。A5判、644頁。 笠井修・片山直也『債権各論I——契約・事務管理・不当利得(弘文堂NOMIKAシリーズ4-1)』弘文堂(2008年12月)……無難な出来という評価。通説にはその旨を明記し、有力説は論者名を挙げて解説。判例は比較的長めに引用されており、理解に資する図表もそこそこあるが、要件事実には配慮されていない。NOMIKAの債権各論は潮見イエローと同じ分冊であるため(Iが契約・事務管理・不当利得、IIが不法行為)、潮見イエローが肌に合わない場合の乗り換え先にしやすい(ただし、民法改正に対応していないことには留意する必要がある)。なお、便宜上、「債権各論」のカテゴリーに記載されているが、本書には「不法行為」が含まれていないことに注意。A5判、464頁。 本田純一『債権各論(新・論点講義シリーズ 8)』弘文堂(2010年6月)……全23講。2色刷。B5判、298頁。 織田博子・後藤巻則・執行秀幸・山﨑敏彦『新・民法学4 債権各論』成文堂(2006年5月)……A5判、420頁。 水辺芳郎『債権各論』三省堂(2006年4月・第2版)……コンパクト。文章に難ありという声も。A5判、468頁。 清水元『プログレッシブ民法〔債権各論〕』成文堂(Ⅰ:2012年3月、Ⅱ:2015年2月)…著者は2014年12月に逝去。A5判、314頁・388頁。 (古典) 松坂佐一『民法提要 債権各論』有斐閣(1993年7月・第5版、OD版:2001年7月)……我妻門下。かつての定番書。A5判、394頁。 広中俊雄『債権各論講義』有斐閣(1994年3月・第6版、2刷(1995年11月)にて487頁に項目[196の2]新設あり。)……幾代通、鈴木禄禰とともに「東北大民法三羽烏」と呼ばれた碩学による名著。法社会学的な記述や民法起草過程の解説、判例の引用などが特徴的。A5判、556頁。 水本浩・遠藤浩編『債権各論(青林教科書シリーズ)』青林書院(1993年2月・改訂版)……A5判、348頁。 田山輝明『口述契約・事務管理・不当利得(口述法律学シリーズ)』成文堂(1997年・第2版)……『契約法』(民法講義案Ⅴ)に続いて書かれた口述シリーズの一冊。なお、便宜上「債権各論」の欄に掲載しているが、「不法行為」が含まれていないことに留意されたい。A5判、606頁。 【基本書:契約法】 〔メジャー②〕 中田裕康『契約法』有斐閣(2021年10月・新版)……信頼の体系書。「契約法のおもしろさ」を伝える1冊。執筆期間20年。今般の民法改正によって契約法が一新されたわけではないとの認識から、改正民法を反映してはいるものの、改正民法の解説を直接の目的とするものではなく、改正前民法の解説も併記されている(初版はしがき)。債権総論同様、比較法・歴史的記述も充実している。新版では初版刊行後の文献や判例などを反映。反面、改正前民法の解説はオミットされたので初版も保管しておきたいところ。詳細すぎて通読には向かないが、論点を網羅しバランスの取れた立場で客観的に叙述されている。国家試験・資格試験志望者が辞書的に使うには最善の選択肢。本書の読みどころは、第1部 契約法総論。序章(民法改正と契約法)+全2部、全18章。A5判、656頁。 〔その他②〕 野澤正充『契約法 セカンドステージ債権法I(法セミLAW CLASS シリーズ)』日本評論社(☆2024年3月・第4版)……法学セミナーの連載をまとめたもの。判例・通説中心で引用文献も厳選。重要判例を本文に織り込む。自説僅少。第3版において、新民法(債権法改正)に完全対応。全2部、全17章。A5判、360頁。 平野裕之『債権各論1 契約法』日本評論社(2018年8月)……平成29(2017)年改正に対応。全5編、全15章。A5判、528頁。 平野裕之『コア・テキスト 民法Ⅴ 契約法』新世社(2018年3月・第2版)……学修につき「コア」となる重要論点の解説に重きを置いたテキスト。A5判、424頁。 山本豊・笠井修・北居功『民法5 契約(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2018年4月)……平成29(2017)年民法改正に対応。契約総論の記述が充実しているのが特徴的。全14章。四六判、428頁。 後藤巻則『契約法講義』弘文堂(2017年11月・第4版)……学部およびロースクールの授業用の教科書。設問も付いている。第4版において、債権法改正に対応。正誤表あり。序章(民法典と契約法)+全6章。A5判、480頁。 藤村和夫『新民法基本講義 契約法』信山社(2018年3月)……序論+全2部、全18章。A5変型判、344頁。 潮見佳男『新契約各論I・II(法律学の森)』信山社(☆I:2021年3月、☆II:2021年4月)……同著者による下記『契約各論I——総論・財産権移転型契約・信用供与型契約(法律学の森)』の実質的改訂版。債権法改正に全面対応。新債権総論のコンセプトを引き継いでおり、学生向けの教科書ではなく研究者・実務家向けの本格的体系書となっている。契約不適合責任につきレメディ・アプローチを採用していること、理論面のみならず要件事実もきちんと明記していること、終身定期金契約の解説を省略していること、などが特徴。なお、契約総論については『新債権総論I』に掲載されている。A5変型判、Ⅰ:548頁、Ⅱ:532頁。 ☆曽野裕夫・松井和彦・丸山絵美子『民法IV 契約(LEGAL QUEST)』有斐閣(2021年12月)……A5判、446頁。 近江幸治『民法講義V 契約法』成文堂(☆2022年2月)……A5判、384頁。 (平成29年債権法改正未対応) 山本敬三『民法講義IV-1 契約』有斐閣(2005年11月)……契約法の各論点について通説・有力説・判例がレジュメ調に網羅され、各説ごとの要件事実ブロック・ダイアグラムも載っていることが特徴。情報量が多く、辞書向き。全14章。A5判、852頁。 潮見佳男『契約各論I——総論・財産権移転型契約・信用供与型契約(法律学の森)』信山社(2002年1月)……理論の洗練度はかなりのもの。ただし、体系書&潮見語。なお、契約総論は『債権総論I(法律学の森)』にて論じられている。A5変型判、456頁。 平野裕之『民法総合5 契約法』信山社(2007年2月)……判例集も合わせているため、読むのに苦労する。A5変型判、776頁。 半田吉信『契約法講義』信山社(2005年4月・第2版)……最新の学説や消費者契約などにも目配りが利いている。比較法(とりわけ2001年ドイツ債務法現代化法)に詳しい。A5変型判、536頁。 佐藤孝幸『実務 契約法講義(実務法律講義)』民事法研究会(2012年8月・第4版)……全12章。A5判、578頁。 吉田邦彦『契約各論講義録(契約法Ⅱ)』信山社(2016年10月)……A5変型判、290頁。 (古典) 来栖三郎『契約法(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1974年9月、OD版:2007年8月)……古典的名著。契約総論はない。A5判、758頁。 三宅正男『契約法 総論・各論(上)(下)(現代法律学全集)』青林書院(1978年2月,1983年3月,1988年10月)……雇用はない。A5判、344頁、548頁、788頁。 石田穣『民法V (契約法)(現代法律学講座)』青林書院(1982年3月)……A5判、472頁。 水本浩『契約法』有斐閣(1995年3月)……著者は1999年に逝去。我妻弟子による体系書。来栖契約法のように大著になりがちな契約法理論を我妻説を中心にまとめあげたもの。名著。A5判、440頁。 平井宜雄『債権各論I上 契約総論(法律学講座双書)』弘文堂(2008年8月)……著者は2013年に逝去。はしがきからして熱い、平井ファン待望の一冊。著者の強い実学志向から、現代的な契約を巡る法現象を直視し、事業者間契約を記述の中心に据えている。そのため、受験生の類はすっかりおいてけぼりとなってしまった。ただし、実務家にとっては非常に示唆的で有用な一冊であるため、合格後に思う存分楽しむとよい。全3章。A5判、276頁。 【基本書:法定債権】 野澤正充『事務管理・不当利得・不法行為 セカンドステージ債権法III(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(☆2024年2月・第4版)……法学セミナーの連載をまとめたもの。判例・通説中心。自説僅少。第3版において、新民法(債権法改正)に完全対応。全3章、全26節。A5判、360頁。 橋本佳幸・大久保邦彦・小池泰『民法V 事務管理・不当利得・不法行為(LEGAL QUEST)』有斐閣(2020年3月・第2版)……質量ともに司法試験対策として十分な内容を持つ。その反面、高度な議論を圧縮したような個所もあるので、全くの初学者は、例えば潮見イエローなどの後に読めば、より効果が上がるだろう。第2版において、旧版執筆時(2011年11月)以降の重要判例や法改正の内容が織り込みまれた。全2編、全9章。A5判、390頁。 平野裕之『債権各論2 事務管理・不当利得・不法行為』日本評論社(2019年12月)……平成29(2017)年改正に完全対応。全2編、全7章。A5判、528頁。 平野裕之『コア・テキスト 民法Ⅵ 事務管理・不当利得・不法行為』新世社(2018年5月・第2版)……学修につき「コア」となる重要論点の解説に重きを置いたテキスト。A5判、352頁。 ☆大塚直・前田陽一・佐久間毅『民法6 事務管理・不当利得・不法行為(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2023年8月)……事務管理・不当利得は佐久間教授が単独執筆。不法行為は大塚教授と前田教授が分担執筆。四六判、404頁。 (平成29年債権法改正未対応) 加藤雅信『新民法大系V 事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2005年4月・第2版)……最高裁をも動かした加藤理論。いま事務管理・不当利得を真面目に学習しようとするならば第一に読まれるべき本。論旨が明快。特に不当利得についてはこの本の右に出るものは無いといっていい。不法行為二分説。A5判、488頁。 吉田邦彦『不法行為等講義録』信山社(2008年12月)……平井弟子による不法行為等(法定債権)の講義録。独習に耐えるレジュメといった趣。A5変型判、304頁。 石崎泰雄・渡辺達徳編『新民法講義5 事務管理・不当利得・不法行為法』成文堂(2011年3月)……若手研究者(執筆者の多くが准教授)による法定債権の教科書。比較的新しい情報を平易に解説している。設例と図解が豊富であるのが本書の特徴。A5判、318頁。 円谷峻『不法行為法・事務管理・不当利得——判例による法形成』成文堂(2016年11月・第3版)……著者は2017年2月に逝去。判例の引用が詳しいことと比較法的記述(とりわけドイツ法)が充実していることが特徴。A5判、390頁。 (古典) 我妻栄『事務管理・不当利得・不法行為(新法学全集)』日本評論社(1937年3月、復刻版:1988年11月)……古いが民法講義では未完となった不法行為法パートが読みどころ。A5判、216頁。 四宮和夫『事務管理・不当利得・不法行為、上・中・下(現代法律学全集)』青林書院(1981年11月、1983年10月、1985年8月。なお、のち中・下巻(不法行為パート)は合本されている。)……分厚い体系書。不法行為:行為不法論・危険範囲説(危険関連説)・全規範統合説など、不当利得:類型論(運動法型不当利得、財貨帰属法型不当利得、負担帰属法型不当利得、三者不当利得)。絶版。A5判、272頁、610頁。 加藤雅信『クリスタライズド民法 事務管理・不当利得』三省堂(1999年9月)……薄いが箱庭理論の粋が詰まった名著。新民法大系と記述が重複する箇所もあり既に絶版なため、無理して手に入れる必要はないが、個々の論点が新民法のものよりかなり絞られているため内容はかなり濃い。古書店などで見かけた時は是非買うべきである。A5判、275頁。 澤井裕『テキストブック事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2001年4月・第3版、OD版:2010年5月)……不法行為部部分が詳しく、違法性と故意・過失を区別する二元説・相当因果関係説を採る。不当利得類型論(給付利得、三者間給付利得、侵害利得、その他の不当利得、転用物訴権)。各節の冒頭に設例が、本論の後に解説が付いている。参考書に最適。入手方法がオンデマンド版(定価 9,400円・税別)となっているのが残念。A5判、400頁。 <不当利得法> (古典) 藤原正則『不当利得法(法律学の森)』信山社(2002年2月、2023年5月現在Amazon限定でOD版対応。)……不当利得類型論(給付利得、侵害利得、支出利得、対第三者関係)。ドイツ法の解釈論に依拠するところが大きいが難解。A5判、456頁。 <不法行為法> 窪田充見『不法行為法——民法を学ぶ』有斐閣(2018年4月・第2版)……設例方式。内容は高度であり、読みこなすにはそれなりに実力が必要だが、基礎理論の深い考察は白眉の出来である。行間を省略せず、丁寧に叙述していることが特徴。辞書的に用いる者が多い。第2版において、平成29年の民法改正や、初版(2007年4月)刊行後の重要判例が織り込まれた。なお、筆者は2024年に逝去されたため、今後改訂される見込みは薄い。全6部。A5判、562頁。 前田陽一『債権各論II 不法行為法(弘文堂NOMIKAシリーズ4-2)』弘文堂(2017年9月・第3版)……薄いが必要十分な情報量。学説の提唱者名を明記していること(ただし文献の引用はない)、かゆいところをきちんと言語化していることが特徴。第3版において、近年出された最高裁判決(サッカーボール事件・JR東海事件等)への解説にあわせ、全面的に学説・判例等が見直された。改正債権法に対応(改正された債権法の新旧両法への対応あり)。全5章。A5判、256頁。 吉村良一『不法行為法』有斐閣(☆2022年8月・第6版)……関西系(違法性/故意・過失の二元論)。比較的穏当な立場から書かれた読みやすい基本書。判例法理と学説の状況をバランスよく概観。ただし、判例は結論のみの引用が多い。第5版では、東日本大震災や不法行為法の将来的な改正を踏まえた記述が追加された。全5章+終章。A5判、372頁。 藤村和夫『新民法基本講義 不法行為法』信山社(2020年11月)……著者は、交通事故賠償についての研究者として著名であるが、オーソドックスな体系書を目指したため(はしがき)、詳しい自説は別著(モノグラフィ)の参照を求めている。それでも、損害論(損害項目や損害賠償算定の調整)などに特徴的な記述がみられる。改正債権法には対応しているが学説を両論併記する程度の内容にとどまっている。全5章。A5変型判、568頁。 (平成29年債権法改正未対応) 潮見佳男『不法行為法(法律学の森)』信山社(1999年5月・初版)、『不法行為法I(法律学の森)』『同II』信山社(2009年9月、2011年2月・いずれも第2版、I(不法行為制度の意義・目的から一般不法行為責任の要件論)、II(特殊不法行為責任論)。III(不法行為責任の効果論)は未完。)……判例・学説を詳細に整理し、かつ自らの体系も明らかにした本邦最高峰の体系書(とくに第2版)。受験生が読む本ではない。A5変型判、560頁・498頁・472頁。 平野裕之『民法総合6 不法行為法』信山社(2013年7月・第3版)……『契約法(民法総合5)』と同じく、判例集込みで分厚い本。A5変型判、576頁。 塩崎勤・羽成守・小賀野晶一 編著『実務 不法行為法講義(実務法律講義)』民事法研究会(2011年12月・第2版)……全2部、全38章。A5判、680頁。 藤岡康宏『民法講義V 不法行為法』信山社(2013年3月)……不法行為法の大家による体系書。不法行為法を「権利の保護」と「あらたな利益の法実現」を目的とする「権利の法実現の法」として捉える。中心的な読者としては法学部の学生を対象としている(はしがき)とされるが、筆者独自の「法的判断の三層構造論」が随所に出てくるなど手強い体系書である。また、情報の網羅性に欠けている(特に効果論)。A5変型判、568頁。 (古典) 加藤一郎『不法行為(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1974年10月・増補版、OD版:2001年10月)……いわゆる伝統的通説。古典的名著。A5判、323頁。 前田達明『民法VI-2 不法行為法(現代法律学講座)』青林書院(1980年5月)……違法性一元説。A5判、451頁。 森島昭夫『不法行為法講義(法学教室全書)』有斐閣(1987年3月、OD版:2013年11月)……定評ある不法行為の体系書。通常の体系書とは異なり、特殊不法行為から叙述されている。図書館での調査用に。A5判、512頁。 幾代通・徳本伸一『不法行為法』有斐閣(1993年1月(1997年5月の5刷にて補訂)、OD版:2007年1月)……幾代=徳本の愛称で知られる名著。A5判、384頁。 平井宜雄『債権各論II 不法行為(法律学講座双書)』弘文堂(1992年4月(1994年12月の3刷にて部分補正)、OD版:2019年3月)…… I上のはしがきによれば、現在改訂中とのことであったが、著者逝去(2013年11月)により叶わなくなった。独自の体系(過失一元説・保護範囲説)により『債権総論』と同じく民法学界に多大な影響を与えた(『損害賠償法の理論』を併読すると平井説に対する理解が進みやすい)。平井説がすべて受け入れられたわけではないが、学者、実務家いずれの側においても、その影響を受けていない者はいない。名著であるが、抽象的かつ難解なので、初学者はまず平井説を踏まえた新しい世代の基本書を読むべきだろう。現在絶版。オンデマンド版については、初版9刷:2006年9月30日の内容。全4章。A5判、272頁。 【その他参考書】 (平成29年債権法改正未対応) 小賀野晶一『判例から学ぶ不法行為法』成文堂(2010年1月)……B5判、224頁。 良永和隆『不法行為法 基本判例解説』日本加除出版(2010年8月)……総収録判例数60件。A5判、248頁。 大村敦志『不法行為判例に学ぶ——社会と法の接点』有斐閣(2011年11月)……A5判、370頁。 【入門書・概説書】 〔債権各論〕 池田真朗『スタートライン債権法』日本評論社(2020年3月・第7版)……債権法全般を通覧する入門書。債権総論も内容に含まれている。債権各論→債権総論の順序で債権法全体を平易に解説。入門書としては最良の選択肢の一つ。第1課に「ガイダンス」が置かれている。第7版で民法改正に完全対応。全24課。A5判、416頁。 池田真朗『新標準講義 民法債権各論』慶應義塾大学出版会(2019年4月・第2版)……コンパクト。学部生、未修者向け。第7章に学習ガイダンスが設けられている。第2版において、民法(債権法)改正に対応。全7章。A5判、264頁。 後藤巻則・滝沢昌彦・片山直也編『【プロセス講義】 民法Ⅴ 債権2(プロセスシリーズ)』信山社(2016年9月)……2017年6月の民法(債権法)改正に完全に対応できていないが、債権法改正時のポイントがコンパクトにまとめて付されている。全21章。A5変型判、336頁。 青野博之・谷本圭子・久保宏之・下村正明『新プリメール民法4 債権各論(αブックス)』法律文化社(2020年3月・第2版)……初版(2018年4月)において、2017年の民法改正に対応。第2版において、2020年4月の民法(債権関係)改正法の施行に合わせ、新法についてより詳しく解説。序章(債権各論を学ぶための基礎知識)+全12章。A5判、260頁。 田井義信監修、手嶋豊編『ユーリカ民法4 債権各論』法律文化社(2018年6月)……「債権各論」のうち、「契約総論」については、同シリーズの『ユーリカ民法3 債権総論・契約総論』に記載〔債権総論を参照〕されており、本書には記載されていないため、注意が必要である。全2部、序論(契約)+全8章。A5判、322頁。 小賀野晶一・亀井隆太『基本講義 契約・事務管理・不当利得・不法行為』成文堂(2021年3月)……A5判、266頁。 根本尚徳・林誠司・若林三奈『事務管理・不当利得・不法行為(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社(2021年6月)……電子書籍版あり。A5判、280頁(本文264頁)。 ☆山本敬三監修、中原太郎、根本尚徳、山本周平『民法6 事務管理・不当利得・不法行為(有斐閣ストゥディア)』 有斐閣(2022年9月)……A5判、282頁。 〔契約法〕 松井和彦・都筑満雄・岡本裕樹『契約法(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社(2018年7月)……民法(債権法)改正に対応。全17章。A5判、264頁。 ☆窪田充見『契約法入門─を兼ねた民法案内』弘文堂(2022年3月)……契約法概説を兼ねた民法(財産法)入門書。講談社ブルーバックスのように面白く読めるものを書きたいというコンセプト(はしがき)ということもあり、ユーモアを含んでおり初学者にも読みやすい。とりわけ債権法改正マターにつき高度な内容をわかりやすく解説している。全22章。四六判、272頁。 ☆山本敬三監修、大澤彩、三枝健治、田中洋『民法5 契約(有斐閣ストゥディア)』有斐閣(2022年9月)……A5判、324頁。 (平成29年債権法改正未対応) 我妻榮・川井健著、水本浩補訂『民法案内10 契約総論』勁草書房(2009年6月)……四六判、212頁。 我妻榮・川井健著、水本浩補訂『民法案内11 契約各論 上』勁草書房(2010年2月)……贈与、売買、交換、消費貸借及び使用貸借を収録。四六判、192頁。なお、現在、『民法案内12 契約各論 下』については、未刊となっている。 笠井修・鹿野菜穂子・滝沢昌彦・野澤正充『はじめての契約法』有斐閣 (2006年3月・第2版)……序章+全6章。A5判、244頁。 半田正夫『やさしい契約法』法学書院(2004年12月・第2版)……A5判、200頁。 〔法定債権〕 (平成29年債権法改正未対応) 川井健著、良永和隆補筆『民法案内13 事務管理・不当利得・不法行為』勁草書房(2014年8月)……序章(法定債権)+全3章。四六判、228頁。 田上富信『やさしい事務管理・不当利得・不法行為法』法学書院(2015年4月・第3版補訂版)……全3章。A5判、276頁。 → このページのトップ:民法(債権各論)に戻る。 → リンク:民法(全般)、民法(総則)、民法(物権)、民法(債権総論) 、民法(家族)
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民法(明治29年4月27日法律第89号) 最終改正:平成28年6月7日法律第71号 ※最終改正までの未施行法令あり。 民法施行法(明治31年6月21日法律第11号) 最終改正:平成23年6月24日法律第74号 民法は範囲が広いこともあり、1人の著者が全範囲をカバーする基本書を完成させるには、相当の年月を要する。 それゆえ、例えば「総則と契約だけ執筆済。その他の分野は執筆中」というような中途段階にとどまる基本書も少なくない。 このページでは原則として、民法のほぼ全範囲の執筆を完成させた書籍が紹介される。 【基本書(平成16年民法現代語化以降)】 〔メジャー〕 内田貴『民法I-IV』東京大学出版会(I 総則・物権総論 2008年4月・第4版,II 債権各論 2011年2月・第3版,III 債権総論・担保物権 2005年9月・第3版,IV 親族・相続 2004年3月・補訂版)……判例を簡明にまとめたケースに基づいて、高度な内容を分かりやすく説明するというケース・メソッド重視のスタイルが採られており、全体的に読みやすい構成となっている。もっとも、条文の要件・効果に関する記述は曖昧な箇所が多く、要件の説明がコラムに投げられていることすらあるため、本書では条文を起点として解釈する姿勢が身に付きづらいという弊害が指摘されている。また、自説を殊更に前面に押し出す傾向が見受けられ、現在の通説をあたかも克服された説のように説明したり、未だ重視されている判例について先例性は失われたと述べるなど、判例・通説を軽視するきらいがあるという難点も指摘されており、これらの点から本書は初学者には不向きであると言えよう。ことに、Iの総則・物権はかなりこの傾向が強く、なまじ読みやすい分、初学者がこれを最初に読むと後々大変なことになりかねない。もっとも、本書の記述そのものは読みやすくはあるので、上記の点に留意したうえで中級者以上が読む分には有用であろう。IVは、増刷の際に民法現代語化に対応したが、内容は古くなりつつある。 山田卓生ほか『民法I-V(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(I 総則 2007年9月・第3版補訂版,II 物権 2010年3月・第3版補訂版,III 債権総論 2012年4月・第3版補訂版,IV 債権各論 2009年6月・第3版補訂版,V 親族・相続 2012年9月・第4版)……定評のあるSシリーズ。入門はもとより、択一用のまとめテキストにも好適(ただし全ての肢を網羅している訳ではない)。ロースクール生の間でも人気がある。物権と債権総論がとくに好評だが、基本的にはずれはない。ただし、親族・相続に関しては、伊藤執筆部分で異説が展開される場面が多く、使いにくいともいわれる。 近江幸治『民法講義I-VII』成文堂(I 民法総則 2012年4月・第6版補訂版,II 物権法 2006年5月・第3版,III 担保物権法 2007年4月・第2版補訂版,IV 債権総論 2009年3月・第3版補訂版,V 契約法 2006年10月・第3版,VI 事務管理・不当利得・不法行為 2007年12月・第2版,VII 親族法・相続法 ☆2015年6月・第2版)……早大教授。内田以前のシェアNo.1。二色刷り・図表多用など、見た目は予備校本風であるが、内容はきちんとしていて、学者が推薦することも多い。学説紹介が豊富で、図を用いて説明しているので、わかりやすい。ところどころ異説を採用している部分(たとえば、物権行為の独自性を肯定する立場からの売買契約の記述など)には注意されたい。著者の専門分野であるIIIの担保物権法には特に定評あり。 川井健『民法概論I-V』有斐閣(I 民法総則 2008年3月・第4版,II 物権 2005年10月・第2版,III 債権総論 2009年4月・第2版補訂版,IV 債権各論 2010年12月・補訂版,☆V 親族・相続 2015年12月・補訂版[良永和隆補訂])……我妻最後の後継者。全範囲完結。図表の類を用いないオーソドックスな基本書。伝統的通説の体系にのっとって、地引網のように、ひっかかる論点を次々に拾っていく。とりあげられる判例・学説は網羅的で、民法概論の名にふさわしい。自説の主張は控えめで、各説を比較的公平に紹介しているため、記述はやや平板だが、分かりやすい。しかし、全体的に内容が古く、債権法改正に関わる最新のトピックには対応していない。また、概説書に徹するためか、論点ごとのつながりが悪くなっていることも少なくなく、全体として、論点をぶつ切りにして提供されている印象を受ける。物権、特に担保物権の記述は、主要判例の判示事項と判決要旨を並べただけといってもよく、その値段に見合うものとはいえないと評価する人もいる。見方を変えれば、判例の数・網羅性については、類書の中で群を抜いていて、択一式試験の学習には圧倒的な強さを有する。こうした基本書としての「無色透明さ」があるゆえに、幅広いニーズに応えることができるのも事実である。特に、単一著者で民法全分野を揃えたいが、内田は性に合わないという人は本書を試してみるとよい。家族法は、択一式試験対策に好適。 〔その他〕 我妻栄ほか『民法1-3』勁草書房(1 総則・物権法 2008年3月・第3版,2 債権法 2009年2月・第3版,3 親族法・相続法 2013年1月・第3版)……通称「ダットサン」。伝統的通説。小型だが民法と関連法の概要・歴史、条文の趣旨・要件・効果を網羅している。小型ゆえに初学者には向かないが、直前期の総まとめに定番の一冊。川井によって最新の判例が補われているが、扱う学説が古く、司法試験対策としては心もとないところもある。しかし、文章が非常に読みやすく、安定感のある記述で、今なお人気がある。我妻・有泉のみが執筆していた頃のダットサンは、今と大分文章が違っている。『民法案内1-11,13』(契約各論上(使用貸借まで)+事務管理・不当利得・不法行為が刊行済み)は、講義口調の格調高い入門書。我妻民法講義とは異なる見解を採用していたりするので、学術的な価値もある。ちなみに、13巻は、川井執筆で絶筆(弟子の良永が補筆)。民法案内も、判例や学説に古いところがあるため、これだけでは心もとないが、副読本としてそばに置いておくとよいかもしれない。最近の基本書で説明を省いている部分なども詳細な説明があるため、知識を補うには十分である。 大村敦志『基本民法I-III』有斐閣(I 総則・物権総論 2007年3月・第3版,II 債権各論 2005年4月・第2版[2010年・第6刷補訂],III 債権総論・担保物権 2005年5月・第2版)……学界を支配した鳩山・我妻・星野の系譜を継ぐ民法学のトップランナーによる基本書。財産法完結。2色刷り。内田民法と同じ体系をとり、内田民法の7割程度の分量でコンパクトに財産法をまとめている。初学者向けながら、高度な内容にも踏み込んでいる部分もあり、上級者であっても得るものが多い。むしろ、非常に広い行間が初学者にはやや難しいかもしれない。その場合には、他の基本書を読んだうえで、二冊目の基本書として読むのがよいであろう。著者自身も、本書だけでなく、他の本との併読を進めている。副読本として『もうひとつの基本民法I・II』有斐閣(I 2005年2月,II 2007年10月)。一般向けの著書も多数。『民法のみかた-『基本民法』サブノート』有斐閣(2010年6月)は民法全分野(家族法含む)にわたる必要最低限の情報を凝縮したレジュメで、学者が書いた予備校まとめ本といった趣き。 大村敦志『新基本民法2・3・4・5・6・7』(2 物権法編 ―財産の帰属と変動の法:2015年12月、☆3 担保編 ―物的担保・人的担保の法:2016年9月、☆4 債権編 ―契約債権の法:2016年9月、☆5 契約編 ―各種契約の法:2016年7月、6 不法行為編 ―法定債権の法:2015年11月、7 家族編 ―女性と子どもの法:2014年12月)……基本民法シリーズをリニューアル。全8巻を刊行予定。3、4、5巻は債権法改正法案に対応。A5判、200頁・242頁・234頁・243頁・224頁・226頁。 佐久間毅ほか『民法I・II・V・VI(LEGAL QUEST)』有斐閣(I 総則 2010年11月,II 物権 2010年5月,V 事務管理・不当利得・不法行為 2011年11月,VI 親族・相続 2015年3月・第3版)......共著本。VIの出来が良く定番の書となっている一方で、I・II・Vは記述のムラが激しく、やっつけ仕事ぶりが出てしまっている。1の執筆者に佐久間を含むが、佐久間『民法の基礎』にはない利点といえば練習問題付であることくらいか。III・Ⅳは未刊。 加藤雅信『新民法大系I-V』有斐閣(I 民法総則 2005年4月・第2版,II 物権法 2005年4月・第2版,III 債権総論 2005年9月,IV 契約法 2007年4月,V 事務管理・不法利得・不法行為 2005年4月・第2版)……財産法完結、ただし担保物権法はない。歴史的視座、比較法的視座、法社会学・法人類学的視座から独自の民法理論を構築している。民法の関連分野の記載も充実。学生を主要な読者層としているため基本的事項・通説(我妻説)・判例の紹介が平易な文章できちんとされているほか、要件事実論にも配慮してある。また、少数学説も網羅しており、事項索引・判例索引の他、条文索引や詳細な参考文献一覧、更には新旧の民法・破産法の条文対照表まで付く至れり尽くせりの本である。が、分量の関係で自説の説明以外はかなり圧縮されている上、論点落ちもある。なお、研究書としての性格も持たせているため、部分的には極めて高度である。 平野裕之『コア・テキスト民法 I-VI』新世社(2011年6月)……財産法完結。未修者から上級者までを対象とした中級テキスト。著者による『基礎コース民法』と『民法総合シリーズ』の間のレベルとの位置づけ。判例通説をわかりやすく解説しているだけでなく、このレベルのテキストとしては珍しく、学説の最新動向や著者の自説もきちんと明示しており、独習にも使える内容になっている。図表・網掛け・下線に加え、レジュメ的な文体は好みが分かれる。理論面の解説に重きを置いているので、択一式試験に必要な細かい知識は、択一六法等で適宜補充する必要がある。 平野裕之『基礎コース民法I・II』新世社(I 総則・物権法 2005年4月・第3版,II 債権法 2005年4月・第2版)……2冊で財産法全分野を概説。著書曰く現代のダットサンを目指したとのこと。A5判、504頁・520頁。 田山輝明『民法要義I-VI』成文堂(I 民法総則:2010年7月・第4版,II 物権法:2012年5月,III 担保物権法:2013年10月・第3版,IV 債権総論:2011年4月・第3版,V 契約法:2006年5月,VI 事務管理・不当利得・不法行為:2016年5月・第3版)……財産法完結。手堅い記述ながらも、図表やケースメソッドを多用しており、理解しやすい。 千葉恵美子ほか『民法2・3・4・7(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2 物権 2008年2月・第2版補訂版,3 担保物権 2005年12月・第2版,4 債権総論 2004年4月,7 親族・相続 2014年10月・第4版)……7の親族相続はスタンダードな家族法の教科書として広く使われている。なお、有斐閣アルマBasicには【法】山野目章夫『民法 総則・物権』(2012年3月・第5版)と、松川正毅『民法 親族・相続』(2014年12月・第4版)がある。 小野秀誠ほか『ハイブリッド民法1-5』法律文化社(1 民法総則 2014年4月・第2版,2 物権・担保物権法 2007年3月,3 債権総論 2006年11月,4 債権各論 2007年4月,5 家族法 2012年4月・第2版)……新トピックも網羅。薄いので未修向けか。5の家族法(A5判、396頁)は定評あり。 奥田昌道ほか『法学講義民法1-6』悠々社(1 総則 2007年・第2版,2 物権 2005年10月,3 担保物権 2006年7月,4 債権総論 2006年,5 契約 2008年,6 事務管理・不当利得・不法行為 2006年)……財産法完結。 新井誠・岡伸浩編著『民法講義録』日本評論社(2015年3月)……一冊で民法全体を通覧。全1035ページ。A5判、1072頁。 【入門書・概説書】 潮見佳男『入門民法(全)』有斐閣(2007年12月,2011年12月・補訂)……1冊で民法全分野をカバー。パンデクテン体系に沿う。重要な論点の記述は厚いが、その他の論点は大胆に省略されており、司法試験向きの実践的なまとめ本に仕上がっている。薄い本であるので、網羅性が高いとはいえない。また、タイトルには入門とあるが、十分な説明はなく、入門用途には適さない(著者自身も、民法全体を学んだ者のための再入門の本であると述べている)。近時、ロースクール生の間でまとめ本として絶大な支持を得ている。なお、著者は、債権法に関する当代一流の学者であるが、物権法については専門外のため本を書けるほどの知識がないと明言しており、本書の執筆も出版社に頼まれて行ったものと述べている。したがって、物権法に関しては、他の書籍の記述をなぞるだけになっており、穏当な記述とも平凡な記述ともいえ、賛否が分かれる。通称、潮見赤本。A5判、568頁。 川井健『民法入門』有斐閣(2012年7月・第7版)……民法全分野カバー。パンデクテン体系に沿う。タイトルには「入門」とあるが、国家試験受験生が直前期にさっと通読するための本である。判例の準則もしばしば簡略化しているので、読み手の学力がないと使いこなせない可能性もある。また、誤植や脱字の類がしばしば見られる。潮見赤本の出版以降はシェアが後退している。また、著者が逝去したため、今後改訂されることはないであろう。A5判、582頁。姉妹本に、『はじめて学ぶ民法―所有、契約、不法行為、家族』(有斐閣、2011年12月、A5判、338頁。)。 米倉明『プレップ民法』弘文堂(2009年3月・第4版増補版)……典型的な売買契約をモデルに、想定される法律問題を時系列順に解説する。含蓄のある良書だが、初学者がその深みを理解することは困難である。四六判、258頁。 道垣内弘人『リーガルベイシス 民法入門』日本経済新聞出版社(2014年1月)……財産法分野の入門書。旧著『ゼミナール民法入門』を改題したもの。教育効果や実際の機能を意識して、パンデクテン体系を崩した説明となっている。民法(債権関係)の改正に関する中間試案を平易に解説したコラム(53本)を挿入しており、債権法改正の議論を学べる唯一の1冊本となっている。A5判、596頁。 淡路剛久『入門からの民法--財産法』有斐閣(2011年12月)……放送大学の教材テキストを加筆修正。典型化された紛争(Case)から民法規範にアプローチする方法を取り入れたとのこと。A5判、532頁。 近江幸治『民法講義0 ゼロからの民法入門』成文堂(2012年2月)……第1部 ゼロからの民法入門、第2部 教養民法(民法概論)。第2部は、「民法講義」から文章、イラストを補訂・再製作して使用。A5判、304頁。 松尾弘『民法の体系 市民法の基礎』慶應義塾大学出版会(2010年7月・第5版、☆2016年10月改訂予定)……民法全体を権利主体論、権利客体論、権利変動論、権利効果論へと体系化。一冊本としては相当分厚い。A5判、792頁。 角紀代恵『コンパクト 民法I 民法総則・物権法総論(コンパクト 法学ライブラリ 3)』新世社(2011年12月)……総則・物権法総論のみ。2色刷。四六判、280頁。他に『はじめての担保物権法』有斐閣(2013年5月、A5判、226頁)、『基本講義 債権総論(ライブラリ 法学基本講義 5)』新世社(2008年2月、A5判、240頁)がある。 幾代通・遠藤浩編、奥田昌道補訂『民法入門(有斐閣双書)』有斐閣(2012年6月・第6版)……旧版以後の民法の改正(公益法人制度改革,離婚後の子との面会交流,親権制限など)のほか,利息制限法等の関連法改正に対応。四六判、326頁。 我妻榮著、遠藤浩・川井健補訂『民法案内1 私法の道しるべ』勁草書房(2013年2月・第2版)……民法の勉強にとりつくまでの道しるべであり、その心構えや最小限知っておくべきことが述べられている。四六判、276頁。 我妻榮・良永和隆著、遠藤浩補訂『民法』勁草書房(2013年2月・第9版)……最も適用の多い事柄に即して、関連する制度と横断的な知識を集約し、わかりやすく民法の全体像を鳥瞰する。B6判、292頁。 円谷峻『民法』放送大学教育振興会(2013年3月)……放送大学の教材。A5判、292頁。 裁判所職員総合研修所監修『<新訂>民法概説』司法協会(2013年8月・四訂版)……財産法のみ。裁判所職員総合研修所が初めて民法を学ぼうとする人のために,民法の考え方の基本を解説したもの。A5判、346頁(本文316頁)。 成田博 『民法学習の基礎』有斐閣(2014年4月・第3版)……四六判、254頁。 池田真朗『民法への招待』税務経理協会(2014年6月・第4版)……四六判、288頁。 【基本書(平成16年民法現代語化以前)】 我妻栄『民法講義』岩波書店……民法で通説といえば、おおむね我妻説を指す。不法行為法以降は民法講義としては未出版だが、ほぼ全範囲にわたって著書がある(『事務管理・不当利得・不法行為』日本評論社(1989年2月)、『親族法(法律学全集)』有斐閣(1982年3月))。大部であるので、マイナーな議論まで網羅的に取り扱っていることのほか、きわめて抽象的な定義付けから体系的に論じていく点に、近時の本には見られない特徴がある。古いとはいっても、今なお実務への影響力は高く、余力のある学生は、総則・物権・債権総論などを今から読んでおきたい。なお、文中で登場する「通説」は鳩山説などを意味していて、著者がそれに対して異論を述べた説が現在の通説となっていることがある。本書で紹介される学説には、すでに絶滅したものも少なくない。したがって、すでに民法を一通りマスターし、学説史にも明るい学生でなければ、混乱をきたす可能性もある。我妻であるから、あるいは実務であるからといって無批判、無条件に鵜呑みにすることなく、本書で展開されているのは基本的に戦前ないし戦後初期の理論であるということを念頭に置いて熟読することが望まれる。 鈴木禄彌『○○法講義』創文社……全範囲完結(家族法含む)。物権法のみ現代語化にも対応。学習の便宜のため、あえて体系を崩しており、早くからケースメソッドを採用するなど、時代を先取りした画期的な教科書であった。抽象的な定義や要件・効果の羅列を避け,制度のあり方や実際の機能に専ら着目するという内容になっている。情報量も絞られており,端的に答えを知りたいときの辞書的な用法には向かないが,常に具体例をもとにして条文の趣旨が極めて明快に語られているので、通読によって大きな効果を発揮するだろう。抽象的な定義が書かれている教科書と併読するのが良いと思われる。主張・立証責任の配分について充分な記述があり,本書に取り組むことで要件事実に関する理解も深まるであろう。時折挿入される図表がすこぶるよくできている点もよい。なお,判例に言及する際、判決文を引用しないため、判例集や判例付六法を準備して読むべきである。シリーズの中でも,特に『物権法講義』は名著といわれ、星野英一も自著のはしがきで「最高の水準」と絶賛している。 星野英一『民法概論1-4』良書普及会……契約法まで。ただし、版元の良書普及会が出版終了。家族法は、放送大学のテキストあり。 松坂佐一『民法提要1-5』有斐閣……かつての定番書。財産法完結・家族法あり。我妻説に立っている。30年分の判例・議論を補充する必要がある。 北川善太郎『民法講要1-5』有斐閣……財産法完結・家族法あり。記述は平板ながら、詳しい。契約責任説の主唱者である。自説僅少。判例が豊富に紹介されている。潮見&山本は北川ゼミ出身。 船越隆司『民法総則』『物権法』『担保物権法』『債権総論』尚学社(2001年4月・改訂版,2004年4月・第3版,2004年4月・第3版,1999年4月)……元中央大教授。 遠藤浩ほか『民法(1)-(9)(有斐閣双書)』有斐閣(1 総則 2004年9月・第4版増補補訂3版,2 物権 2003年5月・第4版増補版,3 担保物権 2003年12月・第4版増補版,4 債権総論 2002年12月・第4版増補補訂版,5 契約総論 1996年12月・第4版,6 契約各論 2002年9月・第4版増補補訂版,7 事務管理・不当利得・不法行為 1997年1月・第4版,8 親族 2004年5月・第4版増補補訂版,9 相続 2005年1月・第4版増補補訂版)……かつての司法試験民法のスタンダードテキスト。有力な中堅学者が長老陣になるまで30年間にわたり改訂を重ねてきたため、記述は安定している。判例・通説を基礎に有力説を加え、基本的事項を丁寧に解説する良書である。判例についても文字サイズを落として事案と判旨と評価をコンパクトに解説している。自説を抑えて書いてあるため、平板との声もあるが、よく読みこめば、それぞれの著者の個性が出ており飽きない。しかし、民法現代語化に対応したのは(9)相続のみであり、(5)(7)は1996年の改訂が最後となっている。他は2002年から2004年にかけて改訂されており、担保物権は平成15年改正に対応しているので現在でも使えないわけではないが、使用者はかなり減っている。(9)相続を除き2004年の増刷を最後に絶版となった。 井上英治『財産法概論』中央大学出版部(2001年1月・第三版)……著名な予備校講師による財産法の教科書。法曹同人から出版されていた旧版を改訂し、大学出版部から刊行したもの。伝統的なパンデクテン体系を切り崩し、実際的観点から財産法分野を再構成。簡潔な叙述で、まとめ用として適している。ただし、内容は現代語化以前のもの。A5判、491頁。 【その他参考書】 内田貴・大村敦志編『民法の争点(新・法律学の争点シリーズ 1)』有斐閣(2007年9月)……B5判、368頁。 (注)「債権法改正関係」については、「民法(債権総論)」のページを参照。 【コンメンタール】 我妻榮・有泉亨・清水誠・田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権』日本評論社(☆2016年9月・4版)……定評があった我妻・有泉コンメンタール(分冊)を合冊し、現行法にあわせて補訂したコンメンタール。したがって、我妻説をベースに現行法・判例等を補訂していることから、内容に一貫性がないという評価もある。既に克服された我妻説をそのまま載せている箇所もある(たとえば、契約の無効取消における物の返還につき、法189条以下の果実返還、損害賠償、費用償還の規定が適用されるか否かという論点)。改訂漏れと思われる箇所もある(たとえば、法414条は2003・2004年民事執行法改正(間接強制の適用範囲拡張)に対応していない。)。ただし、短答レベルの知識は網羅している。4版では、消費者法、借地借家法、労働契約法の分野等での重要な法改正に対応(債権法改正法案には未対応だが、将来的に本書としての対応(改訂)は可能(はしがき)とのこと)、判例・裁判例は最判H28.6.27まで収録している。A5判、1496頁。 松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(財産法)』日本評論社(2012年9月)……財産法全分野を1冊にまとめたコンメンタール。コンセプトは「現在の民法に関する法状況をコンパクトに知るために最適化されたコンメンタール」(はしがき)。学説の対立状況にはあえて踏み込まず、判例・通説(多数説)に依拠した叙述を心がけている。判例の引用は基本的に最高裁のものに限定し、学説の引用も判例の考え方を理解するのに必要な限度で行うことを基本としているとされる。しかし、たとえば履行補助者の項においては、我妻有泉コンメが旧来の通説しか述べていないのと異なり、近時の批判説もきちんと掲載しているなど(とはいえ前述の履行補助者の「批判説」は現在では通説になってはいるが)、学習者にとって配慮しているといえる。条文の重要度に応じて解説に濃淡をつけており、たとえば相隣関係の条文について注釈がなかったりする。情報量では我妻有泉コンメ、基本法コンメには及ばないがその内容は現時点で最新のコンメンタールである。判例は最判H23.4.22まで収録。なお本書の内容はTKCのインターネットコンメンタールとしても提供されている。A5判、1160頁。 遠藤浩ほか編『基本法コンメンタール民法』日本評論社(2005年6月-,第5版)……全7冊。スタンダードなコンメンタール。初版から年月を重ねているため執筆者の多くが民法学界の大御所となっている。民法現代語化、一般法人法改正に対応した本シリーズは、新版注釈民法より新しく、細かい裁判例や学説にまで言及しているため実務的な利用価値は高い(第一法規の判例民法シリーズは基本判例の紹介が多く、情報量が少ない)。一方で、学生向けという点ではやや情報が古いことは否めない。なお、我妻コンメでは扱われていない親族・相続の出版年月はそれぞれ2008年2月、2007年9月と比較的新しい。 窪田充見・松川正毅編『新基本法コンメンタール 親族(別冊法学セミナー)』日本評論社(2015年12月)……民法親族編、任意後見契約に関する法律、後見登記等に関する法律の逐条解説。B5判、379頁。 ☆大塚正之『臨床実務家のための家族法コンメンタール 民法親族編(勁草法律実務シリーズ)』勁草書房(2016年1月)……元裁判官による親族法コンメンタール。逐条で本条の趣旨、立法の経緯、実務の運用をそれぞれ解説。相続編の出版予定あり。 松岡久和・中田邦博編『学習コンメンタール 民法2 親族・相続(学習コンメンタールシリーズ)』日本評論社(2009年9月)……主に法学部生、法科大学院生が家族法を理解するために、必要不可欠な判例、学説情報を織り込み、条文ごとにメリハリを付けて解説。なお、家族法分野における近時の法改正(平成23・25年)には未対応であるため、注意が必要である。A5判、440頁。 谷口知平ほか編『新版注釈民法』有斐閣(1988年6月-2015年9月)……全28巻(全29冊)予定であったが、最新版の第9巻・物権(4)改訂版(2015年9月)をもって諸事情により以降刊行取止めとなった。未完となったのは第5巻(138条-174条の2)、第8巻(295条-368条)、第11巻(427条-473条)、第12巻(474条-520条)、第19巻(709条)、第20巻(710条-724条)。研究者、実務家必携の最も信頼できる注釈書だが刊行時期が古いものが多く又大部であり受験生には荷が重い。図書館で参照する程度で十分である。近年旧版注釈民法とともにデジタルデータ化された。また絶版分につきオンデマンド出版で復刊された。 【判例集・ケースブック】 潮見佳男・道垣内弘人ほか編『民法判例百選I・II・III』有斐閣(I 総則・物権 2015年1月・第7版,II 債権 2015年1月・第7版,III 親族・相続 2015年1月)……スタンダードな判例集。第6版では判例の差し替えが多く、Iは42件、IIは36件の判例が差し替えられた。最新版である第7版等は、総則・物権分野100件、債権分野106件、親族・相続分野100件を収載。B5判、208頁・220頁・208頁。 内田貴ほか『民法判例集 総則・物権』『同 担保物権・債権総論』『同 債権各論』『同 親族・相続』有斐閣(2014年4月・第2版,2014年9月・第3版,2008年3月・第3版,2014年4月)……取り上げられている判例の数が多く、判旨の引用も長い。解説は、判例百選よりも短いが端的に書かれている。債権各論は、他の判例集と比べて、収録判例がやや古い。A5判、416頁・408頁・392頁・396頁。 奥田昌道・安永正昭・池田真朗編『判例講義民法I・II』悠々社(I 総則・物権 2014年11月,II 債権 2014年11月・いずれも第2版)……学生向けの参考書として定評のある判例集。判例百選に比べて平易なので、初学者向きである。ただし、本のサイズは、判例百選より大きく重い。 松本恒雄・潮見佳男編『判例プラクティス民法I・II・III』信山社(I 総則・物権 2010年3月,II 債権 2010年6月,III 親族・相続 2010年8月)……収録判例数は順に393、399、197件と多数。B5版1ページに事案・争点・判旨・解説と多くの事項を盛り込みすぎの感がある。ひとりの執筆者が同じ分野の複数の判例をまとめて解説しているので、判例相互の関連を理解しやすい。B5判、424頁・424頁・212頁。 遠藤浩・川井健編『民法基本判例集』勁草書房(2014年12月・第三版 補訂版)……ダットサン民法に対応した判例集。民法全編にわたる427件の重要判例を収録し、コンパクトに解説している。B6判、544頁。 河上正二・中舎寛樹『新・判例ハンドブック 民法総則』日本評論社(2015年5月)……四六判、192頁。 松岡久和・山野目章夫『新・判例ハンドブック 物権法』日本評論社(2015年4月)……四六判、160頁。 二宮周平・潮見佳男編著『新・判例ハンドブック 親族・相続』日本評論社(2014年3月)……四六判1頁で事実、裁判所の見解、解説を収録(全184件)。最判H26.1.14裁時1595.1まで収録している。基本的に初学者向けだが、まとめ本としても有用。四六判、216頁。 能見善久・加藤新太郎編『論点体系 判例民法 第1巻~第10巻〔全10巻〕』第一法規(2013年12月・第2版)……判例の状況を逐条形式で解説した判例コンメンタール。条ごとに法律上の問題点(論点)を体系化し、論点ごとに判例の到達点を明示。また、必要に応じて学説との関連も解説。A5判、第1巻〔総則〕:506頁、第2巻〔物権〕:490頁、第3巻〔担保物権〕:368頁、第4巻〔債権総論〕:752頁、第5巻〔契約Ⅰ〕:432頁、第6巻〔契約Ⅱ〕:444頁、第7巻〔不法行為Ⅰ〕:408頁、第8巻〔不法行為Ⅱ〕:632頁、第9巻〔親族〕:656頁、第10巻〔相続〕:562頁。 佐藤貴則・林道晴編著、原田史緒・植松祐二・姫野博昭・木内雅也著『Catch the CASE 民法』商事法務(2013年7月)……司法研修所民事弁護教官や法科大学院で実務家教員の経験をもつ弁護士が、民法の主要判例15のケースを素材に、判例の事案や当事者の主張について解説。A5判、244頁。 【演習書】 松久三四彦・池田清治・曽野裕夫・藤原正則『事例で学ぶ民法演習』成文堂(2014年4月)……北大の民法教授陣によって執筆された演習書。通称「北大本」。財産法全体をカバー。問題形式は旧試に近く、民法の論点を満遍なくおさえるスタイルとなっている。解説は平易かつ丁寧で、判例・通説を踏まえ、あてはめもしっかりなされている。民法の基本的な力を蓄える問題集としては、これが最適であろう。A5判、332頁。 池田清治『基本事例で考える民法演習1・2(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2013年3月,2014年11月)……『事例で学ぶ民法演習』の著者の一人による問題集。同書よりも難易度が高いため、本書に取り組むならば、同書の次ということになろう。自説を強く押し出している箇所もあるので、その点には留意が必要である。解説は規範定立→あてはめ→結論という法的三段論法に忠実であり、民法の事例問題の解き方を学ぶには非常に有益な問題集となっている。A5判、192頁・200頁。 千葉恵美子・潮見佳男・片山直也編『Law Practice 民法I 総則・物権編・II 債権編』商事法務(2014年3月・いずれも第2版)……A5判、358頁・337頁。(評価待ち。) ☆棚村政行・水野紀子・潮見佳男編『Law Practice 民法III 親族・相続編』商事法務(2015年10月)……A5判、384頁。(評価待ち。) 佐久間毅・曽野裕夫・田高寛貴・久保野恵美子『事例から民法を考える(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2014年4月)……法学教室の連載を単行本化した問題集。家族法までカバーしている。新司法試験を意識した長文の事例問題であり、旧司法試験の問題形式に近い『事例で学ぶ民法演習』とは好対照をなす。全体的に難易度が高く、高度で些末な部分を問う設問が多い(特に佐久間担当箇所)ため、実践的でないという声もある。A5判、438頁。 赤松秀岳『ロースクール演習 民法』法学書院(2015年1月)……A5判、356頁。(評価待ち。) 松岡久和・潮見佳男・山本敬三『民法総合・事例演習』有斐閣(2009年4月・第2版)……京大の民法教授陣による事例問題集。通称「京大本」。ほとんどの問題に解説・解答はなく、設問・チェックポイント、参考文献が羅列されているだけであるので、自習には使いづらい。学生同士でゼミを組んで学習するにしても、問題がどれも高度かつ難解であり、司法試験合格レベルをゆうに超えていることから、消化不良に陥らないように十分に注意しなければならない。B5変型判、256頁。 磯谷文明・窪田充見・佐久間毅ほか『民法演習ノートIII―家族法21問』弘文堂(2013年12月)……A5判、492頁。(評価待ち。) 伊藤進『旧司法試験 論文本試験過去問 民法(LIVEシリーズ)』辰已法律研究所(2004年1月)……旧司法試験の過去問集。元旧司法試験委員の伊藤進教授の辰已での解説講義を書籍化。解説、教授監修答案(or再現答案)からなる。全26問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。論点の解説をすることではなく、問題分析の思考過程を示すことに眼目をおいてあるため明確な結論を示していないこともある。平成15年担保法改正まで対応。 安永正昭・道垣内弘人『民法解釈ゼミナール2 物権』有斐閣(1995年11月)……A5判、176頁。 道垣内弘人・大村敦志『民法解釈ゼミナール5 親族・相続』有斐閣(1999年12月)……旧司法試験の問題のような短めの事例問題が並ぶ。理論的に高度な内容ではあるが、やや内容が古くなっている。A5判、218頁。 山野目章夫・野澤正充編著、滝沢昌彦・水野謙・松尾弘・田髙寛貴著『ケースではじめる民法』弘文堂(2011年3月・第2版)…… A5判、380頁。 山野目章夫・横山美夏・山下純司『ひとりで学ぶ民法』有斐閣(2012年4月・第2版)……A5判、316頁。 出口尚明監修『設題解説 民法(三)』法曹会(2015年11月)……新書判、288頁。
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【基本書】〔メジャー〕 〔その他〕 【その他参考書】〔H29債権法改正関連書〕<改正法成立(平成29(2017)年6月2日)以前> <改正法成立(平成29(2017)年6月2日)以降> <改正法施行(令和2(2020)年4月1日)以降> <雑誌> 【入門書・概説書】 【基本書】 〔メジャー〕 中田裕康『債権総論』岩波書店(2020年10月・第4版)……債権総論基本書の決定版。弁護士経験もある学者による本格的体系書。京大系学説(潮見など)や比較法(類書中もっとも詳しい)にも目配りが利いている。かゆいところに手が届く、丁寧かつ分かりやすい記述は、学生はもとより学者からも評判がよい。判例・通説をしっかり解説したうえで学説の整理を行い、その上で自説を展開するため、押さえるべきポイントが明確になっている。学説の紹介が詳しすぎるきらいがあるが、整理が隅々まで行き届いているため、学説の紹介を読み飛ばして判例・通説の部分だけを読むことも容易である。第4版は、2017年債権法改正が織り込まれ、全面改訂された。「受験新報」2019年12月号特集「合格者が使った基本書」債権総論2位。序章(債権総論とは何か)+全4編、全10章。A5判、776頁。 潮見佳男『プラクティス民法 債権総論(プラクティスシリーズ)』信山社(2020年4月・第5版補訂)……債権総論の基本書としては最高水準の一冊。著者は2022年に死去。内容は下掲『法律学の森』の二分冊を要約した部分も多いが、二分冊と違い、判例・通説+有力説1個程度の説明に留めるなど、教科書としての役割が意識されている。中田『債権総論』との違いとして、ケースが多用されていること(ケースの解答はないものの、ケースを踏まえて原理原則・判例の解説がなされている)、要件事実を意識した構成になっていること、判例の採る論理をナンバリングを用いて丁寧に整理していることなどが挙げられる。もっとも、中田が伝統的通説に近い立場から、引用文献を明示したうえで近時の有力説を整理しているのに対し、本書は引用文献なしで、有力説の立場を前提に説明を進めている部分がある。また、あまり明示的ではないが、言葉の端々に著者の考えが反映されている(「…と考えられている」など)。第5版補訂において、債権法・相続法の改正に対応。なお、筆者は2022年に逝去されたため、今後改訂される見込みは薄い。「受験新報」2019年12月号特集「合格者が使った基本書」債権総論1位。全14章。A5変型判、730頁。 〔その他〕 松井宏興『債権総論(民法講義4)』成文堂(2020年2月・第2版)……担保物権法の基本書が人気を博している著者による債権総論の基本書。設例を通し、判例・通説に沿って、債権総論を平易に解説する。上記の中田や潮見と比べると論点の記述に鋭さはなく、内容も十分に整理されていないなど完成度は見劣りするものの、コンパクトであるという点で存在価値があるといえる。全7章。A5判、344頁。 内田貴『民法3 債権総論・担保物権』東京大学出版会(2020年4月・第4版)……旧司法試験時代の定番書。著者は法務省参与として債権法改正において中心的役割を果たした学者の一人。機能的観点から、債権総論と担保物権をセットにして解説している。第4版において、2020年4月に施行された改正民法に完全対応。全3部、全17章。A5判、720頁。 近江幸治『民法講義IV 債権総論』成文堂(2020年10月・第4版)……内田以前の定番書。A5判、352頁。 潮見佳男『新債権総論Ⅰ・Ⅱ(法律学の森)』信山社(Ⅰ:2017年6月、Ⅱ:2017年7月)……法制審幹事として債権法改正に関わった著者による改正法対応の体系書。Ⅰは第1編・契約と債権関係から第4編・債権の保全まで、Ⅱは第5編・債権の消滅から第7編・多数当事者の債権関係までを収める。「新法をもとに法律問題を処理していくプロフェッショナル(研究者・実務家)のための理論と体系を示した書物」で「「教科書」としての性質を持たせることは意識の片隅にすらない」(はしがき)と明言されており、受験生が通読するための本ではない。内容は質・量ともに圧倒的であり、調べ物用に適する。なお、下掲『旧森』に比べ、いわゆる「潮見語」は減っており、格段に読みやすくなっている。A5変型判、906頁、864頁。 奥田昌道・佐々木茂美『新版 債権総論 上巻・中巻・下巻』判例タイムズ社(上巻:2020年6月、中巻:2021年4月、下巻:2022年3月)……下掲『債権総論』悠々社(1992年7月・増補版)の実質的な改訂新版。今般の改訂は佐々木、執筆補助者の裁判官らが主導して行ったものと推測され、そのため従来の判例実務の延長線上に債権法改正を位置づけるなど、手堅い内容となっている。全3冊、本文1307頁の大作。上巻:序論+全3章(総論・債権の目的・債権の効力)、中巻:全2章(債権の効力・多数当事者の債権関係)、下巻:全2章(債権譲渡と債務引受・債権の消滅)。A5判、368頁・516頁・560頁。 野村豊弘・栗田哲男・池田真朗・永田眞三郎・野澤正充『民法III 債権総論(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(☆2023年4月・第5版)……第4版において、平成29(2017)年の民法改正に対応。なお、永田は2017年に逝去。また、第4版(2018年5月)から、野澤が執筆者として加わった。全8章。四六判、342頁。第5版評価待ち。 平野裕之『債権総論』日本評論社(☆2023年4月・第2版)……平成29年改正に対応。債務不履行の帰責事由について、新しい契約責任説(契約の拘束力説)ではなく、特約のない場合のデフォルト・ルールとしての過失責任主義を採用したものとする説を採る。全11章。A5判、604頁。 野澤正充『債権総論 セカンドステージ債権法II(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(☆2024年4月・第4版)……法学セミナー誌上での連載を書籍化したもの。適度に高度な内容を盛り込みつつも、判例・通説中心でまとめられており使い勝手が良い。引用は重要文献に厳選。重要判例は本文に織り込む。自説僅少。第3版において、新民法(債権法改正)に完全対応。全6章、全27節。A5判、384頁。 ☆山野目章夫『民法概論3 債権総論』有斐閣(2024年4月)……A5判、586頁。 松尾弘・松井和彦・古積健三郎・原田昌和『新ハイブリッド民法3 債権総論』法律文化社(2018年10月)……『ハイブリッド民法』の債権法改正対応版。序+全6章。A5判、350頁。 中舎寛樹『債権法 債権総論・契約』日本評論社(2018年3月)……便宜上、「債権総論」において取り上げているが、書名の『債権法』からも推定できるように、債権各論分野(契約)も含まれている。内容に誤りが散見される点(425頁:債務者自身が権利を行使していないことが債権者代位権の再抗弁事由であるとするが、正しくは債務者自身が権利を行使したことが抗弁事由となる。459頁:詐害行為取消権の確定判決が勝訴であれ敗訴であれその既判力が債務者及びすべての債権者に対して及ぶとあるが、認容確定判決のみ既判力が及ぶのが正しい。)には注意。平成29(2017)年改正に対応。序章+全22章。A5判、552頁。 手嶋豊・藤井徳展・大澤慎太郎『民法III 債権総論(LEGAL QUEST)』有斐閣(2022年3月)……A5判、434頁(本文412頁)。 石田穣『債権総論(民法大系(4))』信山社(2022年11月)……比較法(独・仏・瑞)的記述が充実した体系書。独自説多数で債権法改正にも批判的。債務者の責務としてのObliegenheit、債務不履行の類型論(客観責任的債務不履行・主観責任的債務不履行・結果責任的債務不履行)、損害賠償の範囲における危険性関連説、債権の二重移転(譲渡)不可能説など。A5変型判、1068頁。 ☆片山直也・白石大・荻野奈緒『民法4 債権総論(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2023年4月・第2版)……初版と執筆者を入れ替えており実質的な新著。情報量は多くクオリティも高くまとめ用に適するが、反面初心者向けとは言いがたい。序章+全16章。四六判、452頁。 (平成29年債権法改正未対応) 潮見佳男『債権総論Ⅰ・Ⅱ(法律学の森)』信山社(Ⅰ 債権関係・契約規範・履行障害:2003年8月・第2版、Ⅱ 債権保全・回収・保証・帰属変更:2005年3月・第3版)……「学部における債権総論を対象とした準教科書(学習書)としての役割を切り捨てて理論ベースでの叙述に徹し」(はしがき)、債権者利益(契約利益)中心の体系という観点から債権総論(及び契約法総論)を再構築した理論と実務を架橋する意欲的な体系書。債権法改正の理念を支える理論的支柱といっても過言ではなく、新版注釈民法の潮見執筆部分(10巻1、10巻2、13巻)と併せて債権法改正に関する必読文献の一つである。内容は極めて難解であり、「潮見語」と呼ばれる著者独特の用語法に起因する読みづらさとも相俟って、学生からは「森」ならぬ「樹海」であると皮肉られている。A5判、640頁・A5変型判、770頁。 淡路剛久『債権総論(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2002年12月)……法教連載の単行本化。とはいえ、中身は正統派の体系書。立法経緯、外国法については活字のポイントを落として記載している。奥田ら伝統的通説、平井説の後世代かつ内田・潮見・中田らの前世代という位置づけ。連載・出版時期が国際的な債権法現代化の潮流が起こる直前なので、その意味で過渡期の内容となっている。全6章。A5判、656頁。 平野裕之『債権総論(プラクティスシリーズ)』信山社(2005年2月)……学説が上手く整理されている。序章+全6章。A5変型判、560頁。 内田勝一『債権総論(法律学講義シリーズ)』弘文堂(2000年10月)……損害賠償で自説。図がないのが難。全9章。A5判、376頁。 中田裕康・高橋眞・佐藤岩昭『民法4 債権総論(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2004年4月)……全9章。四六判、336頁。 渡辺達徳・野澤正充『債権総論(弘文堂NOMIKAシリーズ3)』弘文堂(2007年11月)……無難な出来。全7章。A5判、344頁。 本田純一・小野秀誠『債権総論(新・論点講義シリーズ7)』弘文堂(2010年3月)……全27講。2色刷。B5判、252頁。 吉田邦彦『債権総論講義録(契約法I)』信山社(2012年7月)……A5変型判、288頁。 小野秀誠『債権総論(法律学の森)』信山社(2013年9月)……パンデクテン体系に沿った構成で、図式を多用。通説的見解を最新の学説や比較法的見地(とりわけ詳しい)を取り入れて微修正するといった趣きであり、先行する潮見や中田より穏当な学説を採る。学説は代表的な見解の紹介にとどめており、債権法改正についてはあえて触れていない(ただし、その背景にある思想を学ぶことは可能である)。従来の基本書と比較して、一風変わった判例や事案を紹介していると感じる箇所がいくつかあり、著者の視野の広さが伺われる。法律学の森の水準を保ちながらも、受験生にとっても読みやすい。中田の情報量に圧倒された人におすすめ。A5変型判、560頁。 遠藤研一郎『民法3(債権総論)』中央大学出版部(2009年3月)……債権総論に関する基本的事項について、項目を立てて分かりやすく紹介している。本書は中大通信教育部での講義テキストであり、初学者向けの教科書という趣に徹しているため、主に判例・通説に従って記述されている。ただし、一般向けには販売していないため、欲しい人は中大生協で直接購入するか、Amazonなどで中古品を手に入れるしかない。 (古典) 於保不二雄『債権総論(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1972年4月・新版、OD版:2006年4月)……A5判、435頁。 奥田昌道『債権総論』悠々社(1992年7月・増補版)……元京大教授・最高裁判事。伝統的通説。各種文献で引用される回数が圧倒的に多く、我妻民法講義以降の債権総論の代表的体系書。判例・学説解説共に徹底的。『債権総論(増補版)』(1992年・悠々社)の前身は、『債権総論(1)上』(1982年)、『債権総論(1)下』(1987年・共に筑摩書房)であり、平成4年(1992年)に合本するに際し、若干の加筆・修正を施して、新たに悠々社から刊行されたものである。A5判、632頁。 前田達明『口述 債権総論(口述法律学シリーズ)』成文堂(1993年4月・第3版)……著者の京大での講義を録音したテープをもとに書かれている。執筆段階でかなり手が加えられているため、臨場感はそれほどでもないが、平易な口語を用いた説明は非常に丁寧で分かりやすい。判例その他の具体例を豊富に挙げるが、いわゆるケースメソッドとは異なる、オーソドックスなスタイルである。歴史的沿革の説明が詳しい(一般的な概説書の水準を遥かに超えている)点に特徴がある。伝統的な債権法理論を箇条書きではなく、説明するお手本。著者の体系がそれほど前面に出ていないため、読み手の学習段階を問わないとっつきやすさがある。A5判、590頁。 平井宜雄『債権総論(法律学講座双書)』弘文堂(1994年1月・第2版(1996年11月の4刷にて部分補正)、OD版:2019年3月)……通説に対するアンチテーゼとして一時代を画した。立法者意思や制度趣旨から演繹的かつ丁寧に解釈していくスタイルに定評がある。現在は平井説の批判をふまえた新しい世代の学説が主流となりつつあり、その意味では本書はその役割を終えたというべきだろう。試験対策としては有用とはいいがたいが、相当因果関係説批判は、理解のために一読の価値はあるかもしれない。判例・通説を十分に理解した上で取り組むべき本。現在絶版。オンデマンド版については、第2版8刷:2007年5月30日の内容。なお、著者は、2013年11月に逝去された。全6章。A5判、386頁。 林良平(安永正昭補訂)・石田喜久夫・高木多喜男著『債権総論(現代法律学全集)』青林書院(1996年8月・第3版)……A5判、590頁。 遠藤浩・水本浩編『債権総論(青林教科書シリーズ)』青林書院(1986年3月)……A5判、248頁。 円谷峻『債権総論——判例を通じて学ぶ』成文堂(2010年9月・第2版)……著者は2017年に逝去。「学生、とくに未修者が債権総論を最初から最後まで学習することが、大陸法の民法を有するわが国では依然として重要であり、体系的思考性の涵養のために必要」という観点から作成された債権総論の「教材」。債権総論の体系を尊重しつつ、なるべく判例の動向、判例法による法形成を中心にして論述(以上、はしがきより。)。学説の検討については最低限に留めているとされるが、脚注も含めれば相当な情報量を含んでいる。比較法的記述(ドイツ債務法現代化法に対応)も充実している。A5判、448頁。 清水元『プログレッシブ民法[債権総論]』成文堂(2010年4月)……著者は2014年に逝去。全10章。A5判、360頁。 【その他参考書】 (平成29年債権法改正未対応) 田山輝明『特別講義 債権総論』法学書院(2009年5月)……第1講で、債権法全体の基礎〈債権法の構成と体系、債権の意義、債権の目的、価格算定不能の目的物〉を掲げ、第2講~第19講で、債権総論の重要テーマについて解説したテキスト。全19講。A5判、224頁。 〔H29債権法改正関連書〕 <改正法成立(平成29(2017)年6月2日)以前> 大村敦志『民法改正を考える(岩波新書)』岩波書店(2011年10月)……東京大学における「民法改正——留学生のため民法案内(2)」の講義ノートをまとめたもの。債権法改正にとどまらず、家族法改正等を含めて、「民法を改正することはどういうことか」を論じた著作。新書判、210頁。 内田貴『民法改正——契約のルールが百年ぶりに変わる』ちくま新書(2011年10月)……債権法改正論者が、債権法改正を正当化づける立法事実(要するに債権法改正の必要性)を解説した入門書。新書判、240頁。 内田貴『債権法の新時代——「債権法改正の基本方針」の概要』商事法務(2009年9月)……債権法改正の最重要中心人物による「債権法改正の基本方針」入門書。四六判、249頁。 民法(債権法)改正検討委員会編『債権法改正の基本方針(別冊NBL No.126)』商事法務(2009年4月)……債権法改正の基本方針本文。後掲の『詳解』を買うなら本書は不要。B5判、438頁。 民法(債権法)改正検討委員会編『シンポジウム「債権法改正の基本方針」(別冊NBL No.127)』商事法務(2009年8月)……債権法改正の基本方針についてのシンポジウムの講義録とレジュメ集。委員会の委員が基本方針について解説したもの。B5判、184頁。 民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針I-V』商事法務(Ⅰ 序論・総則:2009年9月、Ⅱ 契約および債権一般(1):2009年10月、Ⅲ 契約および債権一般(2):2009年11月、Ⅳ 各種の契約(1):2010年1月、Ⅴ 各種の契約(2)2010年6月)……債権法改正の基本方針の全文+注釈。委員会の委員による公式注釈書。現行法の問題点を網羅しており、さながら債権法についての最高水準の体系書である。A5判、429頁・532頁・476頁・484頁・517頁。 民事法研究会編集部編『民法(債権関係)の改正に関する検討事項-法制審議会民法(債権関係)部会資料〈詳細版〉』民事法研究会(2011年1月)……法制審議会民法(債権関係)部会の各会議で提出された「民法(債権関係)の改正に関する検討事項 詳細版(1)~(15)」を1冊にまとめた資料集。本書の内容は法務省HPで無料公開されているが膨大な量なので重宝する。B5判、831頁。 「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理(NBL953号別冊付録)」商事法務(2011年5月)……法制審による債権法改正関連資料。法務省HPでダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明』商事法務(2011年6月)……法制審による債権法改正関連資料。上記「論点整理」に簡潔な解説を加えたもの。したがって、本書を購入すれば上記「論点整理」は不要。法務省HPでダウンロード可能。 松尾弘『民法改正を読む 改正論から学ぶ新民法』慶應義塾大学出版会(2012年9月)……A5判、256頁。 「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(NBL997号)」商事法務(2013年3月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足 説明』商事法務(2013年5月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでダウンロード可能。A5判、536頁。 内田貴『民法改正のいま——中間試案ガイド』商事法務(2013年6月)……上記中間試案を平易に解説した著書。 森田宏樹『債権法改正を深める——民法の基礎理論の深化のために』有斐閣(2013年8月)……法学教室の連載(2010年4月号から2012年3月号まで)に、連載終了後に公表された「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」との対応を付記してまとめたもの。A5判、454頁。 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案(NBL1034号)」商事法務(2014年9月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでもダウンロード可能。 「民法(債権関係)の改正に関する要綱(NBL1045号)」商事法務(2015年3月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでもダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)改正法案新旧対照条文』商事法務(2015年5月)……国会(第189回)に提出された民法(債権関係)改正法案の新旧対照表。法務省HPでもダウンロード可能。法務省版対照表と比較した本書の意義は、未改正条文も掲載されているところ。A5判、204頁。 加賀山茂編著『民法(債権関係)改正法案の〔現・新〕条文対照表<条文番号整理案付>』信山社(2015年8月)……国会(第189回)に提出された民法(債権関係)改正法案の新旧対照表。法務省版対照表には「どの条文がどのように変化したのか」について不備があるとして、「単なる条文番号にもとづく比較ではなく、内容面から現行法の条文と改正法案の条文を対象し、現行法から何がどのように変わるのか、より分かりやすくすべく、大幅に編集を加えたもの」(はしがき)。A5変型判、334頁。 信山社編集部編『民法改正法案(新法シリーズ3)』信山社(2015年8月)……①民法の一部を改正する法律案要綱、②民法の一部を改正する法律案(付:理由)、③民法改正案新旧対照条文、④民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を収録。A5変型判、568頁。 伊藤滋夫編『債権法改正法案と要件事実(法科大学院要件事実教育研究所報第15号)』日本評論社(2017年3月)……A5判、160頁。 <改正法成立(平成29(2017)年6月2日)以降> 山野目章夫『新しい債権法を読みとく』商事法務(2017年6月)……「民法(債権関係)改正のビューポイント(1)-(16)」(NBL連載、1038~1053号)を改正法に対応させて加筆修正したもの。ユニークな設例で改正法を解説しており読者を飽きさせない。A5判、300頁。 債権法研究会編『詳説 改正債権法』きんざい(2017年7月)……改正民法につき金融実務に影響を与えると思われる事項を中心に解説。執筆者は金融機関の法務担当者や金融法務に関わる弁護士。したがって、立場に偏りがあることに注意。金融法務事情の連載(債権法研究会報告、2008-2055号)を単行本化したもの。A5判、544頁。 日本弁護士連合会編『実務解説 改正債権法』弘文堂(2020年3月・第2版)……改正債権法に係る逐条解説書。第2版は、初版刊行後の文献や新しい論点を盛り込み、施行後を見据え、よりグレードアップした改訂版。A5判、600頁。 大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編『実務解説 民法改正─新たな債権法下での指針と対応』民事法研究会(2017年7月)……128の設問に対する一問一答形式で解説。A5判、416頁。 東京弁護士会法制委員会民事部会編集『【債権法改正】事例にみる 契約ルールの改正ポイント』新日本法規出版(2017年7月)……A5判、392頁。 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編『新旧対照でわかる 改正債権法の逐条解説』新日本法規出版(2017年8月)……B5判、420頁。 田中嗣久・大島一悟『民法改正がわかった(わかったシリーズ)』法学書院(2019年4月・補訂版)……補訂版では、2020年施行の「債権法」大改正、2019・2020年施行の「相続法(自筆証書遺言・配偶者居住権・遺留分制度等)」改正、2022年施行の「成年年齢関係」改正が盛り込まれた。A5判、403頁。 小賀野晶一・松嶋隆弘編著『民法(債権法)改正の概要と要件事実』三協法規出版(2017年8月)……A5判、496頁。 潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概要』きんざい(2017年8月)……平成29年5月26日に可決成立した改正債権法について、『民法(債権関係)改正法案の概要』を増補改訂した私的解説書。まさに必読書。A5判、376頁。 山本敬三『民法の基礎から学ぶ 民法改正』岩波書店(2017年9月)……公益財団法人海の星学寮公開講演会における著者(法制審幹事)の一般向け講演原稿をもとに加筆してブックレット化したもの。したがって、民法入門を兼ねており、民法の基礎や歴史についても言及している。反面、改正内容については網羅的ではなく、重要事項の解説に重点が置かれているが、ケースや図表を用いており親切。ただし、条文順でなく、改正目的順に解説しているので、パンデクテン体系に慣れている向きには読み辛いかも。A5判、184頁。 大村敦志・道垣内弘人編『解説 民法(債権法)改正のポイント』有斐閣(2017年10月)……少数精鋭の豪華な執筆陣(ほぼ研究者)による債権法改正解説書。現行制度の概要から改正に至るこれまでの動きを解説。改正に至らなかった項目(Unbuilt)もきちんと解説している。各節の冒頭に「改正のポイント」をチェックリスト付きの箇条書きでまとめているのは親切。判型(46判)もコンパクトで持ち運びに便利。著者(五十音順):石川博康・大澤彩・大村敦志・加毛明・角田美穂子・筒井健夫・道垣内弘人・幡野弘樹・吉政知広の9名。四六判、552頁。 松尾弘『債権法改正を読む 改正論から学ぶ新民法』慶應義塾大学出版会(2017年10月)……A5判、336頁。(評価待ち。) 三井住友銀行総務部法務室著、井上聡・松尾博憲編著『practical 金融法務 債権法改正』きんざい(2020年3月・2版)……金融機関法務部の金融実務家(社内弁護士含む)及び金融法務に関わる弁護士による著作。したがって、契約条項例などを含んでおり実践的な内容。金融法務に関わる実務家必携、ただし、受験生向けとは言い難い。A5判、536頁。 中田裕康・大村敦志・道垣内弘人・沖野眞已『講義 債権法改正』商事法務(2017年12月)……法制審の部会メンバーである著者4名が行ったセミナー・講演会で話したものを基礎としつつ書かれた簡潔な解説書。ですます調で講演の語り口を残しているが、取り上げるべき項目を協議し、検討の仕方についてもある程度の統一を図っている。というわけで期待の一冊だったのだが、残念ながら一般人向けの内容となっており、既に債権法改正をフォローしてきた向けとは言いがたい。A5判、328頁。 伊藤滋夫編著『新民法(債権関係)の要件事実Ⅰ・Ⅱ』青林書院(いずれも、2017年12月)……伊藤滋夫の「裁判規範としての民法」という考え方で一貫して改正条文の要件事実を検討したもの。A5判、378頁・320頁。 筒井健夫・村松秀樹編著『一問一答 民法(債権関係)改正』商事法務(2018年3月)……法務省の立案担当者による民法(債権関係)改正の解説書。A5判、416頁。 潮見佳男・千葉恵美子・片山直也・山野目章夫編『詳解 改正民法』商事法務(2018年5月)……A5判、592頁。 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編『これだけは押さえておきたい! 債権法改正の重要ポイント(弁護士専門研修講座)』ぎょうせい(2018年6月)……A5判、270頁。 松尾博憲・山野目章夫『新債権法が重要判例に与える影響』きんざい(2018年6月)……A5判、208頁。 安永正昭・鎌田薫・能見善久監修『債権法改正と民法学Ⅰ~Ⅲ〔全3巻本〕』商事法務(2018年9月)……債権法改正に至るまでの背景や議論について、研究者たちが改めて考察を行い、さらに改正法のもとでも残された課題、新たな論点について論究したもの。Ⅰでは総則・総論、Ⅱでは債権総論と契約、Ⅲでは契約を取り扱う。全17章・16章・14章。A5判、584頁・528頁・488頁。 加賀山茂『求められる改正民法の教え方 いや~な質問への想定問答』信山社(2019年3月)……新しい民法で説明が困難と思われる12のトピックを厳選した想定問答集。全4章。四六変型判、120頁。 鎌田薫・内田貴・青山大樹・末廣裕亮・村上祐亮・篠原孝典『重要論点 実務民法(債権関係)改正』商事法務(2019年7月)……森・濵田松本法律事務所所属の弁護士が企業法務の実務経験を活かして書き下ろしたQ Aに、法制審における審議に関与した鎌田・内田がコメントを付すスタイル。A5判、384頁。 道垣内弘人、中井康之編著『債権法改正と実務上の課題(ジュリストBOOKS)』有斐閣(2019年11月)……ジュリストの同名連載〔2018年1月号(1514号)~2018年12月号(1526号)・全12回〕に、山本和彦教授と高須順一弁護士のオリジナル対談を2回(債権者代位権、詐害行為取消権)、さらに共編者によるまとめの対談を付加して書籍化したもの。改正民法の論点につき研究者と実務家が対談形式で解説するスタイル。A5判、386頁。 筒井健夫、村松秀樹、脇村真治、松尾博憲『Q A改正債権法と保証実務』きんざい(2019年12月)……改正債権法の立案担当者が保証に関する諸規定をめぐる諸問題につきQ A形式で解説。A5判、240頁。 中込一洋『実務解説改正債権法附則』弘文堂(2020年3月)……改正債権法の附則(経過措置)に特化した内容の実務書。A5判、184頁。 <改正法施行(令和2(2020)年4月1日)以降> 大塚直編『民法改正と不法行為』岩波書店(2020年4月)……債権法改正の不法行為に関する部分を取り上げ、従来の判例、学説を整理し、今般の改正における審議を分析し、残された課題について素描(はしがき)した著書。全6章。A5判、136頁。 内田貴『改正民法のはなし』民事法務協会(発行)、東京大学出版会(発売)(2020年4月)……法務省参与として債権法改正に関わった著者が興味深い論点をピックアップして、改正民法の特色を分かりやすく解説することを目的とした(はしがき)著書。雑誌「民事法務」連載の単行本化。全12章。A5判、168頁。 田中豊『論点精解 改正民法』弘文堂(2020年7月)……改正民法の論点の中核を、具体的紛争と要件事実論で読み解く(出版社案内より)。序章(民事紛争と改正民法)+全15講。A5判、352頁。 伊藤進監修、長坂純・川地宏行編集『改正民法(債権法)における判例法理の射程~訴訟実務で押さえるべき重要論点のすべて~』第一法規(2020年9月)……「改正民法(債権法)」の法制審議会において取り上げられた重要判例について、当該判例の理論的位置づけを明らかにし、改正法においてこれまでの判例法理を、実務上どう捉え直すのかを解説した書。全91項目。A5判、704頁。 松岡久和・松本恒雄・鹿野菜穂子・中井康之編『改正債権法コンメンタール』法律文化社(2020年10月)……2020年4月施行の改正債権法を対象とする注釈書。執筆者は研究者と弁護士。その分野の専門家を執筆担当にしている箇所が多く参考になる反面、またこの本でもこの人の執筆かと思うことがままある。A5判、1044頁。 森田修『「債権法改正」の文脈——新旧両規定の架橋のために』有斐閣(2020年10月)……「法学教室」での全35回にわたる同名連載に加筆するとともに債権譲渡の章が新たに書き下ろされた。債権法改正について、法制審においてなされた議論を主たる検討対象として、そこで為された議論を、従来の判例学説の展開の中にどう位置づけられるか(大きな文脈)、及び、新規定が法制審審議過程の中でどのような審議を経て修正・取捨選択され最終法文に至ったか(小さな文脈)という観点から、そこにいかなる実定的意義が見いだせるかを、重要論点毎に検討する連載。債権法改正の内容を知りたい向きというより、それを既に熟知している人がさらにその理解を深めるためのハイレベルな内容となっている。したがって、今は理解できなくても、いつか役に立つ内容と思われるので是非ともチェックしておきたい。最終法文化されなかった事項につき今後の解釈論に影響があるかどうかについて論じられているのも本連載の特徴のひとつ。序章(はじめに)+全13章+終章(結びにかえて)。A5判、812頁。 平野裕之『新債権法の論点と解釈』慶應義塾大学出版会(2021年1月・第2版)……A5判、592頁(本文576頁)。 磯村保『事例でおさえる民法 改正債権法』有斐閣(2021年7月)……早稲田大学法学部における「応用民法Ⅰ」の授業資料を単行本化したもの。事例形式を用いているが演習書というより概説書といった趣。改正債権法の今後の解釈について示唆的な記述が盛り込まれている。A5判、362頁。 秋山靖浩・伊藤栄寿・宮下修一編著『債権法改正と判例の行方-新しい民法における判例の意義の検証』日本評論社(2021年9月)……法律時報連載「債権法判例の行方」を単行本化したもの。改正前民法のもとで重要であると理解されてきた判例に焦点を当て、改正法との関係で判例の行方がどうなるかを検討。全33講。A5判、432頁。 潮見佳男・北居功・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和編著『Before/After 民法改正』弘文堂(2021年9月・第2版)……改正の前後で民法の解釈・適用にどのような違いが生じるのかを232のシンプルな設例(Case)をもとに、「旧法での処理はどうだったか」(Before)、「新法での処理はどうなるか」(After)に分け、民法学者および実務家が解説したもの。A5判、504頁。(評価待ち。) 東京弁護士会法友会至誠会編著『債権法改正にみる要件事実~攻撃防御構造上の位置づけと論証例~』第一法規(2021年10月)……A5判、312頁。 大阪弁護士会民法改正問題特別委員会編『実務家のための逐条解説 新債権法』有斐閣(2021年10月)……実務家のための改正債権法を対象とする注釈書。弁護士が執筆していることもあって、議論の掘り下げはあまり深くない。A5判、780頁。 森田宏樹監修、丸山絵美子・吉永一行・伊藤栄寿・三枝健治著『ケースで考える債権法改正』有斐閣(2022年2月)……法教の同名連載の単行本化。具体的事例に即して改正規定を適用して一定の解決を導くうえで、どのような解釈論上の問題が生ずるのかについていちど詰めて考えてみようという企画(はしがき)。したがって一見演習書のようなタイトルだが演習書とは異なり答案技術的な記述は一切ない。いまだ確定した解釈・判例が存在しない分野が多いことから、両論併記となっている箇所が多い(例えば、債務不履行による損害賠償の帰責事由においては、過失責任説と契約責任説(契約の拘束力説)の両論併記となっている。)。予備試験・司法試験にはオーバースペックだが(現時点においては改正法制度の理解があれば合格点に達すると思われる。)、改正法におけるあるべき法解釈を知るために有用と思われる。A5判、402頁。 大江忠『新債権法の要件事実』司法協会(2022年12月・第2版)……民法改正法案をもとに、その内容を簡潔に解説するとともに、主要な改正条文について、その要件事実及び主張立証責任の所在について、設例を設けて検討を加えた著書(はしがき)。A5判、498頁。 長島・大野・常松法律事務所編『アドバンス債権法』商事法務(2023年2月)……実務家による実務家のための債権法の基本書。A5判、1108頁。 ☆村松秀樹・松尾博憲『定型約款の実務Q A』商事法務(2023年9月・補訂版)……立案担当者による定型約款規定についての解説書。A5判、228頁。 ☆江原健志・大坪和敏編集代表、法曹フォーラム編著『事例シミュレーション新債権法の実務-弁護士・裁判官の視点に基づく解釈と運用』ぎょうせい(2023年12月)……A5判、504頁。 <雑誌> 山口幹雄「改正民法講座Ⅰー契約の基本的効力編」(法学セミナー連載・2017年4月号(747号)~2017年9月号(752号)・全6回)……今般の改正によって新たに追加されることとなった規定のうち、契約の基本的効力に関する規定の多くは、現行民法の請負に関する3ヶ条(634-636条)の条文に規定されていることを、その立法趣旨に則して一般化したものにすぎないとの観点から解説を加える連載。 平野裕之「民法(債権法)改正によって民法はどう変わったか」(受験新報連載:2017年10月号(800号)~2018年5月号(807号))……短期集中連載。 『消費者法研究 第3号』信山社(2017年7月)……【特集】改正民法における「定型約款」と消費者法:定型約款に関する論文7本及び定型約款に関する立法資料を収録。 『ジュリスト 2017年10月号(No.1511)』有斐閣(2017年9月)……【特集】債権法改正の要点:◇特集にあたって●道垣内弘人(p.14)、◇債権法改正の経緯と概要●筒井健夫(p.16)、◇履行不能の規律——プロセス変化の存否●池田清治(p.22)、◇相殺——債権の牽連性●山田八千子(p.28)、◇保証——保証意思の明確性の確保●白石 大(p.34)、◇契約不適合責任のシステム——請負契約を中心に●笠井 修(p.40)、◇定型約款の新規定に関する若干の解釈問題●山本 豊(p.46)、◇歴史は繰り返す?——債権法改正とこれからの民法学●大村敦志(p.52)、◇債権法改正と弁護士——金融法の観点から●井上 聡(p.54)、◇債権法改正と弁護士実務について——一般民事実務の観点から●飯島奈津子(p.56)。 【入門書・概説書】 山本敬三監修、栗田昌裕・坂口甲・下村信江・吉永一行『民法4 債権総論(有斐閣ストゥディア)』有斐閣(2018年12月)……全14章。2色刷。A5判、320頁。 池田真朗『スタートライン債権法』日本評論社(2020年3月・第7版)……債権法全般を通覧する入門書。債権各論も内容に含まれている。債権各論→債権総論の順序で債権法全体を極めて平易に解説。入門書としては最良の選択肢の一つ。第1課に「ガイダンス」が置かれている。第7版で民法改正に完全対応。全24課。A5判、416頁。 池田真朗『新標準講義 民法債権総論』慶應義塾大学出版会(2019年11月・全訂3版)……コンパクト。判例・通説に徹底した解説。パンデクテン体系を崩さず民法典の体系に沿って進めているため、最近のパンデクテン体系を崩した本が合わない場合の選択肢。あくまで初級者~中級者向けなので情報量は少ない。なお、第9章は、学習ガイダンスとなっている。全9章。A5判、304頁。 松岡久和・山田希・田中洋・福田健太郎・多治川卓朗『新プリメール民法3 債権総論(αブックス)』法律文化社(2020年4月・第2版)……本書冒頭には「改正された民法(債権関係)を学ぶ」が掲載されている。初版(2018年5月)において、2017年の民法改正に対応。第2版において、2020年4月の民法(債権関係)改正法の施行に合わせ、新法についてより詳しく解説。序章(債権法へのはじめの一歩)+全10章。A5判、286頁。 石田剛・荻野奈緒・齋藤由起『債権総論(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社(2018年10月)……全3部、全13章。A5判、280頁。 田井義信監修、上田誠一郎編『ユーリカ民法3 債権総論・契約総論』法律文化社(☆2023年4月・第2版)……序論(債権とは何か)+全2部、全7章。A5判、292頁。 森泉章・鎌野邦樹『民法入門 債権総論』日本評論社(2020年9月・第4版)……森泉は2007年に死去。第3版(2006年5月)より鎌野が著者に加わった。第4版において、2020年施行の改正民法に完全対応。なお、本書は、「入門書」として執筆されているようであるが、出版社による難易度設定は、「中級」となっていることに注意を要する。全20章。四六版、336頁。 生田敏康『債権法入門』法律文化社(2021年1月)……債権各論も含む。A5判、268頁。 角紀代恵『基本講義 債権総論(ライブラリ 法学基本講義5)』新世社(2021年5月・第2版)……全6章。2色刷。A5判、273頁。 永田眞三郎・松本恒雄・松岡久和・横山美夏『債権——エッセンシャル民法3(有斐閣ブックス)』有斐閣(2022年11月・第2版)……1冊で債権総論から不法行為までの債権法全分野を扱う。全15章。A5判、382頁。 (平成29年債権法改正未対応) 後藤巻則・滝沢昌彦・片山直也編『【プロセス講義】 民法Ⅳ 債権1(プロセスシリーズ)』信山社(2016年12月)……2017年6月の民法(債権法)改正に完全に対応できていないが、第1章で、「中間試案」を中心に民法改正論議において議論された重要論点を解説し、各章末に債権法改正時のポイントがコンパクトにまとめて付されている。全15章。A5変型判、320頁。 我妻榮著、水本浩・川井健補訂『民法案内7 債権総論 上』勁草書房(2008年2月)……四六判、352頁。 我妻榮著、水本浩・川井健補訂『民法案内8 債権総論 中』勁草書房(2008年2月)……四六判、224頁。 我妻榮著、水本浩・川井健補訂『民法案内9 債権総論 下』勁草書房(2008年2月)……四六判、336頁。 半田正夫『やさしい債権総論』法学書院(2005年4月・第2版)……A5判、216頁。 今西康人・木村義和・清水千尋・橋本恭宏・松井宏興・油納健一『導入対話による民法講義[債権総論](導入対話シリーズ)』不磨書房(2002年4月)……A5変型判、280頁。 中野哲弘『わかりやすい債権総論概説』信山社(2004年12月)……元裁判官による解説書。A5判、320頁。 片山直也・難波譲治・野澤正充・山田八千子『STEP UP 債権総論』不磨書房(2005年5月)……参考書として。A5変型判、312頁。 執行秀幸・福田清明『事例で学ぶ債権総論』法学書院(2011年6月)……文章に難ありとの声も。A5判、296頁。 高橋眞『入門債権総論(入門シリーズ)』成文堂(2013年4月)……全19章。A5判、404頁。(評価待ち。) → このページのトップ:民法(債権総論)に戻る。 → リンク:民法(全般)、民法(総則)、民法(物権)、民法(債権各論) 、民法(家族)
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このページで紹介される基本書の多くは、民法全範囲をカバーすることが予定されているものの、未だ他の分野は執筆段階にとどまるものである。 【基本書】 〔メジャー〕 中田裕康『債権総論』岩波書店(2013年8月・第3版)……著者は実務家、一橋教授を経て、現在は東大教授。京大系学説(潮見など)や比較法(類書中もっとも詳しい)にも目配りが利いている最新の体系書。かゆいところに手が届く、丁寧かつ分かりやすい記述は、学生はもとより学者からも圧倒的に評判がよい。まさに債権総論の基本書の決定版。判例通説をしっかり解説したうえで学説の整理を行い、その上で自説を展開するため、押さえるべきポイントが明確になっている。ただし、学説の紹介が詳しすぎるきらいがある(もっとも、整理が隅々まで行き届いているため、学説の紹介を読み飛ばして判例通説の部分だけを読むことも容易である)。3版では巻末にて「中間試案」に対応(14頁)。A5判、650頁。 潮見佳男『プラクティス債権総論』信山社(2012年4月・第4版)……債権総論分野の基本書としては、最高水準の一冊。内容としては下の二分冊を要約した部分も多いが、二分冊と違い、判例通説+有力説1個程度の説明に留めるなど、教科書としての役割が意識されている。中田『債権総論』との違いとして、ケースが多用されていること(ケースの解答はないものの、ケースを踏まえて原理原則・判例の解説がなされている)、要件事実を意識した構成になっていること、判例のとる論理をナンバリングを用いて丁寧に整理していることなどが挙げられる。もっとも、中田が伝統的通説に近い立場から、引用文献を明示したうえで近時の有力説を整理しているのに対し、本書は引用文献なしで、有力説の立場を前提に説明を進めている部分がある。また、あまり明示的ではないが言葉の端々に著者の考えが反映されている(「…と考えられている」など)。A5変型判、696頁。 松井宏興『債権総論』成文堂(2013年10月)……担保物権の基本書が人気を博している著者によるコンパクトな基本書。判例通説に沿って、債権総論を平易に解説する。上記、中田や潮見と比べると論点の記述に鋭さはなく、内容も十分に整理されていないなど、完成度は著しく見劣りするものの、コンパクトであるという一点に於いてなお存在価値があるだろう。担保物権ほどではないが支持を得ているようである。A5判、342頁。 〔その他〕 平井宜雄『債権総論(法律学講座双書)』弘文堂(1994年1月・第2版)……通説に対するアンチテーゼとして一時代を画した。立法者意思や制度趣旨から演繹的かつ丁寧に解釈していくスタイルに定評がある。現在は平井説の批判をふまえた新しい世代の学説が主流となりつつあり、その意味では本書はその役割を終えたというべきだろう。試験対策としては有用とはいいがたいが、相当因果関係説批判は、理解のために一読の価値はあるかもしれない。判例・通説を十分に理解した上で取り組むべき本。A5判、386頁。 前田達明『口述債権総論』成文堂(1993年4月・第3版)……著者の京大での講義を録音したテープをもとに書かれている。執筆段階でかなり手が加えられているため、臨場感はそれほどでもないが、平易な口語を用いた説明は非常に丁寧で分かりやすい。判例その他の具体例を豊富に挙げるが、いわゆるケースメソッドとは異なる、オーソドックスなスタイルである。歴史的沿革の説明が詳しい(一般的な概説書の水準を遥かに超えている)点に特徴がある。伝統的な債権法理論を箇条書きではなく、説明するお手本。著者の体系がそれほど前面に出ていないため、読み手の学習段階を問わないとっつきやすさがある。A5判、590頁。 淡路剛久『債権総論(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2002年12月)……法教連載の単行本化。とはいえ中身は正統派の体系書。奥田ら伝統的通説、平井説の後世代かつ内田・潮見・中田らの前世代という位置づけ。したがって過渡期の理論が多い。A5判、656頁。 潮見佳男『債権総論1・2(法律学の森)』信山社(1 債権関係・契約規範・履行障害 2003年8月・第2版,2 債権保全・回収・保証・帰属変更 2005年3月・第3版)……法律学の森シリーズ(通称「森」)、2分冊。「学部における債権総論を対象とした準教科書(学習書)としての役割を切り捨てて理論ベースでの叙述に徹し」(はしがき)、債権者利益(契約利益)中心の体系という観点から債権総論(及び契約法総論)を再構築した理論と実務を架橋する意欲的な体系書。債権法改正の理念を支える理論的支柱といっても過言ではなく、新版注釈民法の潮見執筆部分(10巻1、10巻2)とあわせて債権法改正に関する必読文献の一つである。したがって、受験生にとってはきわめて難解であり、また、「潮見語」と呼ばれる潮見独特の用語法に起因する読みづらさとも相まって、学生からは「森」ならぬ「樹海」であると皮肉られている。A5判、640頁・A5変型判、770頁。 奥田昌道『債権総論』悠々社(1992年7月・増補版)……元京大教授・最高裁判事。伝統的通説。各種文献で引用される回数が圧倒的に多く、我妻民法講義以降の債権総論の代表的基本書。判例・学説解説共に徹底的。 池田真朗『新標準講義民法債権総論』慶應義塾大学出版会(2013年3月・第2版)……コンパクト。判例・通説に徹底した解説。パンデクテン体系を崩さず民法典の体系に沿って進めているため最近のパンデクテン体系を崩した本が合わない場合の選択肢。あくまで初級者~中級者向けなので情報量は少ない。A5判、264頁。 平野裕之『プラクティスシリーズ債権総論』信山社(2005年3月)……学説が上手く整理されている。A5変型判、560頁。 内田勝一『債権総論』弘文堂(2000年10月)……損害賠償で自説。図がないのが難。A5判、376頁。 中田裕康・高橋眞・佐藤岩昭『民法 4 債権総論(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2004年4月)……四六判、336頁。 渡辺達徳・野澤正充『債権総論(弘文堂NOMIKAシリーズ3)』弘文堂(2007年11月)……無難な出来。A5判、344頁。 野澤正充『債権総論 セカンドステージ債権法II(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2009年10月)……法学セミナー誌上での連載を書籍化したもの。判例・通説中心。自説僅少。A5判、356頁。 本田純一・小野秀誠『債権総論(新・論点講義シリーズ 7)』弘文堂(2010年3月)……B5判、252頁。 円谷峻『債権総論―判例を通じて学ぶ』成文堂(2010年9月・第2版)……タイトルの通りで、かつ判例が長めに引用。A5判、448頁。 高橋眞『入門債権総論』成文堂(2013年4月)……A5判、404頁。評価待ち。 小野秀誠『債権総論(法律学の森)』信山社(2013年9月)……著者は一橋大教授。パンデクテン体系に沿った構成で、図式を多用。通説的見解を最新の学説や比較法的見地(とりわけ詳しい)を取り入れて微修正するといった趣きであり、先行する潮見や中田より穏当な学説をとる。学説は代表的な見解の紹介にとどめており、債権法改正についてはあえて触れていない(ただし、その背景にある思想を学ぶことは可能である)。従来の基本書と比較して、一風変わった判例や事案を紹介していると感じる箇所がいくつかあり、著者の視野の広さが伺われる。法律学の森の水準を保ちながらも、受験生にとっても読みやすい。中田の情報量に圧倒された人におすすめ。A5変型判、560頁。 遠藤研一郎『民法3(債権総論)』中央大学出版部(2009年3月)……債権総論に関する基本的事項について項目を立てて分かりやすく紹介している。本書は中大通信教育部での講義テキストであり、初学者向けの教科書という趣に徹しているため、主に判例・通説に従って記述されている。但し一般向けには販売していないため、欲しい人は中大生協で直接購入するか、Amazonなどで中古品を手に入れるしかない。 【入門書・概説書】 池田真朗『スタートライン債権法』日本評論社(2010年3月・第5版)……A5判、344頁。 我妻榮著、水本浩・川井健補訂『民法案内7 債権総論 上』勁草書房(2008年2月)……四六判、352頁。 我妻榮著、水本浩・川井健補訂『民法案内8 債権総論 中』勁草書房(2008年2月)……四六判、224頁。 我妻榮著、水本浩・川井健補訂『民法案内9 債権総論 下』勁草書房(2008年2月)……四六判、336頁。 半田正夫『やさしい債権総論』法学書院(2005年4月・第2版)……A5判、216頁。 角紀代恵『基本講義 債権総論(ライブラリ 法学基本講義 5)』新世社(2008年2月)……A5判、240頁。 永田眞三郎・松本恒雄・松岡久和・横山美夏『債権 -- エッセンシャル民法3(有斐閣ブックス)』有斐閣(2010年7月)……A5判、372頁。 【債権法改正関連書】 大村敦志『民法改正を考える』岩波新書(2011年10月)……東京大学における「民法改正-留学生のため民法案内(2)」の講義ノートをまとめたもの。債権法改正にとどまらず、家族法改正等を含めて、「民法を改正することはどういうことか」を論じた著作。 内田貴『民法改正―契約のルールが百年ぶりに変わる』ちくま新書(2011年10月)……債権法改正論者が、債権法改正を正当化づける立法事実(要するに債権法改正の必要性)を解説した入門書。 内田貴『債権法の新時代-「債権法改正の基本方針」の概要』商事法務(2009年9月)……債権法改正の最重要中心人物による「債権法改正の基本方針」入門書。 民法(債権法)改正検討委員会編『債権法改正の基本方針(別冊NBL No.126)』商事法務(2009年4月)……債権法改正の基本方針本文。後記「詳解」を買うなら本書は不用。 民法(債権法)改正検討委員会編『シンポジウム「債権法改正の基本方針」(別冊NBL No.127)』商事法務(2009年8月)……債権法改正の基本方針についてのシンポジウムの講義録とレジュメ集。委員会の委員が基本方針について解説したもの。 民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針I-V』商事法務(2009年9月-2010年6月)……債権法改正の基本方針の全文+注釈。委員会の委員による公式注釈書。現行法の問題点を網羅しており、さながら債権法についての最高水準の体系書である。 民事法研究会編集部編『民法(債権関係)の改正に関する検討事項-法制審議会民法(債権関係)部会資料〈詳細版〉』民事法研究会(2011年1月)……法制審議会民法(債権関係)部会の各会議で提出された「民法(債権関係)の改正に関する検討事項 詳細版(1)~(15)」を1冊にまとめた資料集。本書の内容は法務省HPで無料公開されているが膨大な量なので重宝する。 「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理(NBL953号別冊付録)」商事法務(2011年5月)……法制審による債権法改正関連資料。法務省HPでダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明』商事法務(2011年6月)……法制審による債権法改正関連資料。上記「論点整理」に簡潔な解説を加えたもの。したがって、本書を購入すれば上記「論点整理」は不要。法務省HPでダウンロード可能。 「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(NBL997号)」商事法務(2013年3月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』商事法務(2013年5月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでダウンロード可能。 内田貴『民法改正のいま―中間試案ガイド』商事法務(2013年6月)……上記中間試案を平易に解説した著書。 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案(NBL1034号)」商事法務(2014年9月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでもダウンロード可能。 潮見佳男『民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の概要』きんざい(2014年11月)……法制審幹事による要綱仮案の私的解説。ただし、公式解説は公表されないようなので本書は必読。A5判、272頁。 「民法(債権関係)の改正に関する要綱(NBL1045号)」商事法務(2015年3月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでもダウンロード可能。 商事法務編『民法(債権関係)改正法案新旧対照条文』商事法務(2015年5月)……国会(第189回)に提出された民法(債権関係)改正法案の新旧対照表。法務省HPでもダウンロード可能。法務省版対照表と比較した本書の意義は、未改正条文も掲載されているところ。A5判、204頁。 加賀山茂編著『民法(債権関係)改正法案の〔現・新〕条文対照表<条文番号整理案付>』信山社(2015年8月)……国会(第189回)に提出された民法(債権関係)改正法案の新旧対照表。法務省版対照表には「どの条文がどのように変化したのか」について不備があるとして、「単なる条文番号にもとづく比較ではなく、内容面から現行法の条文と改正法案の条文を対象し、現行法から何がどのように変わるのか、より分かりやすくすべく、大幅に編集を加えたもの」(はしがき)。A5変型判、334頁。 信山社編集部編『民法改正法案(新法シリーズ 3)』信山社(2015年8月)……①民法の一部を改正する法律案要綱、②民法の一部を改正する法律案(付:理由)、③民法改正案新旧対照条文、④民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を収録。A5変型判、568頁。 潮見佳男『民法(債権関係)改正法案の概要』きんざい(2015年8月)……上記『要綱仮案の概要』を国会(第189回)提出法案の内容と編成に合わせて改訂した民法改正法案の私的解説書。法制審での審議内容や部会資料に沿い、できるだけ客観的かつ簡明に叙述することを試みており、整備法についてもできる限り言及している(はしがき)。まさに必読書。A5判、326頁。 山野目章夫「民法(債権関係)改正のビューポイント(1)-(16)」(NBL連載、1038~1053号)……要綱仮案から改正法案を題材にして、改正事項を民法学者の観点からわかりやすい設例を用いて解説する好連載。是非ともコピーしておきたい。 ☆大江忠『新債権法の要件事実』司法協会(2016年1月)……民法改正法案をもとに、その内容を簡潔に解説するとともに、主要な改正条文について、その要件事実及び主張立証責任の所在について、設例を設けて検討を加えた著書(はしがき)。 ☆森田修「「債権法改正」の文脈――新旧両規定の架橋のために」(法学教室連載・427号~)……評価待ち。
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【公法系】 〔憲法〕 芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』岩波書店(2015年3月・第6版) 〔行政法〕 中原茂樹『基本行政法』日本評論社(2015年3月・第2版) 【民事系】 〔民法(総則)〕 佐久間毅『民法の基礎1 総則』有斐閣(2008年3月・第3版) 〔民法(物権)〕 佐久間毅『民法の基礎2』有斐閣(2010年3月・補訂2版) 〔民法(担保物権)〕 松井宏興『担保物権法』成文堂(2011年10月・補訂2版) 〔民法(債権総論)〕 中田裕康『債権総論』岩波書店(2013年8月・第3版) 〔民法(債権各論)〕 潮見佳男『基本講義債権各論I・II』新世社(2009年12月・第2版,2009年10月・第2版) 〔民法(家族)〕 前田陽一・本山敦・浦野由紀子『民法Ⅵ 親族・相続(LEGAL QUEST)』有斐閣(2015年4月・第3版) 〔会社法〕 伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征『会社法(LEGAL QUEST)』有斐閣(2015年3月・第3版) 〔商法総則・商行為法〕 近藤光男『商法総則・商行為法』有斐閣(2013年4月・第6版) 〔手形・小切手法〕 早川徹『基本講義手形・小切手法』新世社(2007年3月) 〔民事訴訟法〕 和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務(2012年8月) 【刑事系】 〔刑法(総論)〕 大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦『基本刑法I 総論』日本評論社(2016年3月・第2版) 〔刑法(各論)〕 西田典之『刑法各論』弘文堂(2012年3月・第6版) 〔刑事訴訟法〕 宇藤崇・松田岳士・堀江慎司『刑事訴訟法(LEGAL QUEST)』有斐閣(2012年12月)
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このページで紹介される基本書の多くは、民法全範囲をカバーすることが予定されているものの、未だ他の分野は執筆段階にとどまるものである。 民法(家族法)改正関係(最近改正されたものに限る。) 平成23年6月3日法律第61号:離婚後の子の監護に関する事項の定め等(第766条第1項~第4項関係)他http //www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00043.html 平成25年12月11日法律第94号:嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分と同等とするものとすること。(第900条関係)http //www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00137.html 平成28年4月13日法律第27号(成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律):第860条の2(成年後見人による郵便物等の管理)及び第860条の3(同)並びに第873条の2(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)を加える。 平成28年6月7日法律第71号:女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとすること。(第733条第1項関係)他 http //www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00181.html . 【親族法・相続法】 〔メジャー〕 前田陽一・本山敦・浦野由紀子『民法VI 親族・相続(LEGAL QUEST)』(☆2015年3月・第3版)……平成23年の家事事件手続法制定に対応。はしがきで『双書民法』を最も意識したと述べている通り、著者らの自説を抑え、体系と条文の要件効果、判例を重視したつくりになっている。一方で、現行の法制度の運用実体や介護保険制度や信託法などの重要な関連法についてもコラム等で漏らさず述べている。また、重要な論点については丁寧に議論の積み重ねを記述しているため、わかりやすい。イメージとしては「双書民法」と「アルマ民法」の間にある基本書である。極めて「標準的」な教科書だが、個性の強い親族法の本の中では逆に珍しい。A5判、490頁。 高橋朋子・床谷文雄・棚村正行『民法7 親族・相続(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(☆2014年10月・第4版)……平成23年の家事事件手続法制定に対応。親族相続のアルマとしてオススメされるのはこちら。見解が穏当、現代的な問題点や新しい判例についても触れられている。定番。四六判、468頁。 〔その他〕 窪田充見『家族法―民法を学ぶ』有斐閣(2013年1月・第2版)……法学教室同名連載を単行本化。不法行為に続くシリーズ2冊目の基本書である。設例を中心にした600ページ近い厚さだが、読んでいてニヤリとしてしまうようなユーモラスな文体と充実したコラムにより、意外とスイスイ読める。「法的ルールとしての家族法」の理解形成を目指すとのこと。内容はリークエやアルマのような共著に比べて高度であるが、理解はしやすいだろう。A5判、612頁。 梶村太市・岩志和一郎・大塚正之・榊原富士子・棚村政行『家族法実務講義』有斐閣(2013年4月)……早稲田ローの実務家教員と研究者教員が実務と理論の架橋・融合を目指した家族法の教科書・体系書・実務書。初学者から実務家を読者対象としている。章ごとに学習のねらいと実務上の留意点を明記。重要論点についてはCaseを用いて解説。最新のトピックやホットな話題についてColumnを設けている。タイトル通り判例実務ベースなので安心して使える。A5判、618頁。 二宮周平『家族法(新法学ライブラリ 9)』新世社(2013年11月・第4版)……全24章からなる教科書。かなりリベラル色の強い価値観。自説の説明に分量を割いている部分もあるため、価値観が合わない人や判例通説をコンパクトに学びたい人には向かないか。4版においては、民法改正、家事事件手続法、H25.9.4非嫡出子差別違憲大法廷判決に対応。A5判、488頁。なお、3版まで付されていた演習問題は別著書(『事例演習 家族法(事例演習法学ライブラリ 4)』新世社(2013年11月))として出版された。 『家族と法』岩波新書(2007年10月)は入門書として最適。 犬伏由子・石井美智子・常岡史子・松尾知子『親族・相続法(弘文堂NOMIKAシリーズ 5)』弘文堂(☆2016年2月・第2版)……女性研究者4人による共著(親族法は犬伏・石井、相続法は常岡・松尾が執筆)。平成23年の法改正を反映。要件効果の説明がわりと丁寧。判例の引用も長め。ところどころ、図表が挿入され理解を助ける。第2版では、DNA鑑定に基づく親子関係不存在確認の訴え、非嫡出子の法定相続分規定の違憲の決定、そして平成27(2015)年12月16日に出された、再婚禁止期間、夫婦別氏(姓)に関する最高裁大法廷判決までを含め、現在の家族法を余さず解説。A5判、456頁。 本山敦『家族法の歩き方(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2013年3月・第2版)……法セミの連載を単行本化。川井は薄すぎるが二宮は厚すぎるという人にお勧め。時事問題や代表的判例から家族法の基礎的な部分を取得することを目的とする。リークエの分担執筆担当者でもある。A5判、272頁。 松川正毅『民法 親族・相続(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2014年12月・第4版)……論点意識せず。自説少。判例引用不正確。四六判、382頁。 裁判所職員総合研修所監修『親族法相続法講義案』司法協会(2015年9月・七訂補訂版)……家族法を親族、相続の順に解説。論点意識せず。判例・先例・通説皆で有力説無。索引雑。巻末には各種届出用紙、戸籍の見本を掲載。七訂補訂版は、平成25年法律第94号「民法の一部を改正する法律」の成立や判例の動向などを踏まえて平成25年5月に発行した七訂版に必要な加筆・補正されたもの(約2頁増加)。A5判、436頁(本文374頁)。 橋本昇二・三谷忠之『実務 家族法講義』民事法研究会(2012年7月・第2版)……A5判、547頁。 田中千草ほか監修『図解 民法(親族・相続)』大蔵財務協会(2014年6月・平成26年版)……B5判、470頁。 奥山恭子『家族の法 親族・相続法』信山社(2014年9月・第2版)……A5変型判、360頁。 【親族法・相続法(平成23年法改正未対応)】 吉田邦彦『家族法(親族法・相続法)講義録』信山社(2007年6月)……平井弟子による家族法講義録。A5変型判、368頁。 有地亨『新版 家族法概論』法律文化社(2005年4月・補訂版)……家族法の権威による力のこもった体系書。制度の歴史経過などの説明が厚い。判例の引用が多いが結論のみを引用するスタイルなので、判例の事案がよくわからない。490頁。著者は2006年に逝去しているため改訂の見込みは少ない。A5判、500頁。 深谷松男『現代家族法』青林書院(2001年3月・第4版)……体系書。中川善之助の愛弟子。論点意識あり。物権法で使ってる本との組み合わせによっては,かなり回しやすい。A5判、352頁。 【親族法】 大村敦志『家族法(有斐閣法律学叢書)』有斐閣(2010年3月・第3版)……著者は家族法の第一人者。タイトルは家族法であるが、著者の説では相続法は財産法であり、家族法とは親族法とその周辺のみを指すため、本書の範囲も親族のみである。内容は有力説が多いが,極め細やかな解釈であり評価高い。親族法の体系書としては本書以外の選択肢は考えられないだろう。A5判、472頁。 ☆大村敦志『民法読解 親族編』有斐閣(2015年12月) ……A5判、590頁。 大村敦志『新基本民法7 家族編 ―女性と子どもの法』有斐閣(2014年12月)……基本民法シリーズのリニューアル第1弾。2色刷。A5判、226頁。 我妻栄『親族法』有斐閣(1961年4月)……法律学全集。重厚だが古い。 A5判、428頁。 【相続法】 潮見佳男『相続法』弘文堂(2014年3月・第5版)……「プラクティス」のようにケースを多用。最終意思尊重よりも法定相続制度を重視する立場をとり、プッシュは弱いが独自説が散見される。A5判、408頁。 床谷文雄・犬伏由子編『現代相続法』有斐閣(2010年11月)……実務に即したオーソドックスな相続法の教科書。相続関係紛争処理関係手続について章立てしているのが目新しい。家事事件手続法には未対応。A5判、342頁。 【その他参考書】 飛澤知行編著『一問一答 平成23年民法等改正―児童虐待防止に向けた 親権制度の見直し』商事法務(2011年11月)……深刻な社会問題として認識されている児童虐待。これに対する児童虐待防止法の制定など各種法的手当てがなされる中、民法の親権制度の見直しがなされた。関連して、児童福祉法、家事審判法、戸籍法等が改正された。本書は、民法における親権停止制度などの内容を他の関連法令改正の概要とともに、81のQ&A形式で解説したもの。A5判、121頁。 【入門書】 常岡史子編著、鈴木伸智・田巻帝子・岩澤哲・羽生香織・千葉華月・中村恵・大杉麻美・久々湊晴夫著『はじめての家族法』成文堂(2013年4月・第2版)……B5判、228頁。 田山輝明『事例で学ぶ家族法』法学書院(2016年2月・第4版)……身近で起こる具体的事例を取り入れ優しく説いた家族法の入門テキスト。第4版では、再婚禁止期間の憲法違憲判決等の問題、高齢者問題を含む、広い意味での成年後見制度の問題等、最新の内容や裁判例が追加され、内容が見直された。A5判、219頁。 本山敦・青竹美佳・羽生香織・水野貴浩『家族法(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社(2015年3月)……A5判、260頁。 後藤巻則・滝沢昌彦・片山直也 編『【プロセス講義】 民法Ⅳ 家族』信山社(2016年6月22日予定)……A5変型判、320頁(予定)。
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このページで紹介される基本書の多くは、民法全範囲をカバーすることが予定されているものの、未だ他の分野は執筆段階にとどまるものである。 【債権各論】 潮見佳男『基本講義債権各論I・II(ライブラリ法学基本講義)』新世社(I 契約法・事務管理・不当利得 2009年12月・第2版,☆II 不法行為法 2016年7月・第2版増補版)……学生向け。ですます調。カバーの色より「潮見イエロー」や「潮見黄色本」との愛称で学生から親しまれている。分量が手ごろなので、ロースクール生の間でのシェアはかなりのもの。IIは必要にして十分な内容。2版増補版では巻末にて債権法改正法案に対応。Iは旧版時にはさすがに薄いとの声もあったが、第2版では30ページほど加筆されている。 とはいえ、やはりこれだけでは情報量の面で心許ないようで、契約法は山本、不法行為法は窪田といった本格的な基本書を辞書的に併用することで補完する者が多いようである。A5判、392頁・240頁。 水辺芳郎『債権各論』三省堂(2006年4月・第2版)……コンパクト。文章に難ありという声も。A5判、468頁。 笠井修・片山直也『債権各論I―契約・事務管理・不当利得(弘文堂NOMIKAシリーズ4-1)』弘文堂(2008年12月)……無難な出来という評価。通説にはその旨明記、有力説は論者名を挙げて解説。判例は比較的長めに引用されているし、理解に資する図表もそこそこある。ただし、要件事実には配慮されていない。NOMIKAの債権各論は、Iが契約・事務管理・不当利得、IIが不法行為という、潮見イエローと同じ分冊である。よって、潮見イエロー(の少なくともどちらか)が肌に合わないと思った場合、乗り換え相手の候補として挙げやすい。A5判、464頁。 池田真朗『新標準講義 民法債権各論』慶應義塾大学出版会(2010年3月)……コンパクト。学部生、未修者向け。A5判、244頁。 本田純一『債権各論(新・論点講義シリーズ 8)』弘文堂(2010年6月)……B5判、298頁。 山﨑●敏彦(●は崎の大が立)『債権法各論講義 要件事実論的アプローチ』成文堂(2013年4月)……教科書+判例集+要件事実本でおまけにコアカリキュラム対応という夢のような教科書。巻末にてコアカリキュラム本文と本書の対応関係を明記している。A5判、644頁。 【契約法】 山本敬三『民法講義IV-1 契約』有斐閣(2005年11月)……辞書向き。著者講義のレジュメを元に、各論点の通説・有力説・判例がレジュメ調に網羅され、しかも各説ごとの要件事実ブロック・ダイアグラムも載っている。A5判、852頁。 来栖三郎『契約法』有斐閣(1974年9月)……古典的名著。契約総論はない。A5判、758頁。 水本浩『契約法』有斐閣(1995年3月)……我妻弟子による体系書。来栖契約法のように大著になりがちな契約法理論を我妻説を中心にまとめあげたもの。名著。A5判、440頁。 平井宜雄『債権各論I上 契約総論(法律学講座双書)』弘文堂(2008年8月)……はしがきからして熱い、平井ファン待望の一冊。強い実学志向から、現代的な契約を巡る法現象を直視し、事業者間契約を叙述の中心に据えている。そのため、受験生の類はすっかりおいてけぼりとなってしまった。ただし、実務家にとっては非常に示唆的で有用な一冊であるため、合格後に思う存分楽しむとよい。A5判、276頁。 潮見佳男『契約各論I―総論・財産権移転型契約・信用供与型契約(法律学の森)』信山社(2002年1月)……理論の洗練度はかなりのもの。但し、体系書&潮見語。なお契約総論は『債権総論I(法律学の森)』にて論じられている。A5変型判、456頁。 平野裕之『民法総合5 契約法』信山社(2007年2月)……判例集も合わせているため、読むのに苦労する。A5変型判、776頁。 後藤巻則『契約法講義』弘文堂(2013年3月・第3版)……学部およびロースクールの授業用の教科書。設問も付いている。導入用の教科書としてはちょうどいい分量・難易度になっているが、メインの基本書としては薄すぎる。A5判、360頁。 半田吉信『契約法講義』信山社(2005年4月・第2版)……最新の学説や消費者契約などにも目配りが利いている。比較法(とりわけ2001年ドイツ債務法現代化法)に詳しい。A5変型判、536頁。 三宅正男『契約法 総論・各論(上)(下)』青林書院(1978年2月,1983年3月,1988年10月)……雇用はない。 野澤正充『契約法 セカンドステージ債権法I(法セミLAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2009年1月)……法学セミナーの連載をまとめたもの。判例・通説中心。自説僅少。A5判、296頁。 佐藤孝幸『実務 契約法講義』民事法研究会(2012年8月・第4版)……A5判、578頁。 【不法行為法】 窪田充見『不法行為法』有斐閣(2007年4月)……設例方式。不法行為の基本書としては定番となりつつある。内容は高度で読みこなすにはそれなりに実力が必要である。潮見イエローを補完する用途でもよく利用される。A5判、502頁。 吉村良一『不法行為法』有斐閣(2010年2月・第4版)……関西系(故意・過失/違法性の二元論)。読みやすい。また、本書の立場も比較的堅実なものが多いように思われる。ただし判例は結論のみの引用が多い。4版では要件事実の記述が追加されたが、簡単な説明にとどまっている。A5判、344頁。 加藤一郎『不法行為』有斐閣(1974年10月・増補版)……いわゆる伝統的通説。古典的名著。A5判、323頁。 平井宜雄『債権各論II 不法行為(法律学講座双書)』弘文堂(1992年4月)…… I上のはしがきによれば、現在改訂中とのことであったが、著者逝去により叶わなくなった。独自の体系により『債権総論』と同じく民法学界に多大な影響を与えた(『損害賠償法の理論』を併読すると平井説に対する理解が進みやすい)。平井説がすべて受け入れられたわけではないが、学者、実務家いずれの側においても、その影響を受けていない者はいない。名著であるが、抽象的かつ難解なので、初学者はまず平井説をふまえた新しい世代の基本書を読むべきだろう。A5判、272頁。 潮見佳男『不法行為法(法律学の森)』信山社(1999年5月,2版は3分冊の予定で現在『不法行為法I』(2009年9月)、『II』(2011年2月)が刊行済み。効果論が未刊)……判例・学説を詳細に整理し、かつ自らの体系も明らかにした現時点で本邦最高峰の体系書(とくに第2版)。受験生が読む本ではない。A5変型判、498頁・472頁。 平野裕之『民法総合6 不法行為法』信山社(2013年7月・第3版)……契約法と同じく、判例集込みで分厚い本。A5変型判、576頁。 【現】前田陽一『債権各論II 不法行為法(弘文堂NOMIKAシリーズ4-2)』弘文堂(2010年3月・第2版)……読みやすいが、薄い。ただし、これで必要十分という声も。A5判、232頁。 塩崎勤・羽成守・小賀野晶一 編著『実務 不法行為法講義』民事法研究会(2011年12月・第2版)……A5判、680頁。 藤岡康宏『民法講義V 不法行為法』信山社(2013年3月)……不法行為法の大家による体系書。不法行為法を「権利の保護」と「あらたな利益の法実現」を目的とする「権利の法実現の法」としてとらえる。中心的な読者としては法学部の学生を対象としている(はしがき)とされるが、筆者独自の「法的判断の三層構造論」が随所に出てくるなど手強い体系書である。また情報の網羅性に欠けている(とくに効果論)。A5変型判、568頁。 〔その他参考書:不法行為法〕 小賀野晶一『判例から学ぶ不法行為法』成文堂(2010年1月)……B5判、224頁。 良永和隆『不法行為法 基本判例解説』日本加除出版(2010年8月)……総収録判例数60件。A5判、248頁。 大村敦志『不法行為判例に学ぶ ― 社会と法の接点』有斐閣(2011年11月)……A5判、370頁。 【事務管理・不当利得・不法行為】 加藤雅信『新民法大系V 事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2005年4月・第2版)……最高裁をも動かした加藤理論。いま事務管理・不当利得を真面目に学習しようとするならば第一に読まれるべき本。論旨が明快。特に不当利得についてはこの本の右に出るものは無いといっていい。A5判、488頁。 加藤雅信『クリスタライズド民法 事務管理・不当利得』三省堂(1999年9月)……275頁と薄いが箱庭理論の粋が詰まった名著。新民法大系と記述が重複する箇所もあり既に絶版なため、無理して手に入れる必要はないが、個々の論点が新民法のものよりかなり絞られているため内容はかなり濃い。古書店などで見かけた時は是非買うべきである。 藤原正則『不当利得法(法律学の森)』信山社(2002年2月、☆改訂予定あり。)……不当利得類型論(給付利得、侵害利得、支出利得、対第三者関係)。ドイツ法の解釈論に依拠するところが大きいが難解。A5判、456頁 澤井裕『テキストブック事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2001年4月・第3版)……違法性と故意・過失を区別する二元説の立場。不法行為部分が詳しい。各節の冒頭に設例が、本論の後に解説が付いている。参考書に最適。入手方法がオンデマンド版(定価 9,400円・税別)となっているのが残念。A5判、400頁。 円谷峻『不法行為法・事務管理・不当利得―判例による法形成』成文堂(2010年3月・第2版)……判例の引用が詳しい。A5判、394頁。 吉田邦彦『不法行為等講義録』信山社(2008年12月)……平井弟子による不法行為等(法定債権)の講義録。独習に耐えるレジュメといった趣。A5変型判、304頁。 石崎泰雄・渡辺達徳編『新民法講義5 事務管理・不当利得・不法行為法』成文堂(2011年3月)……若手研究者(執筆者の多くが准教授)による法定債権の教科書。比較的新しい情報を平易に解説している。設例と図解が豊富であるのが本書の特徴。A5判、318頁。 野澤正充『事務管理・不当利得・不法行為 セカンドステージ債権法III(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2011年8月)……法学セミナーの連載をまとめたもの。判例・通説中心。自説僅少。A5判、320頁。 橋本佳幸・大久保邦彦・小池泰『民法V 事務管理・不当利得・不法行為(LEGAL QUEST)』有斐閣(2011年11月)……質量ともに司法試験対策として十分な内容を持つ。その反面、高度な議論を圧縮したような個所もあるので、全くの初学者は、例えば潮見イエローなどの後に読めばより効果が上がるだろう。A5判、386頁。 大村敦志『新基本民法6 不法行為編 ― 法定債権の法』有斐閣(2015年11月)……基本民法シリーズのリニューアル第2弾。事務管理・不当利得・不法行為を扱う。A5判、200頁。 【入門書・概説書】 〔契約法〕 我妻榮・川井健著、水本浩補訂『民法案内10 契約総論』勁草書房(2009年6月)……四六判、212頁。 我妻榮・川井健著、水本浩補訂『民法案内11 契約各論 上』勁草書房(2010年2月)……四六判、192頁。 笠井修・鹿野菜穂子・滝沢昌彦・野澤正充『はじめての契約法』有斐閣 (2006年3月・第2版)……A5判、244頁。 半田正夫『やさしい契約法』法学書院(2004年12月・第2版)……A5判、200頁。 〔不法行為法〕 〔事務管理・不当利得・不法行為〕 川井健著、良永和隆補筆『民法案内13 事務管理・不当利得・不法行為』勁草書房(2014年8月)……四六判、228頁。 田上富信『やさしい事務管理・不当利得・不法行為法』法学書院(2015年4月・第3版補訂版)……A5判、頁。
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〔親族法・相続法〕 前田陽一他『リーガルクエスト民法6-親族・相続』(2012年3月・2版)……平成23年の家事事件手続法制定に対応。はしがきで『双書民法』を最も意識したと述べている通り、著者らの自説を抑え、体系と条文の要件効果、判例を重視したつくりになっている。一方で、現行の法制度の運用実体や介護保険制度や信託法などの重要な関連法についてもコラム等で漏らさず述べている。また、重要な論点については丁寧に議論の積み重ねを記述しているため、わかりやすい。イメージとしては「双書民法」と「アルマ民法」の間にある基本書である。極めて「標準的」な教科書だが、個性の強い親族法の本の中では逆に珍しい。 高橋朋子・床谷文雄・棚村正行『民法7親族・相続』有斐閣アルマSpecialized(2011年12月・3版)……平成23年の家事事件手続法制定に対応。親族相続のアルマとしてオススメされるのはこちら。見解が穏当、現代的な問題点や新しい判例についても触れられている。定番。 二宮周平『家族法』新世社(2009年10月・3版)……全24章からなる教科書。練習問題付。リベラル色の強い価値観。『家族と法』岩波新書(2007年10月)は入門書として最適。. 窪田充見『家族法-民法を学ぶ』有斐閣(☆2013年1月・2版予定)……法学教室同名連載を単行本化。設例を中心にした600ページ近い厚さだが、読んでいてニヤリとしてしまうようなユーモラスな文体と充実したコラムにより、意外とスイスイ読める。「法的ルールとしての家族法」の理解形成を目指すとのこと。 犬伏由子・石井美智子・常岡史子・松尾知子『親族・相続法』弘文堂NOMIKA(2012年11月)……女性研究者4人による共著(親族法は犬伏・石井、相続法は常岡・松尾が執筆)。平成23年の法改正を反映。要件効果の説明がわりと丁寧。判例の引用も長め。ところどころ、図表が挿入され理解を助ける。 本山敦『家族法の歩き方』日本評論社(2009年2月)……法セミの連載を単行本化。川井は薄すぎるが二宮は厚すぎるという人にお勧め。価値観は二宮寄りだが前面に押し出されてはいない。以前このページで、本山は二宮周平の弟子であるとの記述があったが誤り。本書あとがきによれば、本山は円谷峻と野村豊弘の弟子。リークエの分担執筆担当者でもある。 有地亨『家族法概論』法律文化社(2005年4月)……家族法の権威による力のこもった体系書。制度の歴史経過などの説明が厚い。490頁。著者は2006年に逝去しているため改訂の見込みは少ない。 松川正毅『民法 親族・相続』有斐閣アルマBasic(2008年4月・2版)……論点意識せず。自説少。判例引用不正確。 吉田邦彦『家族法(親族法・相続法)講義録』信山社(2007年6月)……平井弟子による家族法講義録。 裁研『親族法相続法講義案』司法協会(2008年5月補正・6訂再訂版)……論点意識せず。判例・先例・通説で有力説皆無。索引雑。 深谷松男『現代家族法』青林書院(2001年3月・4版)……体系書。中川善之助の愛弟子。論点意識あり。物権法で使ってる本との組み合わせによっては,かなり回しやすい。 〔親族法〕 大村敦志『家族法』有斐閣(2010年3月・3版)……親族法のみ。内容は有力説が多いが,極め細やかな解釈であり評価高い。 我妻栄『親族法』有斐閣(1961年10月)……法律学全集。重厚だが古い。 〔相続法〕 潮見佳男『相続法』弘文堂(2011年10月・4版)……「プラクティス」のようにケース多用。最終意思尊重よりも法定相続制度を重視する立場をとり、プッシュは弱いが独自説が散見される。 床谷文雄・犬伏由子編『現代相続法』有斐閣(2010年10月)……実務に即したオーソドックスな相続法の教科書。相続関係紛争処理関係手続について章立てしているのが目新しい。家事事件手続法には未対応。 伊藤昌司『相続法』有斐閣(2002年10月)……重厚だが独自説多く司試向きではない。 中川善之助=泉久雄『相続法』有斐閣(2000年10月・4版)……法律学全集。いわゆる伝統的通説だが刊行年度が古いため、最新判例等を補充数する必要あり。